2438 前に進むためのXの問い編 822
「はあ、もう仕方ないですね」
なにか……そうなにかのコードが見えた。次の瞬間だ。この地にいる月人たちが一斉に空中に行ってしまった。飛んだわけじゃない。なにやら月人達の体がブヨンブヨンに溶けてセツリのところへと集合していく。月光の中、不気味な集合体がうごめいてる。
わざとだろうけど、丁寧な口調を意識してたセツリ。だって普段はあんな言葉遣いではないと僕は知ってる。でも流石に一斉攻撃に切れたのか、それもここまでだった。
「死ね」
それだけのシンプルな言葉。けど、その威力は絶大だった。
ズズーン
――と響き渡る地響き。そして降臨したのは月人だ。けどただの月人じゃない。超巨大な月人だ。基本のシルエットは元の月人からそこまでかわりはない。けどその腕は六本になって、背中からはギザギザした羽が六対あった。そして頭の上には光輪がある。
そして一番の違いはやっぱりその大きさだろう。50メートルはありそうな……そんな巨体の月人。
「何だあれは!?」
「でっかいやつが来たぞ!!」
「くっそ! スキルも封じられたままなのに……こんなの……」
そんな声が聴こえてくる。確かにスキルが封じられたままでは厳しい。けどそれは月側の施策ではなく世界樹のやってることだ。なんとかヒイラギを説得できれば、そこは解除できるかもしれない。
それか……セツリを説得して帰ってもらうか……かだ。実際セツリに月人共々月に帰ってもらうのが一番早いとは思う。だって戦うとなると……厳しい事に間違いないし。スキルが封じられてるとなれば、リア・レーゼにわざわざやってきてくれるプレイヤーいないだろうし……それならまだ思いっきり暴れられる他の所にいくだろう。
このままじゃジリ貧なんだよね。
「本当に、ヒイラギなんだね」
セツリはこちらを見てそんな風にいう。やっぱり下りて来たのはそれを確かめるため。月光が徐々に収まると、そこにはちゃんとした姿のセツリがいた。
「おふっ」
思わずそんな声が出た。なんか不信を目をむけられる。いやキモかった? それは自覚してる。けど仕方ない。だって……だってだ……目の前のドレス姿のセツリは見たこと無い位に綺麗だった。
男なら誰だってそんな変な声が出るよ! 実体じゃないはずなんだけど、その姿ははっきり見える。




