2446 前に進むためのXの問い編 830
「スオウ……まだここにいる気? そんな悠長にしてていいのかな? ここはもう月の側――だよ」
ザザザァァァアアアアア――
「なんだ?」
なんだか世界樹が揺らめいてる? とてもゆっくりだけど、その枝や葉がゆれて……そしてそのせいで大きさのせいで勿論だけど世界樹の葉とかは大量なのだ。その大量の葉がこれでもか……という風に舞ってる。そしてその葉がセツリ達と僕の間に……割り込んできた。
「スオウ、今回は私達の勝ちだね。このまま完全勝利、狙っちゃおうかな? ねえ……ヒイラギ」
「わ、私はぁ……怖いのも……悲しいのも……イヤぁ……」
「そうだね。ごめんね。今はまだ、ヒイラギちゃんの力には頼らないよ。大丈夫、みてて、私達が頼りになるって、ちゃんとわからせてあげる。ヒイラギちゃんが安心できるように」
大量の葉っぱがまって、どんどん見えなくなる彼女たちの言葉だけが、やけにはっきりと聞こえる。
「おい、勝手に話を進めるな!」
焦ってそんな風にいう。脚を前に向けるけど、三人が家族になったせいで、迷いがあるせいで、ただジリッとにじり寄っただけ。それにやっぱりこの大量の葉っぱが邪魔すぎる。
僕は前に進めてない。だって下手に今、セツリに剣を向けたら、きっと僕をヒイラギは許さないだろう。
「あのぅ……ありがとう~です。私の事……連れ出してくれてぇ~」
「ヒイラギ……」
「私はぁ二人と一緒にいきまぁす」
「お前が向こうに行ったらここが、リア・レーゼにいる全ての人達が困る事になる……ぞ」
僕は今、酷いことを言ってるかもしれない。だってせっかくヒイラギは家族を得た。なのに……その良心に漬け込んで、それは駄目だって言ってる。それを手放せって……実際、ヒイラギが優しいことを僕はわかってるから……
「ごめんなさい……あやまります~。皆に……あやま……」
「その必要はないよヒイラギお姉ちゃん。そうだよねセツリちゃん」
震えてたヒイラギをレシアのやつが頭ポンポンする。そしてセツリに振った。「はあー」と息を吐くセツリは「しょうがないな」といった。
「その通り。悪いのは全て私達。私達が、星詠みの御子を手に入れたの。強制的に……ね」
どうやらそういう風にするつもりらしい。まあ確かに、それも通るか……
「あのぅ、ありがとうございましたぁ」
完全にヒイラギの心は決まってる。それはセツリたちとともに行くこと。それを心変わりさせることも……そして、二人に今この場で勝つことも僕にはできない。
「それじゃあねスオウ」
ザザザアアアアアア
そんな風に大量の葉っぱが更に舞う。そして三人の姿を見えなくしてしまう。それと同時に、僕の足場になってた世界樹の枝もなんかなくなった。勝手に引っ込んだようだ。
僕は地上へと向かって落ちていく事になった。