2231 前に進む為のxの問い編 606
基本、雷帝武装は直線移動が基本だ。それはもう妖精王だってわかってる。ただまっすぐに行くだけでは妖精王の月の剣技にいなされてしまう。それはこれまでの行動でわかってる。けど今回は違う。変化が起こってる。
それは僕が三人いることだ。分身? 限りなく似たようなことである。けどもっと複雑というか……その起点を雷帝武装にしてるってだけ。雷帝武装で過剰な雷撃をまとって、それを一気に開放する。そしてそれにシステム……祝福で自身のデータを上乗せした。すると実際はそれはただの雷撃なんだが、システム的には自分みたいになるっていう……そんな技が出来上がった。
まあ種が分かれば、分身の方は自分のこれまでのデータを載せただけで、しかもそんなにデータを込めれるわけでもない。なにせただの雷撃である。記憶ができる部分はないからな。
僕の寄越したデータはすぐに消費されてしまう。けど、そもそもが雷撃なんてのは一瞬だ。その一瞬に優位性を見出した奴が勝つ!! なら十分。
(さっきのままと思ったか?)
僕はにやりとする。妖精王には僕が一気に三人になったように見えてるだろう。けどその反応は淡白なものだった。一応僕のこの目ならそれこそ心拍とか体の状態が分かる。
本当ならそこまで見えるはずもないが、僕の目は特殊だからみえる。だから普通ならただの無表情に見えた妖精王も、僕には一瞬の驚きをちゃんととらえてる。けどそれでも、妖精王はちゃんと対応してた。まずは一体目の動きをいなし、二体目も続けざまにその優雅な剣さばきで攻撃をそらしてた。
けど、あれの本質は雷撃なのだ。いなしたとおもったその武器はなんだ? 本当に武器だったのか? 触れただけで、既にお前は感電してる。
「はじけろ!」
いなした筈の二人の僕……だった分身がその本来の姿になってスパークする。その瞬間、歯を食いしめた妖精王。その動きは完全に止まってる。
僕はその隙を逃さない。斬って斬って斬りまくってさらにはそのたびに激しいスパークが僕と妖精王の間にたまっていく。最後は僕は距離を取って、左手のフラングランを妖精王に向かって投げた。それでもなんとか力を振り絞って妖精王はそれをよける……でも意味なんてない。だってこれは剣での攻撃をしたかったわけじゃない。僕たちに帯電した雷撃。
それに誘発されて、空から落雷が落ちてくる。その指針を僕は示したのだ。妖精王の堪えがたい断末魔の声が響く。