2336 前に進むためのXの問い編 720
「風……だけになってる」
私はそれに気づきました。さっきまでは風に雷、そして火を纏ってたのに、今や風だけです。けど風さえ纏ってれば彼はこの空間を支配してるかのように縦横無尽に動けます。でも雷と火を纏ってた意味はきっとあるんでしょう。
「あいつ、風以外は札を使ってるらしいから、尽きたんじゃない?」
そんな事をメカブに言われました。既にポイズンミストでは月光を遮るのを諦めてるらしい。
「札……ですか……」
確かにそんな事をスオウ君は言ってましたね。風は彼が自由自在に使えるし、風はそこら中にある。だからこそ、風は札を使わなくても、そのら辺から掴んで自分で使える……と。けどそれ以外はそうじゃない。そもそもが雷はそこら中にないし、炎だってそう。だからこそ札を使ってそれを発生させて掴んでたんでしょう。
けどもう札がないから、これ以上は風以外を使うことが出来ない。それなら……
「メカブ、雷の魔法です! 初級の魔法でいいです。それをスオウ君へ!!」
「おっけー!」
札が良いのなら魔法だって……多分どうにかしてスオウ君なら使えるでしょう。もしかしたら他人が使った魔法は無理……とかいう制約があってもおかしくないですけど……とりあえずやってみるだけでも……
「サンダーボール!!」
「ぎゃあああああああ!?」
「あーあ」
あーあじゃない。なんで直撃させるのですか!? 私は思わず「メカブ!!」と怒鳴ります。
「だ、だって……魔法を使えっていったのはそっちじゃん!!」
「それはそうですけど、当ててどうするのですか!!」
普通は当てないでしょう。放つ前に一言いえば、きっとスオウ君ならその意図を掴んだはずです。てかよく当たりましたね!? そっちが驚きですよ。メカブのせいでスオウ君落ちてるじゃないですか!! 私は受け止めようと動きます。けどそこに超大型の月人の腕が走ります。薙ぎ払うかのような動きでスオウ君が吹っ飛ばれされていきました。
「あらら……」
「あらら……じゃないですよ!! メカブはその隠した回復薬でさっさとスオウ君を助けに行きなさい! ここは私がなんとかします!」
「りょーかーい!」
大丈夫なんでしょうね? でも他に選択肢はないです。流石にこの超大型の月人をメカブに相手になんてさせられないですからね。なら私が残ってなんとかするしかないでしょう。スオウ君……君だけが頼りなんですから無事でいてください。