2239 前に進む為のxの問い編 614
「全員の羽、一枚ずつもいで渡しなさい」
「あぁぁ……」
「ああああああああああああ」
「やっぱり人間なんてええええええええええええええ!!」
「うわああああああああああああああああああああん!!」
ローレの言葉で、妖精たちは発狂した。どうやら妖精にとってその背中の羽……というのはとても大切なものらしい。
「妖精にとって羽は命の源です。片方だけでは死ぬことはないですが、飛ぶこともできなくなりますし、その行為は罪人への最大の罰なんです。かつて妖精が他の種族から狙われてた時期があります。
その者たちの目的は妖精の羽です。嗜好品として高く取引されてました。それに妖精の羽はどんな病にも効くとか、不老不死を与えるとか言われてたらしいですよ」
フィアがそんな説明をしてくれる。確かに妖精の羽はとてもきれいだ。勿論精霊へと至ってるフィアの羽は別格。その大きさも形も、そして造形から枚数までフィアは違う。
フィアは普段は二枚しかない羽が、本気? になったら八枚くらいまで増えてた。そしてその大きさも大きくなった。けどどうやら普通の妖精は二枚から変化なんてしないらしい。
人間サイズだった妖精王は背中の羽は二対づつで四枚だったが、そこはやっぱり王だからなんだろう。流石に四つや八つあったら一枚もがれても飛べなくなる……とかなさそうだが、普通の妖精は二枚しかないのだ。
確かに二枚から一枚になったら飛べなさそうだよね。まあ実際妖精って風を掴んで飛んでるわけじゃないと思うけど。魔法的な何かで飛んでると思う。だらか本当なら羽は関係なかったり……けど元は妖精だっだらしいフィアが言うんだからそうなんだろう。
てかこれってローレのやつはそれを知ってるってことだよな? なんてやつだ。まさに悪魔とはあいつの為にあるような言葉だ。
「に、逃げろおおおお!!」
「逃がさないよ」
一斉に四方八方に散った妖精たち。けどそこそこ進むと彼らは壁にぶつかったようにはじけ飛ぶ。
「いったあああ!?」
という声がそこかしこで聞こえた。どうやら知らない間に結界をローレは張ってたらしい。絶望……それが妖精たちに襲い掛かる。いや、やりすぎろ。
「逃げるなんてできないわよ。さああんた達――」
手のひらを上にして手を前に出すローレ。その動作はまさに献上品を求めるそれだ。捕食者と捕食される側……それが明確にあらわれてる。妖精たちは命ともいえるその羽を寄越すしかない。
「あ、あの、こんなことは……」
最初に勝手に召喚された一般普通妖精のロロロがそんなことをいうけど、それは無視してるローレである。でもロロロに一切視線を向けない所をみると、どうやらロロロの事は眼中にないらしい。
他の妖精たちは自分たちの羽を片手で握ってる。きっと葛藤してるんだろう。すると一人がローレの近くにいって、地面にヘロヘロと降りて行った。そしてそのまま地面に頭をつける。
「お願いします……羽は……羽だけは……他の事ならなんだってやるから! やりますから!!」
一人がそれをしたら他の妖精も一斉にそれに続いた。なんかローレの周りの地面に妖精の土下座の絨毯が形成されてた。