2337 前に進むためのXの問い編 721
「はあはあはあ……もう、かえっていいかな? そもそもが私がなんでこんなに頑張ってるのか……わかんないし」
普段からあんまり運動してないから、既に私はゼエゼエいってる。まああのでっかい月人のおかげで瓦礫とかも全くなくなってるからなかなかに走りやすい。けど走りやすいだけで走れるか? と言ったらそうじゃない。もう足が棒の様だ。LROはリアルよりも動けるはずなんだけどね。私はそもそもがあんまりLROでLROらしい楽しみ方をやってないからね。いやちょくちょくやってるんだけど……面白いビルドにはなってる。でもそれはなかなかに特殊なのだ。
だからこういう目立つ所では使いたくない。目立つ場所はスオウにでも譲ってればいい。さんざん目立ってる奴だし、皆からの羨望やら熱意……そんなのを受け取ってもっと頑張りなさいよ。
「まさか本当に当たるとはね」
あいつの事だからよけると思ってた。てか私はそんなにスオウを的確になんて狙ってない。それが出来るほど動体視力が言い訳もないからね。私は適当にあそこらへんかな? という風に放ったんだ。するとなんか当たったのである。いや、ほんと私が一番「なんで!?」 って思ったからね。ほんとその自慢のスピードとやらはどうしたって感じ。
「たく、どこまで吹っ飛んでいったのよ」
まさか死んでないわよね? 既にこの都市のコアクリスタルがない以上、ここにはリポップする事が出来ないわけで……そうなると一体どこに飛ばされるのかわかったものじゃない。もしも自分のエリアに帰ってるのだとしても、一番ここから近いゲートはどこだろうか? スオウのスピードならそれこそ誰よりも早く来れそうだけど……でもそれでも数分、数十分はかかってもおかしくないよね。そうなると私の責任が……またオウラさんに怒られるのは嫌なんだよ。
だから無事でいてほしい。私の為に。そんな事を思って走ってると「あぎゃああああ!!」とかいう声と共に飛んでくる白い奴が見えた。
「げっ!?」
月人だ。こんなところにまでいるわけ? 誰か相手にしてくれる人はいないの? あー今からじゃ絶対に詠唱間に合わないよ。それに脚もガクガクだし、よける事もできない。私は覚悟を決めた。
「ごめんなさい。私はここまでだよ南無三」
私は静かに手を合わせる。もういいやっていう感情である。こうなったらもうやられて、私たちの孤児院にかえって、「ごめんちゃい」のメッセージを送ってログアウトを決めよう。そうしよう……と思った。けどその時だ。
「危ない!!」
なんか私の前にプレイヤーが割って入ってきた。
(ちっ、余計なことを)
私は助けに入ってきた彼らに対して、そう思った。