2426 前に進むためのXの問い編 810
「なん……ですかぁ?」
チカチカとする。私の頭に響く彼の……世界樹の声が「大丈夫」から「来る」に変わってる。世界樹はなにか「来る」を連呼してる。どうしたの? 私は丸まってるこの場所をナデナデしてあげます。
私の為に頑張ってくれてるのはわかってるから。もう良いんだ。もう……良いんです。だって本当の意味でヒイラギを観てくれる人なんてこの世界にはいない。いつかきっと……誰か……と叫び続けてきた。
心の中で。だって私の口はそんなに早く開かないし、回らないのです。だから叫ぶといっても他の子と同じようにキャンキャンと吠える……なんてできませんでした。それに私は……もう、諦めたから。
諦めたから私はもう戻るつもりなんてないです。世界樹さんと一緒にいる。それを私は覚悟したんです。
するとなにか空気が……いえ、風が吹いた。僅かな風でした。私の前髪を少しだけ拭き上げる程度の……そんなふわっとした風。戦場の匂いが漂ってきてちょっと不愉快。
だって世界樹の中は暖かくて、そして優しい匂いがしてたから。でも次の瞬間、声が聞こえた。
「ヒイラギ!」
それは知ってる声です。まあ知り合ったばかりですけど。でもだからこそ……なんでっておもう。なんで、どうしてって思う。
「なに、やってるんですか?」
シュルシュルと、何故か世界樹の枝葉がほどけて行きます。残ったのは私を乗せてる部分だけ。世界樹さんの力もこの部分からはあまり感じれなくなってます。ああ、どうやら切っちゃったみたい。これだと私、落ちちゃいますね。
「ごめん! ごめんヒイラギ!! 君を蔑ろにして!!」
彼は……スオウはそんな風に言ってます。私に謝ってる。私を見て……私の為に頑張ってくれたの? でも、どうして? わからないです。だって私は誰も愛してくれないのに……
「ちょっと、自分だけ好感度稼ぐのやめてもらっていいですか? 私だって頑張ったんですけど?」
後ろからその翼を広げて、何やら猛々しく燃え盛ってるのはレシア……さん。私の事を『お姉ちゃん』と呼ぶ不審者です。だって私には家族はいません。当然、妹だって……
「い……いや!」
なんとか二人から距離を取ろうとします。もう足場がほぼないからそんなに距離取れないけど……強く拒絶したら、スオウさんは伸ばした手を止めた。
「私は……もう……いいんです~。もう、誰にも迷惑かけないからぁ、もういかせてください~」
ポロポロと自然と涙が出てくる。だってもう、期待なんてしたくない。期待して、裏切られることを繰り返したくない。だから絶対に裏切らない所にいきたいの。それが……世界樹の元なんだ。