2272 前に進むためのXの問い編 647
ある里が月人に襲われてた。ある意味で知る人ぞ人……みたいな山間の里。そこは周囲を霧に包まれてて誰にも認識されてないような……そんな里だった。そこが月人に狙われたのはある意味で運がなかったとしか言えない。
どういうことかというと、そこには遺跡があったのだ。山肌に露出したその遺跡は里では神事をやる時に使ってた。そしてその遺跡がちょっと前から光りだしてた。淡い青い光を帯びた遺跡にその里の人たちは興奮した。
なにせ遺跡が自分たちの神事に答えてくれた……と思ったからだ。それに最初は奥から出てきた月人を彼らは神だと思った。膝をついてあがめる。けどそんな行動になんの意味もない。
なにせ月人は命令されたことだけをただ遂行する人形なんだ。そして遺跡からあふれ出す月人に下されてる命令は単純だ。
『目の前の敵を排除せよ』
それだけ。それからは惨劇が始まった。最初はそれこそ神事をやってた遺跡だけに木霊してた悲鳴。でも当然だけど、このまま殺されてたまるかという人たちや単純に月人に恐怖を抱いた人たちが外を目指す。それでも月人につかまって無残にも殺されしまう人たちが大半だったが、なんとか遺跡の外に出て、事態を知らせる人たちも何人かいた。
けどそもそもが村の方に残ってたのは年寄りや、神事なんて糞くらえとかおもってる若者とか……そんなのだった。その中にはたまたまこの里に迷い込んでたプレイヤーが一組いた。
「だから言ったんだ!!」
「どうするリーダー? 速攻で逃げるか?」
「いや、このままじゃこの里は確実に壊滅だ。それにどこにも知られてない里だ。もしも運よく逃げれた人がいたとしても森できっと野垂れ死ぬ」
「でもそれは自己責任だよ」
「いや、俺たちが掛け合ったのは村長たちだ。里人全員があの遺跡が実はやばいって話を聞いてたわけじゃない。俺たちがもっと周囲に言いふらせておけば、逃げようとした人だっているかもしれない」
「考えすぎだ。それに……」
そういってパーティーの仲間の一人、斥候担当する奴がリーダーに顔を近づける。まるで聞かれたくないみたいに……
「ここにいるのは俺たち以外NPCだ。助けなくたって別に……」
「普通のゲームならそうだな。けど、お前だってわかってるだろ? LROのNPCは生きてるんだ」
そういって悲鳴が木霊する遺跡の方を向くリーダー。そして決意した。
「俺とフォッチャ、それにベズの三人でなるべく月人を引き付ける。その間に、二人は無事な村人を逃がしてくれ!」
そんな指示をする。