2442 前に進むためのXの問い編 826
「月のお姫様?」
女王とかセツリは言ったはずだけど……ヒイラギはお姫様に変換したらしい。まあ実際、どっちでもいいとは思うしね。それにセツリにはお姫様……ってほうが似合う。
女の子が憧れるお姫様の容姿、そしてその服装……ヒイラギがそういうのも納得しか無い。
「うん、お姫様でもいいよ。まあ私はやりたくてやってるわけじゃないけどね」
そういって困り眉に頬でポリポリと頬をかくセツリ。その手にも細かな装飾がされた薄手の白い手袋をしてる。二の腕位までの薄いレースのようなそんな手袋だ。手のひら部分には宝石がハマってる。
「お姫様なのに?」
きっとヒイラギはもったいない……とか思ってるとおもわれる。実際お姫様なんてなろうとおもって成れるものじゃないしね。自称することは誰にでも出来るけど、その立場を持ってる人となると、とても少ないだろう。求めてもなかなか成れるものじゃないし。
もしもとっても行動力があったとして、だからってお姫様という立場に収まるのは難しいよね。女の子が国を作ったとしても、始祖なら女王だしね。ならばどっかの王族に養子にでもなる必要があるが……王族が一般人から養子なんて取ることは無いだろう。だって血筋とか重要視するイメージが有る。
だから後からお姫様になる――というのはとても難しい。それらを考えても、勿体ないと思うのもわかる。
「ふふ、私もヒイラギちゃんと一緒だよ」
そう言ってセツリは腰を落とした。そこに板でもあるのか? というふうに膝を折ったセツリの大きなスカートがボリュームたっぷりにもこもこと広がる。きっとあれは映像だから、月の城でああいう風に膝を折ったってことだと思う。そうやって、セツリはヒイラギの目線と同じにする。
「私と……一緒?」
コテン、と首をかしげるヒイラギ。それに対してセツリはうなづくよ。
「うん、私達は一緒だよ。だってヒイラギちゃんもその立場に望んでなったの? 星詠みの御子になりたかった?」
すると、ヒイラギは首を左右にふる。
「わかんない……けどこうなってたの……」
「そうだよね。私もわかんないよ。もう流されてたら、こうなってた。けど私のこの立場も、ヒイラギちゃんのその立場も他の人にしたら、羨ましい立場なんだよ。でも私達はお互いに困ってる。一緒だね」
「そう……かも」
あっ、やばい――僕はそう思った。そして同時に、こいつ本当にセツリか? とも思った。