2375 前に進む為のxの問い編 759
「えっと~、スオウさん? いっちゃうんですかぁ?」
そんな風に何やら不安気に僕を見てくるヒイラギ。確かにあいつらちょっと頼りないから、僕がいなくなるのを不安がる……のはわかる。僕は視線を風の外へと向ける。必死に風を押しのけようとしてるモブリ達。かなり焦ってるように見える。
僕にヒイラギと仲良くしてほしくないのか? いや、ヒイラギが自分達以外に頼るようになる……とかいう状態が好ましくないのかもしれない。なにせ頼るのが自分達だけなら、彼ら的にはその権力を使いやすいだろうからね。大きな権力を子供に持たせて、その実権を周囲の大人が握って行使する……そんなのは歴史の中でも普通にあったことだからね。
「ヒイラギは周囲の人が嫌いなのか?」
なんとなくそんなことを聞いてしまった。だって結構この子賢そうだし……昔の事は覚えてないみたいだけど……どうやらヒイラギは周囲の人たちに懐いてるとはいえないみたいだしね。短時間しか接してない僕がそう感じるって相当だと思う。
一番近くに……身近にいる人たちに向ける目が何やら怯えてように見えるんだよね。普通ならこういう場合、傀儡にするためになるべくヒイラギの様な立場の子供を甘やかしまくって自分たち以外の言葉なんて聞かないようにって教育していく……そんなものだろう。
そうやって自分たち以外に依存させないようにする。子供なら基本無知だし、そんな教育はきっとむずかしくなんてないはずだ。でも……ヒイラギは違うようだ。奴らはどうやら失敗してるみたい。
「嫌いじゃないですよぅ。でも気持ち悪いだけです~」
気持ち悪い……そんな風に言われるって……て僕は思う。こんな小さな子に気持ち悪いって言われるってね……
「なんでそう思うの?」
「だって、皆ぁ私に話すことを許してくれないんですぅ~。私はぁ~沢山の人とぉ友達になりたいのに~その必要はないってぇ~立場が違うって~」
なるほど、あまり知恵をつけられると困るから、外部との接触を彼らは妨害してたみたいだ。それにヒイラギは不満を感じてた……と。いくら星読みの御子といっても、彼女はまだ子供。
周囲の人たちは彼女の言葉よりも保護者的な立場である周囲の大人の意見を聞いて対応してたんだろう。
「いっちゃ……やだぁ~」
そういってぎゅっと僕の服を握ってくるヒイラギ。このまま置いて言ったら、また彼らに囲われる日々に戻ってしまう……と賢いヒイラギはわかってる。でもヒイラギを勝手に連れまわすのは……かなりまずいような? かといって、かつては敵だったとはいえ、全てを忘れて子供の姿にまでなってるヒイラギをこのままにするのも……ね。
「まだここは危険です。きっと僕の傍が一番安全ですからね」
そういって僕はヒイラギを腕に抱えてやる。そう、ただの無理矢理な理屈だが、まだ事態は終わってない。ならば、僕の傍が一番安全な場所……それを主張してやろうじゃないか。




