表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
243/2706

触れ合いが大事

 僕達はようやくイベントを進める事に。最初に向かったのは第四研究所に重なり合うビルだ。そこの爺に用があるわけじゃなく、その屋上にもう一体が居るらしい。

 僕はリアルで知り合った痛い人と共に、頭を悩ませながらイベントに臨む事になったんだ。


 絶え間無く続く蝉の合唱。空に向かってそびえ立つビルの森でも、彼らはどこから、いやどこでも鳴いている。空には大きな入道雲が点在して、この季節の空をその大きな存在感で埋め尽くしてた。

 いつもよりも蒼く見える空の天辺からは、仰ぐことさえ出来ない日差しが世界を明るく照らしてる。いつだってこの時期は、立ち止まって見上げた空の天辺に、太陽があるような……そんな気さえする昼下がり。

 僕達は少しだけそんな太陽の近くに来てた。まあようは、古びたビルの屋上へと居るわけです。このビルはブリームスでなら、国立第四研究所と表される所だ。

 まあ一度この前までは来たわけだけど、その時は玄関前の爺にがっくりしただけだったからな。それに直ぐその後、厄介な奴らとはち合わせたしね。

 だけどこうやって僕が再びここに戻って来たのには理由がある。ここの玄関先の爺さんが「どうしたもんか」と言ってたのは多分これなんだと教えて貰ったわけだ。


 教えてくれたのは新たに知り合った、自称『時の監視者』こと『メーカーオブエデン』さん。なんだそれ? って思わないでください。もう散々思ったから。つまりは痛い人なんです。だって僕が名前聞いたら、嬉しそうこう言ったんだもん。


「名前? ふふふ、名前なんて私には意味のない物だけど、どうしてもと言うなら、この世界の人間が認識出来る名前を教えて上げるわ。

 でも気をつけなさい。私の存在を証明する名を呼ぶという事は世界のアラゴリズムに影響を与えるの。まあそれでも知りたいのなら私の事は敬意を込めて『メーカーオブエデン』とでも呼びなさい」


 長い前振りと、意味不明な単語に付き合ってようやく出てきた名前がメーカーオブエデン……正直世界がどうでもよくなったね。


「ちょっとどうだったの?」


 僕が一人、前回と今回を繋ぐ回想を頭で紡いでると、後方からそんな声が。振り向くと、階下へ続く階段の所の陰で涼んでる奇抜なファッションの女がいる。

 自慢気な生脚を惜しげも無く……というか危ない位に晒して、継ぎ接ぎの改造Tシャツに脱ぎ掛けみたいな上着を羽織ってる女。

 まあファッションだけで電波を表してるような奴だな。黒縁メガネに跳ねるのを押さえるためか、大量のピンで覆われた髪も特徴的だね。

 見た目を気にしてるのか、気にしてないのか分かりづらい。まあどう見ても世間とは一線を隔ててる訳だけどね。

 僕はそんな彼女に手でオーケーを作ってこう言った。


「確かにこいつみたいだ。メカブの言ったとおりだな」


 すると彼女は遠目からでもハッキリと分かる位に眉を曲げた。どうやら何かが気に入らないらしい。たく、何にでも目くじらを立てる奴だ。

 僕は携帯をNPCが居る方に向けるのをやめて階段の方へ歩く。すると彼女が口を尖らせて文句を言ってきた。


「ちょっとその呼び方はやっぱり納得出来ないわ。敬意が感じられないし、それよりもなんかこう……バカにされてる気がする」

「ええ~そうかな? メカブなんて敬意満点じゃないか。そもそもメーカーオブエデンは長すぎるし。地球的な改変をしてみたんだよ。

 郷にいっては郷に従えっていうじゃん。だから我慢してよ」


 まあ実は敬意なんて微塵も無いけど……てか『メカブ』は僕も最初聞いた時吹き出しかけたよ。シクラの奴の感性には驚きだ。そこを取るかって感じだもん。


「くっ……この天寿眼は貴様の心の内まで見透かしてるぞ。貴様は絶対にバカにしてる!」

「な~んだって~」


 実際僕だけじゃメカブの電波話には付き合い切れないから、返事もこんな適当になる。てかいつまでもあんな恥ずかしい演技出来るかよ。あの恥ずかしさは、クラスメイトの前で先生の事を間違ってお母さんとか呼ぶ恥ずかしさの二乗はあるね。

 まあ僕には「お母さん」なんて呼んだ経験はほぼないけど。想像は出来るよ。今日のこれを二乗分減らせばいいのだ。


「…………」


 なんだか適当に返したら、メカブは急にしょんぼりしてる。今まで乗ってたのに、急に乗らなかったから落胆してるのかな? くっそ、レンズの向こうの瞳が良く見えないから判断できないな。すると手の中の携帯からうざったい声が再び聞こえてくる。


「あ~あ、男なら一度やったことを貫き通しなさいよ。これだからスオウは――」

「あのな、あれはお前が勝手に……」


 僕が小声で反論しようとすると、次のシクラの言葉で言葉がつっかえた。


「――セッちゃんに愛想を尽かされる羽目に☆ 女の子の気持ちが分かってないよね」


 ぐぐっ……こいつがそれを言うか。


「ほらほら私も手伝って上げるから。恥ずかしさなんてそのうちどっかいっちゃうって☆」

「それをなくすのが怖いんだよ」


 戻れなくなりそうだろ。それが無くなったら。


「じゃあ、恩を仇で返すんだ? まあ私的にはそれもオッケーだけどね☆」

「くっ……それは……」


 これはある意味、激しい運動するより鍛えられるんだけど……主に精神が。まあ鍛えてくというか、壊されていくと言った方が正しいのかも知れないけどね。

 けど恩を仇で返すなんてそんな……僕は大人しく立ち尽くしてるメカブをみる。そして一つため息をついた。


(しょうがない)


 そう心に言い聞かせてね。


「じゃあお前が台詞言えよ。僕じゃスラスラ出てこないからな」

「オッケー☆ 任せておいて!」


 ノリノリなシクラはウインク一つそう言った。こっちは腹の底がズドーンと重いよ。まあここからは僕はシクラの言葉にあわせるだけ……だけどそれが痛いんだ。


「ん……んん」


 喉の調子を確かめてから、シクラが見事な声真似で語り出す。


「ふっふ、天寿眼の力はさぞかし強力だろうが、忘れて貰っちゃ困るな。僕にもインフィニットアートのゴールデンボールが宿ってる事を」


 完全に芝居口調なシクラの喋り。だけどそれを聞いたメカブは直ぐに顔を上げた。たく、面倒臭いな。


「まさかゴールデンボールの力で、天寿眼の見透かしを欺いてるとでも?」

「ふふっ……それはどうかな? だけど僕に宿るゴールデンボールは人々の感情を詰め込んだパラドックスみたいな物だよ。

 僕の心は一つじゃない。幾ら天寿眼でも、たった一つの心を覗いたからってそれを本心とは思わない方がいいよ」


 はっはっは、自分でも理解できない会話が始まったぜ。まあここはシクラを信じて丁度いい落とし所に持って行って貰うしかない。

 僕の……というかシクラの言葉で何か身を震わせて僕をみてるメカブ。


「まさか複数の心という感情を並列に存在させてるとでも? そんなパラドックスの中で自分を保つことが出来るなんて……いや、既に自分自身と言う存在は薄まってるのかしら?」

「ふっ、その考えもまた間違いだよ。様々な感情は人を成長させる代物さ。感情のバラドックスは僕が経験し得ない様々な物を感じさせて成長をくれる代物だ。

 僕は既に受け入れて、既に学習してる。そうだな。君が時の監視者を名乗るのであれば……僕は『無限の蔵』を名乗ろう。

 人の尽きることのない感情を常に抱え知ることが出来る、満たされる事のない蔵。僕は君の事を、そしてこの愛称をバカにしてなんかない」

「無限の……蔵」


 なんか熱い眼差しでそう呟いたメカブ。だけどマジで止めてほしかった。何だよ無限の蔵って……メカブもメカブだけど、シクラの奴もそんな設定良く思いつくな。

 次から次へと……どこからそんな電波受信してるんだこいつら?


「さて、納得してくれたかな? じゃあそろそろイベントに戻ろうか。なあに、僕たちが協力すれば、今からだって十分出来うる……そうだろ?」

「当然! 負ける気がしないわ」


 なんとか機嫌はとれたみたいだな。んじゃ、ここら辺でまともな会話へ行くかって事で選手交代だ。


「でも良く、見つけたよな。こんな場所のNPCなんて。実際あの爺さんの時点で外したかなとか思ったけど、助かったよ」

「ふん、誰に物を言ってるのよ。そんなのこの天寿眼で一発よ。それよりもアイテムを貰える条件はわかった?」


 メカブの痛い発言は続いてるけど、そこはさり気にスルーして、首を振り振り。


「だめだな。一応アイテムは手に入ったけど、何で貰えたかは不明。ランダムなんじゃないか?」


 手には入った物は多分流行りアイテムの一つ。これを別のNPCに渡せば、更に上のアイテムへの道が開けるはず。

 足がかりを僕は手に入れたんだ。まあでもホント、なんか普通に喋ったらくれたからありがたかったな。ホントに貰えない人とか居るの? って感じだった。

 でももしも何かの条件付きなら、次はないかもだよな。まあだけど、それは貰えた今はどうでも良いことでもある。


「ランダムね。まあ良いわ。ここら辺で流行りアイテムをほしがってたのは、確か何体か居たわ。そこら辺は何か渡す相手によって違ったりするのかしら?」

「さあ、それもわかんないな。取り合えず、やってみて考えるしかないだろ」

「まあそうね。どうにでもなるわよね。私たちなら」


 妙に自信満々なメカブ。てか電波な話をしてたから、もう誰とも被らなくなっちゃったよ。

 セラかリルレットだと思ってたんだけど……違うのかな? でもそしたらどうやってIDで僕がスオウだと分かったんだって事になるし……取り合えず僕たちはこのビルから出て外へ。そこにはまだあのNPCの爺さんが居た。

 まあ当たり前だけどね。


 僕達は取り合えずメカブの確認してる一番近くのアイテムを受け取りそうなNPCの場所へと向かう。路地を幾つか曲がると、翳してる携帯の画面にNPCの姿が映る。


「アレみたいだね☆」

「だな」


 シクラの言葉に相づちを打って、僕はそのNPCをタップする。すると確かに流行りアイテムを欲しそうな事を言うじゃないか。僕はさっき手に入れたそのアイテムを出して、渡すを押す。


「躊躇わないのね無限の蔵」

「当たり前だろ。てかその呼び方はどうだろうかなんだけど」


 それを言う前はスオウって呼んでなかったっけ? 出来るのなら普通に名前で呼んでほしい。


「何が? だって無限の蔵なんでしょ?」


 期待するような目でこちらを見てくるメカブ。どうせここでその呼び方を拒否ったらまたズド~ンと落ち込むんだろう。

 なんか同類扱いされてるし。うう……むむむ……


「まあな」


 たく、こういう意外にどうしろと? 僕の人間レベルが、今日で変な方向に傾いてるぜ。



 NPCにやっとの思いで手に入れた流行りアイテムを渡すと、思った通りに違うアイテムの情報をくれた。なんかこんな感じでね。


『これを私に? いやあ~なんだか悪いですね。そう言えば貴重なアイテムがこのブリームスでおかしな現象を起こしてると聞いたことがあります。

 なんでも噂では、あるはずの無い場所に道が出来、そこに迷い込むとなんと……そのアイテムに食べられてしまうとか。

 ははは、まあただの噂かも知れませんが、何かのお役に立ちますとよろしいかと』


 つまりこれは、このアキバとブリームス……その重なりのどこかで齟齬が現れてる部分があるって事じゃ無いだろうか? ブリームスでは道じゃない所でも、アキバではそこが道と化してる……とかさ。


「つまりはそのズレてる部分にきっとアイテムがあるって事ね」


 メカブは僕が渡した情報でそう推理したよ。まあきっとそうだろう。そこにきっともっと貴重なアイテムがあるんだ。でももっと気になる事も言ってたよな。


「けどさ……アイテムに食べられるって、どういう事だ?」


 このイベントにバトル展開はない筈だけど。アイテムが人を食うってのも今一ピンとこないよな。


「まあ曰く付きのアイテムって奴でしょ。けどその方が貴重性は高そうじゃない。私達のインフィニットアートしかりでしょ?」

「僕のゴールデンボールにいわくなんかついてねーよ」


 なんだその呪われてるみたいな設定は。別に病気とか持ってないよ。健康を取り柄にしてきたんだからな。


「あれれ? 一つ潰れたら活力が大幅ダウンのいわくは嘘なの?」

「それは……あながち嘘でもなさそうだけど……」


 てかやっぱり金○ってわかってるよな? 何を言わせようとしてるんだこいつ。たく、この日差しでただでさえ頭が熱いのに、変な事言われたら、すぐにオーバーヒートしそうだよ。


「まあ取り合えずそのズレてる場所を探すわよ」


 メカブはそう言うと、携帯を翳して歩き出す。僕も携帯を翳して歩き出す訳だけどさ……僕の方の画面にはうざったいシクラが前方のメカブに色々とちょっかい出してる。

 アイツにも見えてるのかな? 重なりあってるのってのは向こうにもこっちの姿を投影してるんだろうか? まあなにされたってメカブがシクラの存在に気づく事はないだろうけどね。

 アイツは僕の携帯からしか見えないフィルターを張ったらしい。僕がそうしろと言いつけた。だって面倒だからね。

 どこで誰がシクラの姿をそのカメラで捉えるか分かったものじゃないし……まあ殆どはメカブ対策だけど。僕の中ではセラかリルレットだと思ってるから、不意に見つかる事は避けたいじゃん。

 どうなるか分かったものじゃないし……まあそれにしては調子に乗りすぎだけどねシクラの奴。アイツどこかからか取り出した紙とペンで何かを書いて、背中にそれを張り付けたみたいだ。

 してやったりみたいな顔でこちらを見て、横にジャンプして「ジャ~ン☆」とか言ってる。メカブの背中に張り付けられた紙にはこう書いてあったよ。


『私はキチガイの電波女です。実は私を除いた世界は、宇宙からの侵略を受けて、洗脳されている!!』


 すごいカミングアウトだね。てか、小学生並のイタズラだよ。まあシクラはシクラで、出来る範囲の暇つぶしでもしてるんだろう。

 めんどくさいから突っ込みも僕はしないよ。てか、そんな場合じゃないしな。


「なあメカブ。お前のその天寿眼とやらでその齟齬の場所は見えてるのか? 一つの町となると、広いんだぞ」


 なんだかさっきからズンズン進んでるから、目的地が分かってる様に感じれる。そして案の定、奴は僕の言葉を受けて「ふっ」とほくそ笑んだ。まさか本当に既に心当たりが!?


「天寿眼を使うまでも無い事よ。私には情報と言うものが頭に直結して入って来るのだから」


 今のこいつに背中に張られた紙を見せてやりたい。まさに電波ってるよ。てかそれって……ただ単にネットに接続出来る端末をもう一台持ってるって事らしい。

 片手でなんかピコピコしてるぞ。


「おい、なんだよその左手の物は? 外部端末に頼ってないか? それに目を経由してるじゃんか」

「細かい事を。目は頭に直結してるわよ」


 きっと誰もがそうだよ! 無理矢理な理屈をこねる奴だ。まあそれも今更だけど。


「で、何を見てんの?」


 僕は突っ込みはせずに(疲れるからね)、後ろから端末を覗き込む。すると今度は華麗に肘うちをみぞおちに食らった。


「テメェ……何すんだ?」

「この端末に表示されてる情報を私以外の人が普通の目で見ると不味いのよ。これにはね、この世界の様々な未来予知が記されてて、それはアカシックレコードに並ぶ重要なものよ。

 だからこその対応策」

「それが肘打ちかよ……」

「違うわよ。今のは条件反射。私の許可無くこの端末の情報を読みとろうとすると、脳細胞を破壊するように仕掛けてあるのよ。感謝しなさい。命拾いしたわね」


 ああ~もう、ようは勝手に見ようとしないでよ! って言いたい訳だね。くっそー、すっげえ回りくどい。でもなんか慣れてきたな……恐ろしい事に。僕の受信感度が少しは広がったって事だろう。

 心が寛大になったって事だよ。


「あのさ、じゃあ口頭でいいからどうやって行き先を絞ってるのか説明しろ」

「全く、しょうがないからこの時代に合わせて懇切丁寧に教えてあげるわよ。GPSってわかる?」


 殺してやろうかと僕はマジで思ったよ。どんだけ人の事をバカにしてるのこいつ。GPSくらい知ってるわ!! 実はさっきからパカパカ音がしてるサンダルが妙に耳についてたんだよな。バカバカ言ってるんだな? 

 だけど僕はそんな感情を押しとどめて、何とか普通に「当然」と答えてやった。


「じゃあGPSで歩いたルートを辿れるのも分かるでしょ? それを使って今まで歩いたルートを除外してあたりをつけてるのよ」

「ふ~ん」


 なるほどね。けどなんか引っかかるんだけど……


「それってお前一人のデータじゃ頼りなくない? そんなくまなくアキバを既に歩いてるのか?」


 ある程度歩いてないと、絞り込みなんか出来るかな? それを一人でやるのは無理があるような……するとメカブ意地を張るようにこういった。


「私を誰だと思ってるの無限の蔵? あなた達の感覚で私を計ろうとしないで。私にはこの天寿眼が――」

「それは使わないんじゃ無かったのかよ?」


 僕がそう言うと、ふるえた声で……


「ふっふ、まあ今回は特例中の特例を発動しても……」


 そんな事を言い出した。まあ、どうせ変わらないだろうけどね。だから僕は機嫌を悪くしないように気を使ってこう言った。


「別にそれはいいよ。天寿は早々使うものじゃないだろう。世界のバランスの為に。ここは地図ギルドのサイトで、確認すればいいんじゃないでしょうか?」

「そそうね。天寿は世界に与える影響が大きいから、特別にその案を承諾してあげる」


 そう言ってメカブは手元をピコピコ動かしてきっとそのサイトにアクセスした。さて、前に見たときはまだ三分の一くらいだったけどどうなんだろう? 提案しといてなんだけど、実際地図ギルドのサイトの進行の度合いに賭けてる事でもある。

 覗いちゃダメだし、こっちはこっちでそこにアクセスするかな。そう思ってると、なんだかメカブがチラチラこっち見てる事に気づいた。


「何だよ?」


 そう言うと、黒縁メガネの奥の瞳を反らしながら、呪いの端末をこちらに向ける。


「限定解除」

「は?」

「特別にアンタだけは見れる様に限定解除してやったの。ありがたく思いなさい」


 なるほどね。そう言うことか。僕はメカブの隣に行くよ。

 横からのぞき込むとこの短時間で結構地図は進行してる様だった。半分位は情報が広がってる。流石職人サイト。

 サイト一番上にはアキバの衛生写真に、ブリームスの建物を書き込んだもの。でもこれじゃあ建物の名前と位置しか分からない。

 でもその下にはブリームスとしての地図が随時更新されてる。これを衛生写真と照らしあわせれば、繋がってない道があるかも知れない。

 まあもしかしたら、この範囲外かも知れない……けど、それでも候補が半分になるのはどっちみち、闇雲に歩くよりは効率的だろう。


「どうだ?」

「この地図だけでも数カ所はあるわね。取り合えず近い所から行ってみるわよ」

「だな」


 たった一カ所……そう思ってたけど数カ所、ブリームスでは道になってない箇所があった。残りの半分を考えると、更に後数カ所はあるかも知れない。

 その全てが当たりなのか……それとも……まあ行ってみれば分かる事だろう。



 僕たちは一番近くの齟齬の場所へ。そこは不気味な位に人がいない。おかしな事は周りには人が一杯なのにだよ。多分みんな画面見ながら移動してるから……何だろう。

 これもある意味落とし穴だよな。


「何か見える?」

「いいや、バカが壁と相撲してる位……」

「何それ?」


 しまった思わずシクラのアホの事を……アイツはブリームス側に居るから、ここからは僕達についてくる事は出来ないんだ。まあだけどシクラはメカブからは見えないから、僕は曖昧に誤魔化して先行する。ブリームスでは存在しないその道へ。

 第二百四十三話です。

 イベントがようやく進むかなって感じです。これからはイベント中心でいけるでしょう。役者も揃ったんで。

 てな訳で次回は金曜日に上げます。ではでは。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ