2327 前に進むためのXの問い編 711
「きゃああああ!」
「お母さん!!」
「大丈夫だから……」
「神よ……」
教会の中の人たちは祈ってた。ただそれしかできない。何人かのプレイヤーは外に出て武器を構えてるけど……あまりの大きさ……そして周囲の状況を見た瞬間に、「あっ、これは駄目なやつだ」――と思っただろう。何人かは教会の中に引き返した。けど残った人たちもいた。武器を構えて、スキルの光を帯びる。救援を乞おうとインベントリを開こうとしてるけど、どうやらその人達も開けないらしい。
吹き飛ばされた人たちも何人かはすでにあの超大型の月人へとむかってる。けど、さっきまで……そう倒れてたときとはその人数は歴然の差だ。やっぱり「勝てる」という意識は大切だ。その可能性だけでも見せないと、人の心は簡単に折れる。やっぱり倒れてるとそれだけ威圧感に差が出るようだ。だって倒れてたってあの超大型の月人の大きさは変わってなかった筈だ。
立ってるか……倒れてるか……それだけの違いで、これだけやつに立ち向かう人たちに差が生まれてる。今立ち向かってる人たちが無力なんて思わない。でもあれでは……それにやっぱり頭とか胸とか……そこら辺を傷つけてたときと比べて、ダメージの通りが悪い。さらにさらに……です。
「なんと……」
「どうしたの? やられた?」
この子は……まあ瓦礫の下にまだいるしか無いメカブは仕方ないですね。けど今それを口にするのは不謹慎というものでしょう。思っても口に出してはいけないこと……というのが存在してます。そしてこの子はその口で色々とひどい目にあってきたはずですよ? なんで学習……というものをしないのでしょうか? まあこの子のお陰で逆に子どもたちは賢くなっていってる節はありますけどね。きっと反面教師にしてるんでしょう。
それなのに一切成長しないメカブ……ある意味でどんな子よりも一番手のかかる子供です。
「違います。いえ、それもこのままだと確実な未来ですけどね。一応無事なプレイヤーが戦ってくれてますが……それよりもあの超大型の月人が回復してます」
「え? そんなの反則じゃん」
魔法? いえ、あの超大型の月人事態はそんなのを使ってるような感じでもありません。そもそもあの大きな口で詠唱なんてできないでしょう。じゃあ何か? 体が動かせない分、頭を使うしかありません。私の視界には二体のヘビの様な月人が映りました。いや、月人というよりももう月人の頭がくっついたヘビと言ったほうがいいよな存在。そうだ……あれはあの超大型の月人と一緒にやってきたのです。
ならば……そもそもがあの二体はそのための存在……なのでは? 可能性はあります。私達があの超大型の月人を転ばせようとしてる間は大半があの二体に集中してたはず。倒せてなかったんですね。
もしかしたらサポートに特化してたとかで、生き残れる為のスキルがあの月ヘビには充実してるのかもしれません。あの月ヘビもHP減ってませんし。
超大型の月人がその手を掲げてる。すでに教会は眼の前です。あれをそのまま振り下ろすつもりのようです。駄目です……それは!!
けど次の瞬間、優しい……けど力強い風がこの戦場を吹き抜けました。そして超大型の月人の断末魔が轟く。超大型の月人の腕が落ちたのです。それをなしたのは誰か……今も見えませんがわかります。
「来てくれたんですねスウオ君」
私はそうつぶやきました。




