2303 前に進むためのXの問い編 678
「はあはあ……前方から月人数は……わからん! とりあえずぶっ放せ!!」
そんな事を先頭にいるテア・レス・テレスの男性が叫ぶ。それに伴って、彼の一つ後ろにいた双子の魔法使いが詠唱を開始した。
「さらさらさらら楼閣の淵、見えるあなたは何を見てるの?」
「さらさらつらら天守の番、届く文に君は走る」
「さらさらさらら――」
「さらさらつらら――」
「「空にしみれしみれ二つの思い、想い、重い。叫びましょうご一緒に」」
双子は一人が先に、そしてそれに続くようにもう一人が詠唱してた。そして最後には一緒に詠唱をして、一つの魔法を発動させた。通路全体にきらめく光が満ちた。それは最初はただの光だった。けど次の瞬間それに触れてた月人達の肉体がえぐられた。なんか綺麗な文章みたいな詠唱だった割にはかなりえげつない魔法だ。てかあれは一体? 確かに複数人で一つの魔法を発動させるのってはある。それは知ってる。合唱魔法とかいうはずだ。けど……今双子がつかった魔法が合唱魔法か? と言われると、確信は持てない。
セインを見ると、首を横に振ってる。実際考えを共有してるわけじゃないが、多分セインも俺が思ったことを思ったんだろう。なにせそこそこ長く……いや、実際俺たちはそんなに長くはないか。半年くらいだ。だからそこまで長く一緒にいる……なんていえない。けど……濃かった。それは間違いない。俺たちは五人で濃ゆい時間を過ごしたんだ。
きっと俺たちだけじゃない。LROをやってる全ての人たちはきっとこの世界で仲間たちと、ともすれば一人でも濃い時間を過ごしてるはずだ。だからこそ俺たちが通じ合ってても何もおかしくなんてない。少なくとも俺はそれを信じてる。だからこれはきっとセインも「こんなの知らない!」って言ってるはずた。
合唱魔法ではないのなら一体。俺たちは魔法で進むことが出来るようになった通路を進む。オブジェクト化かして消えていく月人の残骸……けどその時だった。
「づっ!?」
足を取られた。躓いたわけじゃない。なにかが足をとった。視線を向けると、体の大半がない月人が俺の足をとってた。たくさんいたから、重なってて魔法の威力が落ちた所でもあったのかもしれない。俺はすぐにとどめを刺そうとする。けどそれよりも先に月人がぶちょっ――とつぶされた。しかも足で。
「ゴミが……」
そんな風にいったのはさわやかインテリメガネの人だ。太鼓の音へと向かう俺たちの指揮官的立場のテア・レス・テレスの人。彼の部隊は一番後ろにいた。だから躓いた俺たちの処までやってきたんだろう。俺たちが進まないと彼らも進めないから。
「あの、ありが――」
「お礼をいわれるようなことではありません。さあ、進みましょう」
そういった時の顔は会長と共にいたときの様な穏やかなものだった。けどさっきの一撃……月人を踏みつけた瞬間の彼はとても怖かったような……そんな気がした。気のせいか?