2258 前に進むためのXの問い編 633
目を開けると、いつもと違う……いや最近はいつもここなんだけど……私が見知った孤児院ではなく、とても荘厳な広間? のような場所から最近の私のLROは始まる。
手狭でちょっと狭い……いうなれば窮屈だとも言える古びた孤児院……そこが私達の帰る場所で……そして拠点だった。普通はプレイヤーは拠点はエリアにもってるものだろう。
なにせ個人のエリアは自分が好き勝手に出来る小さな世界……一昔前の言葉で言うならば『箱庭』といえるものだ。
そこは自分だけのおもちゃ箱。何を詰めたっていいのだ。だから大抵の人達はエリアを拠点にしてたりするだろう。ダンジョン化してるプレイヤーたちだって、自分たちのくつろぎ空間は確保してたりするものだ。
だから私達のように今でもLRO自体に拠点を持ってるのは珍しいかもしれない。なにせ……だ。なにせLROで拠点を持つとなったら、それこそ一番簡単なのは『金』を使うこと。そして土地を買ってそこに家を建てることである。
それか借家という選択肢もある。まあどっちみちお金がかかる。大工のスキルとか、なんか開拓系のスキルがあるのなら、フィールドに勝手に家を作る……なんてこともきっと出来る。けどそこそこ目立つ場所に建てると、流石にその付近の領主とかから文句を言われたりすると思う。
だからって山の奥とか森の奥……そんなところだとモンスターがね。大変だ。LROにはモンスターと言う存在がいるから、そこらの山の中に勝手に建物を立てて住んでも、そこには常に危険がいっぱいってことになる。
リアルでもクマとかの問題はあるかも知れないが、クマは案外人見知りらしい。下手な事をしなければ向こうからちょっかいを掛けてくることはない。
でもモンスターは違う。人間がここにいる――としったら、ヒャッハー!! とやってくるのがモンスターという厄介な奴らである。だから街の外に住むのは厳しい。それなら最初から与えられてるエリアを使うのが一番効率的だし手っ取り早い。
でも私達はあの孤児院をほぼただ……というかそこの管理者としてなることで住み着いてるわけだ。費用なんてない。まあだからそこを拠点にできたってのはある。
まあけどそこも今や懐かしい。
「遠い所に来ちゃったな」
そんな事を思って、玉座からの景色を眺める。まあ誰もいないけど……いや私がログインしてきたのを察知したのか、奥の扉が開いて一人の少女がやってきた。
「おかえりなさい女王様」
そういって玉座の前にきた彼女は跪いて頭を垂れる。その少女はレシアだ。ドラゴンの要素をその身に宿した、元は私の友達として作られた存在。
けど今や、その存在はLROの外側ではなく、ちゃんと内側に組み込まれてる。ちゃんとシステムの内側の存在になったわけだ。そんな彼女はこの世界で自由に生きる権利ってやつがあると思う。
私のお守りはすでに終わってる。けど彼女は私とともにいることを選んでくれてる。まあ今はそうせざる得ないんだけど……
「やめてよレシア。それでなにかわかったことある?」
「……?」
私の言葉で立ち上がったレシアは不思議そうにこっちをみる。色々と調べてみる……とかいってたと思うんだが?
「ごめん、寝てた」
だと思ったよ! レシアだもんね!!