2280 前に進むためのXの問い編 655
「くっ――ベズ!!」
その言葉と共に、あたり一帯が真っ白になった。ベズが放ったのは閃光弾……ではなく煙幕だった。実際どっちがいいのか? いろいろと話し合った。けど月人には目と思しきものが外側から見る限り確認できない。それでも正確に獲物を狙える月人はもしかしたらこっちが予想もしてないところに目があったりするのかもしれない。でももしかしたらもっと別の、それこそ音とか匂いとかの器官が発達してたりするのかも。まあ口と鼻は確認できてたけど、目は確認できてなかった。あと耳もよくわかんない。なのでここは閃光よりも煙幕とかのほうが有効だと俺たちは判断したんだ。
あたりに一気に白い煙が満ちる。俺たちはそれに乗じて、この戦場から一時離脱することにしてた。そしてそのルートもちゃんと事前に打ち合わせてしてた。俺たちも煙幕の中、見えてないんだ。だからこそ、ちゃんとどういう風に逃げるのか……その打ち合わせは重要だ。そしてさらに方角も何もわかんなくなる。そこで大切なのは光石と呼ばれる小石である。それを事前においておいた。とりあえず月人に吹っ飛ばされなさそうなところとかにだ。そんなにはっきり見える必要はない。
なんかキラキラしてるな……程度だ。けどそれでわかってる俺たちはそれを目印にできる。
「こい!」
俺は背後にいる子供の了承なんてとらずに素早く肩に米俵みたいに抱えた。そして走る。背後では月人がやみくもにに攻撃を繰り出してる。そしてそれは沢山いた月人同士に当たって互いにダメージを負ってくれてる。怒った月人がさらに暴れて……というような感じで背後では普段は絶対に同士討ちなんてしない月人たちの同士討ちが始まってた。
いや、流石に殺すまではいかないと思う。けど闇雲に腕や足を振り回してるから周囲のたくさんの月人にそれが当たって、さらに当たった奴が闇雲に攻撃してさらに怒る奴がふえるという悪循環。ずっとやっててくれ! と思いながら、俺たちは光石を目印にある建物で合流した。
「はあはあ……無事か?」
「なんとか」
「こっちも平気」
「大丈夫?」
「あっ……はい」
女性にいきなり身体をゴシゴシとされてちょっと恥ずかしがってる男の子。こんな窮地できれいなお姉さんに助けられる……そんな体験は実は男の夢だったりする。
そして実際、それを彼は体験してるわけだ。俺たちは仲間だからこいつの普段の性格を知ってるが……このLROというゲームのお陰で、大半の奴らは見た目がいい。だいたい町中にいけば右を向いても左を向いても美男美女がいる……という感じだ。
それに俺たちの中で唯一魔法職なこいつは見た目もゆるふわ系で優しそうな見た目をしてる。哀れな男の子はそんな見た目に騙されてもじもじとしてる。