2292 前に進むためのXの問い編 667
「いや……いやいやいやいや、そんなわけないだろ! じゃあ何か? ここが最深部なのか?」
壁画にハマった淡く光る石。確かにそれはとても特別な感じを醸し出してるが、いやまさかそんなわけ……と俺は思ってる。本当にそんなことがある?
「鑑定をしたらいいでしょ。スキルの結果なら信じられるでしょ」
ユズの奴がそんな風に言ってくる。確かに……まあもちろんするつもりだった――というか実はしてる。そして結論も出てた。だってとりあえず何かわからないものは『鑑定』をする――ってのは常識である。まあそれでわからないものも往々にしてある。でもわずかでも鑑定は情報をもたらしてはくれる。今回だってそうだ。俺にわかるのはそのアイテムの名前だけ……そしてその名前は『月の要石』だった。なんか入ってるが、ようはそれは月の石で間違いなさそうだ。
でも……こんなことがあっていいのか? と思ってしまう。
「どうするリーダー?」
「確か、ほかに遺跡を攻略してたプレイヤーの情報ではその月の石を外すと遺跡が停止する……みたいなことだったよな?」
「そうだな。まあ壁画にハマってた……なんてのは聞いたことないが」
「俺も普通に台座にでもはまってるのかと思ってたぞ。それがまさか……」
なんか壁画の一部になってるなんて……けどこれはもしかしたら僥倖かもしれない。なにせ……だ。なにせこの月の石を取り外せばこの遺跡は機能を停止する。そしてそうなったら、月人達は一斉に消えてしまうはずだ。機能停止した遺跡の情報は確かそんな風だったはず。
「これをとれば、遺跡は機能を停止して、月人を退けることが出来る」
「うん」
「おう、俺たち運がいいな」
ユズに続いてフォッチャの奴がそんな風に言う。確かに運がいい。本当なら遺跡の最深部なんてのはそうそう来れるわけはない。まあ実際、ここが最深部なんてのはわからないが。
「実際、ここからこの太鼓の音の発生源まで無事に行けるのかなんてわからない……」
「ああ」
「実際、普通に考えたら私達だけで月人が蔓延ってるであろうこの遺跡の中を進軍するのはきつい」
ベズとセインも続く。
「なら、選択肢は一つだけか……これがきっと一番可能性が高いだろう」
その俺の言葉に皆がうなづく。けど最後にこれは言わないといけない。
「きっとあの月の石に触れたらボス戦が始まるぞ」
「まあ当然だよな」
「それは覚悟してる」
「だがそれでも、俺たちだけで無数にわき続ける月人の中を進むよりはましだ」
「この子の為なら私はどんな困難だって……お姉ちゃんに力を貸して」
なんか一人姉ムーブをかましてる奴がいるが、お前はその子のお姉ちゃんでもなんでもないから。でも意見はまとまった。ここであの月の石を取り出すか、破壊する! それしか実際俺たちには勝機はない。