2254 前に進むためのXの問い編 629
「これは無理ですね」
なんとラオウさんまでもさじを投げてしまった。あのラオウさんが……である。確かにリアルよりもこっちのほうが力が弱いなんて逆転現象が起きてるとはいえ……それでも普通に僕の腕くらいは握りつぶすことができるラオウさんでも持ち上げることが出来ないのである。
これは異常だ。全く持ってどういうことだ? 全く持って理解できない。
「二人共面白ーい! 私もやってみたい!」
「アーシアじゃ……」
「ふふ、どうぞ」
僕はそんな無駄な事……とか思ったけど、ラオウさんはとてもアーシアに甘い。まあ精神年齢五歳くらいだからな。母性が発揮してるんだろう。
そもそもが孤児院で子供の世話を積極的にやる人である。リアルだってシスターだし、見守るってことができる人なんだよね。幼い子どもたちの相手はお手の物。だからこうやってアーシアにもやりたい事をやらせようとしてるんだろう。
「わわ、すっごく軽いよ!」
「は!?」
「凄いですアーシア!」
僕は驚愕したよ。ラオウさんだって実際そうだろう。けどアーシアを褒めてる。
「お前……本当に?」
「うん、ほら!」
僕の言葉に普通にアーシアは錫杖を振り回してみせてる。そして地面を叩くとあの特徴的な『シャラン』という音が響く。僕やラオウさんがいくら頑張ってもびくともしなかったのに、アーシアは普通に持ててる。おかしい。
しかも軽いとまでいってた。僕たちには重かったのに……だ。つまりはあれって、物理的な重さではなかったんでは? そんな疑問が浮かんできた。持てない装備はない……そんな事を言ったが、もしかしたら前言撤回しないといけないかもしれない。
もしかしたらあの錫杖は、僕やラオウさんには持てない装備――だったのかもしれない。
(でも、そんな事……)
僕はアーシアと錫杖をみる。正確にはコードを見れる状態にしてみてる。なにかある――かとおもったんだ。僕やラオウさんが持てなくて、アーシアがこの錫杖を持てた理由。
もしかしたらそれは錫杖にアーシアが選ばれたとか? そんな事があってもおかしくないと思うが、そもそもがあの錫杖はローレの持ち物だ。
それはどうなんだろうか? 他人のものなのに勝手に他者に乗り換えたりするのかな? まあもしかしたらそういう装備……武器って可能性はある。
けどもしかしたらこの原因はアーシアにあるんでは? って気もする。なにせ……だ。なにせアーシアにはそんなところがあるからだ。