2366 前に進む為のxの問い編 750
風を掴み、風帝武装を完成させる。僕は落ちそうになってた体を風で支えて、軽く弾むようにして上へ上へと上がっていく。リア・レーゼはこの世界で一番大きな世界樹の幹を利用して作られた街だ。
この世界樹の麓の裾野に広がるように築かれた都市は東西南北によって区分けされてて、そして重要な施設なこの世界樹の幹の側面に作られてる。幹からはみ出るように作られた数々の建物……僕が目指すのはその最上階……まあ最上階といっても、建物としては世界樹の中腹にも満たない所が一番上である。そもそもがこの世界樹、大気圏とか超えて存在してそうだし……そんな上まで建物を作ったとしても、きっと使えないだろう。
そもそもそんな所にまで何かを作る建築技術があるかもわからない。大きな大きな世界樹は当然だけど、その広がる枝葉だって数百キロ四方に及んでる。
だから本当ならリア・レーゼの街は日の光の恩恵をあずかれない、そんな日照不足の地になりそうなものである。けど実際はこの大地はとても肥沃みたいだ。
日の光は確かにないが、その代わりに世界樹は淡く光ってるし、この地から芽吹く花とかは光ったりしてる。だからこそ、リア・レーゼは淡く光るたくさんの光によって照らされて、とても幻想的な光景を常に見せてくれてるといっていい。
そんな美しい町、リア・レーゼだが、上に行く途中途中で僕は月人をみてた。
(奴ら、何をやってるんだ?)
時々、世界樹に張り付いてる月人が見える。何やらバリバリとその表面? の皮を食べてるような……こっちも急いで上ってるからあまり注視してみてないけど、僕の目ならその一瞬でもある程度は見える。
月人は確かに世界樹の表面を食べてるようにみえる。はっきり言ってこのままにしてていいのか? と思う。倒した方がいいような……けどそれに手をかけてると、星詠みの巫女の所に間に合わないかもしれない。
そんな事になったら本末転倒だ。だって創作物のように切羽詰まってるが、話の都合上、絶対にギリギリで間に合う……なんて保証はない。このLROは皆が皆、それぞれの物語を紡いでるからね。誰かの為だけに都合よく……なんてのはない。
だからこそ今は月人を無視してる。
「ん?」
一番上の建物には壇上というか、広いスペースがあった。きっと星詠みの巫女が儀式をしたりするスペースだろう。それが見えてきてたところ、そこから何かが落ちてきた。それは結構小さくて、白い布がばっさばさとしてた。僕の目でもなんか丸い何か……にしかみえない。その布が大部分を隠してるからだ。
何かわかんないが、とりあえず……
「よっ――と!」
僕は風を使ってその落ちてきた何かをキャッチする。そこそこズシリと腕に来る重み。それに……なんか柔らかいし、いい匂いもする。暖かさをあるから、これは……って思う。そうこうしてると、月人が何体か同じ場所から落ちてくる。ためらいが一切ない奴らだ。僕は華麗に彼らをよけた。
だってそれだけでいいだろう。奴らには飛ぶ機能はない。ならばこの高さからまともに落ちたら助からない。そんな事を思って僕は一番上の建物まできた。すると腕に抱えてた白い布にくるまってる何かがもぞもぞとしだす。
でも、どうやらそれどころじゃないみたいだ。もうちょっと大人しくしておいてほしい。