2237 前に進むためのXの問い編 612
実際フィアのはなったキラキラとした鱗粉には変な成分がある――わけじゃない。ただあれは推しのアイドルと視線があった――とか、手を振ってくれた――とかでファンがキャーキャーしてる感じと同じだろう。フィアのサービスが終わると、泣き出してるやつまでいる。
「さて、サービスも終わったのなら、もういいわよね?」
「なっ、なんなんだお前は!?」
「そうよそうよ。私達とフィアチェリーゼ様の時間を邪魔しないで!」
ローレのやつの言葉に妖精たちは反発する。そして二人に続いて「そーだそーだ!!」と続く。せっかくのフィアとの時間。それを邪魔してくる人間が悪くて悪くてたまらないらしい。めっちゃ妖精たちがピーピーと騒いでる。けどそんなのにローレは取り合わない。速攻で爆弾落とした。
「フィア、その身の程知らず共に分からせてあげなさい」
「えっと……その方は私の主。契約者です。その方の命令一つで、私は皆さんを攻撃しないと行けなくなります。だから落ち着いてください」
「「「え?」」」
「わかった?」
面白そうにクツクツと笑うローレ。それとは対象的に妖精たちは絶望したような顔をしてる。まあそれはそうだろうね。なにせ憧れの人がすでに誰かのものなのだ。これがリアルのアイドルなら、自分が推してたアイドルに実は彼氏がいました……という感じかも知れない。そんなのが判明したら絶望……いや反転して恨んだりするかも知れない。
僕には推しのアイドルなんてのはいないが、ニュースとかでは時々見たりするよね。アイドルに発覚する熱愛報道ってヤツ。もしもそれが自分が一生懸命推してた存在だとすると、「裏切られた」と思っても間違ってはないよね。まあ実際、アイドルは不文律として恋愛禁止とかが掲げられてるからもしもそれを破ってたとなったらそれはやっぱり裏切り――にほかならないのは仕方ないと思う。
もしかしたら「私達は恋愛します! 恋愛自由主義です!」とか掲げてるアイドルが世の中にはいるかも知れない。知らんけど。それならまあ裏切られた――というのは言いがかりである。そしてフィアも……別に信仰するのは勝手だが、そもそもフィアはそんなの知らなかったわけだから、彼らの絶望は勝手なことだ。
「なんで……フィアチェリーゼ様……」
「精霊とはそういう存在なんですよ。試練を突破できた存在との戯れです。こうやって世界を見ることも出来ますし、楽しいですよ」
「けどこの者がその力を悪用する可能性も……」
「それはそのもの次第ですからなんとも。私達精霊はそれほど世界の短い流れに関心は無いですからね」
そういうものなのか。僕は契約ではなく祝福を選んだわけだが、その力は武装という形で使ってる。実際それは精霊の力というよりも、自然だからね。それを集めて使ってる。僕が与えられたのは力ではなく、使い方……の方だからね。直接的な支援を僕は精霊から受けてる訳じゃない。
「フィアチェリーゼ様と契約した者よ……何が望みだ?」
何やら妖精の一人が悔しそうにそんな事をいってきた。フィアが契約した存在……そんな存在に自分たちは……って感じなんだろう。すでにきっと里も被害を受けてるのかもしれないし。どうしようもないのなら、ローレの言う事を聞くしか無いと覚悟を決めたみたい。