2466 前に進む為のxの問い編 850
確かにテンポがあがった。それに身体能力も底上げされた妖精王は私の妨害をものともしなくなってしまいました。私の貧弱な体での妨害は彼の今のスペックなら無理矢理にどうにでもなる……ものになってしまいました。
一瞬くらいテンポが崩れても、すぐに立て直されるし、向こうも私の事を理解してきたのも感じます。そもそもがダンスとは通じ合うものです。てか通じ合ってないと、息があったダンスなんてできないでしょう。
もちろん私たちに通じ合うなんてものはなかった。なにせこれがお互い初対面なんですからね。けどどうやら妖精王はこのダンスを通じて、私を知ろうとしてたみたいです。
私の方が先に妖精王の癖とか、息遣い。動きの癖……そんなのを見極めてたわけですけど、妖精王もダンスを通してそれらを学習していったみたい。そこは流石です。私よりもダンスの暦が長いだけあります。こっちは全くダンスをする気はないのに……それでも向こうに合わせることもやってる。
そんなわずかな合わせるときの呼吸の重なり……絶対に離さないようにしてる手で伝わる緊張とか……そんなのを敏感に妖精王は感じ取ってたのでしょう。
「ひゃあ!?」
私の背中がグイっとおされて「いたたたたた」――となる。普段の運動不足の弊害か……私の体はこっちでも結構硬い。今はダンスとか、フィギュアスケートとかでよく見る背中を大きく後ろに反らすようなそんなポーズになってます。私が月のダンスの妨害に動こうとしたのが分かったのでしょうね。
「もう少し体を柔軟にした方がいいな」
「それはごめんあそばせ」
私は嫌みの積りでそう言いました。けど次にはクルクルとされてました。完全に向こうの流れ……けど今の身体能力の差……そしてダンスの経験の差で、妖精王を上回ることが無理だと判断してます。
けどこのまま月のダンスを完成させるわけにはいきません。このままじゃ、私も月の側に組み込まれますし……まずい立場になります。このままじゃ、私もシステムに月の女王にされる。
妖精王は別に女王をセツリちゃんにこだわってる訳じゃない。彼にとっては月の女王はつまりは月の為に都合がいい存在ならいい。その為なら、女王は何人いたって……そういうことでしょう。
もちろんそんなのはシステムにはない。月の女王はシステムには一人が据えられる存在です。でも……どうやら妖精王はなにか……そう「なにか」をやって裏技的な事をやってるようです。
私を疑似的に女王だと、思わせてるような……なにかあるんでしょうね。このままだと彼の思うツボ。思わむアシストのせいで彼の目的に近づいてしまいました。
でも……まだ負けてません。やれることをやりましょう。私は足元に紙を落とします。