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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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終着点の違う思い

 僕は目の前のモブリを投げ飛ばす。覚えてなくてもそれくらいは出来た。そして聞き出したのはその人の本当の思い。それは安心できる事だった。でもそれでも、僕達はどうやら相容れない。

 けれど、今は協力をしないと。僕達はクリエを助けたいって事に変わりはないんだから。


「お前達は……自分達の都合でなんてもんあの子から奪ってんだ!!」


 僕は胸ぐらを掴んだその人に、唾を吐き掛ける勢いでそう言った。だって許せないだろう……覚えて無くても、そんな常識的な感情は沸き上がる。

 だけど胸ぐらを掴まれて、更に怒鳴られてるのに、そのモブリは至って平然な顔してやがる。


「なんて物……ね。確かに私達がやってた事は酷いことなのか知れない。だけどあの子の存在は、シスカ教を信じてる人々の為にも、あってはならない物なのよ」

「有っては成らない?」


 訳が分からない。だってあの子はただの子供だったじゃないか。ただ友達と楽しそうに遊んでた子供。それはきっと姿や形が変われど、リアルにだってうようよいる普通で、当たり前の光景だろ。

 一体あの子の何が、夢を奪われてしかるべきなんて事をされなきゃいけない程なんだ。


「何なんだよそれ……訳わかんねぇ。じゃああの子はあんた達の神様にも見放された存在ってか? あんた達は、あの子が居なかった方が良かったと思ってるのか?」


 僕は強く彼女を睨んでそう紡ぐ。すると腕の先のそのモブリは、僕から目を反らし、蒼一杯の空を見つめる様にしてこう言った。


「ええ……その通りよ」

「――っつ!! んの野郎!!」


 僕は大きく振りかぶってその人を川へと放り投げた。大きな音と共に水柱が上がり、無数の水滴が日光を浴びて輝く。

 だけどそんな一瞬は直ぐに終わり、止まらない川の流れの中に泡となり消えていく。そしていつもの流れを取り戻した川の反対側に、僕が投げ飛ばしたその人は居た。

 下半身は水の中のまま、上半身だけを岸へ上げてる。


「随分と乱暴な事をしますね。はは……隠された筈なのに、なんで貴方はそこまで熱くなってるのですか? 覚えて……ないんでしょう?」


 こちらを見ず、顔を上げず、その人はそんな言葉を紡いだ。流れる川のせせらぎが僕たちの間に流れてる。僕は背中を向けてるその人へ向けて、こう返した。


「確かに、上手く思い出せない……けど共に過ごした時間があったって事位分かる。思いだそうとする事は、そこに何かが有るから、そうしようと思うんだよ。

 隠されたって見えなくなったって、ここから無くなった訳じゃないんだ」


 僕は自分の胸を叩く。そこに有るものと言ったら心だろ。こいつはまだあの子と繋がってるのだろうか。節々を思い出せない今の僕じゃ自信なんて無いけどさ……でも僅かでもそんな気はする。

 だからこそ僕はまだ、あの子の為に何かしたいと思えるし、あの子を取り巻くこの環境に怒りを覚える事だって出来るんだ。


「ふふ……心ですかそれは? そういう事……頭には効果てき面でも、そこまではって事――はっはは……あはは」


 ブツブツとなにやら呟いて、不意に笑いを漏らしたその人。なんだかおかしく成ってる? おもいっきりブン投げたから、いくら水でも打ち所か悪かったのかも知れない。

 僕がそんな心配してると、有ることに気付いた。あの人の肩……震えて無いか? それはきっと、寒いからって訳じゃない。だってここは随分と暖かい。それに川で水遊びまでやれるのなら、こんな短時間で震える程寒くなるなんてあり得ない。

 だとしたらあれは……見間違いじゃないのなら……一体何に対して震えてる?


「その……通りなのに」

「え?」


 消え入りそうな声に、僕は思わずそう言ってた。そしてその人は、続く言葉も変わらず消えてしまいそうな声で紡ぐ。


「最初から居なければ良かったの……それを私は……否定なんてしない。私達の教えを覆す様な子だもの……けど……あの子は笑うのよ。そして怒って拗ねて駄々こねて……泣いて寝て、そしてまた懲りずに笑顔を作る」


 優しいのか悲しいのか分からない風が吹いていた。頬を撫でるようで、そのささやかさが空しいような気もする。それはきっと受け取り方で違ってくる事なんだろう。

 僕はきっと、目の前のこの人の言葉を聞いて、悲しくもあり嬉しくもある。だからこそ、ただ流れるだけの風に、そんな解釈を勝手に付けたんだ。

 この言葉がきっと、この人の本心。


「貴女は……あの子……クリエが居なかった方が良かったなんて、思ってない」


 僕は反対側で肩を揺らし続けるその人に向かってそう言った。頑なに顔を見せようとはしないけど、涙の粒はこちらからでも見えてた。

 何だろうなこれ……僕はまるで、この人の懺悔でも聞いてる気分だ。僕は神なんか信じちゃ居ない、無神論者なんだけどね。


 本当は逆であってしかりな筈なのに……だけど、この人の気持ちが分かったのは良かったと思う。だって僕にはやるべき事が有るみたいなさ……そんな気がするんだ。

 そして今の僕は、余りに頼りない。何をすればいいのかも、自分が何をしたいのかも曖昧なんだ。だから僕は、言葉を発しなくなったその人に、この言葉をぶつける。


「教えてください。今、この場所で起こってること。何があったのか。そして僕がやるべき事も!」


 僕の言葉に、その人は答えてくれる。顔を上げ、川を進み。僕の元まで戻って来て、僕を見上げて言葉を紡ぐ。


「良いでしょう。もうここまで来たのなら仕方ない。元老院もこのまま貴方を放置するとは思えませんし、使える駒は一つでも増やしておきたいですから」


 駒って……僕をどう利用する気なんだこの人。僕がちょっと引いてると、彼女は胸の十字架を手にしこちらに向ける。その行為に僕はぎょっとしたよ。

 だってあれは武器の筈。言ってる事とやろうとしてる事が違わないか?


「身構えないで頂戴。貴方もその状態のままじゃ、何かと不便でしょう?」


 そう言うと、その人は何かを唱えだした。それはきっと魔法のスペル。するとその人の十字架から、枝分かれするようにもう一つの十字架が現れた。

 そしてそれは僕の目の前まで浮遊してきて、更にネックレス部分が光で形成されていく。それは僕の首をぐるっと回って、光が取れていくと次第に重力に従って首に掛かった。


「はれ?」


 するとどうだろう……なんだか超スッキリ。頭の膜が全て綺麗に取り払われたかの様な解放感。てか実際、さっきまでのモヤモヤ感が嘘の様だ。

 何これ? どういう事?


「どうですか? 頭の状態は良く成った?」

「おう! 完全僕って感じ! なんか自分が戻ってきた様なさ。まあまさに完成系って奴が今ここに光臨したな。崇めて良いぜ、今ならな。好きだろそういうの」


 なんか気分良いから言葉がスラスラ出てくるぞ。だけどそれを聞いたミセス・アンダーソンは何故か残念そうに僕を見てこう言った。


「頭は元から弱いのね」

「誰の事じゃああああああああああ!!」


 僕の叫びはきっと、この空間一杯に響いてただろう。



「――で、今の状況って何なんだよ? そろそろ全部押してくんないオバサン?」


 僕達は箱庭の川を上流に向かいつつ、言葉を交わす。頭がスッキリしたから、今までのわだかまりを取っておきたい気分なんだよね。

 だから対応もフレンドリーに成ってるだろ。


「オバッ……貴方、頭の靄を取ってから目上の人への言葉使いが成ってないわよ。いっとくけど、その十字架は私の意志で壊す事だって出来るのよ。

 一生、ここに閉じこめて無駄な時間を過ごさせても良いんだけど?」


 なんだかミセス・アンダーソンは僕の機嫌の良さに反比例して、こめかみの筋がピクピクしてる。年を取ると短気に成るとかの、アレかな?

 これ以上皺が増えたら、年相応に見られなく成るんじゃないだろうか。ちょっと心配だ。まあミセス・アンダーソンの歳なんて知らないけどさ。


「無駄な時間は困るんんだけど……そんな事は、今はきっとしないと思うな。だって一人であんなにボロボロだったって事は、戦力が欲しいところだろ。

 面倒なことだって今は嫌とか言ってたしな、少し前に。だからやれる物ならやってみ~。ホレホレ」


 僕は胸に下りてる十字架を取ってユラユラ揺らす。すると流石に切れたのか、ミセス・アンダーソンは自信の十字架を強く握って何かを紡いだ。

 するとその瞬間、僕が揺らしてた十字架がズトーーンと地面に叩き落ちた。そして同時に、十字架に繋がれてた僕も、地面と衝撃的(物理的な意味で)な挨拶交わしてた。


「ぬもおおおおおお!! イテーイテー! オモー! イテー! やっぱオモオモ!!」


 僕の視界は真っ暗闇。きっと変な態勢で唸ってる事だろう。するとすぐ近くからミセス・アンダーソンの声が届く。


「あらら、顔を埋める程地面がお好き? なら全部埋まるまで徐々に重くして行って上げましょうか?」

「――!!」


 こいつ本当に聖職者か? 行ってることはどう考えも女王様じゃないか!


「どうか、それだけはご勘弁を。神の御霊に御身を捧げる事を誓いますのでどうかお慈悲を……」


 棒読みで取り合えずミセス・アンダーソンが気に入りそうな事を行ってみた。聖職者ってこう言うの好きだろ。だけど次の瞬間、十字架は更に重くなった。

 このままじゃ首がポキッって行っちゃうよ。逆に神をバカにしてると思われたか。


「今の言葉が遺書って事で」

「どんな遺書だよ! 僕は死んでも神に仕える気は無いっての! 本当を言うと、都合の良い神で僕は十分だ。困ったときにお祈りを捧げるのを許してくれるなら、それで良いって感じの信仰心です!」

「大変ご立派な開き直りね」


 ぬが!! 更に十字架が重く……マジで埋まるよこれは。嘘も真実をダメじゃないか! どこか論点がズレてるのかも知れない。

 え~とえ~と……


「あぁ! ミセス・アンダーソンって下から見ると、他のモブリよりも脚が長い様な! 脚線美ですね!」

「えっ!? あっ……そう?」


 なんだか嬉しそうに自分の脚をスリスリ撫でだした。しかも妙に誇らしげ。なんか「気付いちゃったぁ~?」みたいな雰囲気を醸し出してるな。

 だけど何はともあれ、重さは元に戻った様だ。全く、実際適当に言っただけなのに助かった。モブリなんて僕達から見たら全部短足に変わりはないっての。

 まあそれは、口が裂けても言わないけどな。


「ふううぅ、首が折れるかと思った」

「これからは言葉には気を付けなさい。良い教訓になったでしょ?」

「教訓ね」


 口は災いの元とか、ミセス・アンダーソンは言いたいのかな? でも口八丁で難を逃れたし、一概にそうは言い切れない様な気がしないでもない。

 まあ取り合えず、そんな反論は胸の中にしまって置くとして……そろそろ本題に入りたい所だ。僕達は再び川を遡る様に歩き出す。


「なんだか不満が有りそうな口振りね。今度失礼な事言ったら、ただじゃ済まないわよ」


 ミセス・アンダーソンは小さい癖に随分強気だな。なにこれ? 再度通告か? オバサンって言ったの、まだ根に持ってるっぽい。

 どう考えてもオバサンな歳の筈だけど、そこら辺は、きっとデリケートな問題なんだろう。本人に取っては。まあこっちからしてみれば、その歳でまだ割り切れないの? って感じだけどね。

 二十代三十代なら、オバサン言われて怒るのもまだ分かるけど……ミセス・アンダーソンはそろそろ認めても良いような。


 どう考えてもお姉さんって感じじゃ無いもん。まあでも、取り合えず「へいへい」頷いてれば問題ない。不要な問題はさっさと流さないと。

 さっきからずっと気になる事が一杯あるんだ。


「所で、何で箱庭に居るのが僕だけなんだ? 僕達は六人でここを目指してた筈なんだけど……みんなで最後の扉も潜ったし、別の場所にさっきまでの僕と同じ状態で居るとかか?」

「それは……どうでしょう? いいえ、多分居ないわね」

「?? どういう事だよ? いや、ですか?」


 僕は取り合えず語尾を言い直す。てか、居ないってそんな訳無くない? 疑問符を浮かべる僕をミセス・アンダーソンは指さしてこう言った。


「それはここを出たときに見られるでしょう。箱庭も特殊な場所なのよ。貴方だから、ここまで入る事が出来たと思った方がいいわ」


 う~ん結局は意味深に言って、答えは先延ばしかよ。僕だけがこうやって箱庭に居られるのも、何か特殊な理由が取り合えず有るって事か?

 そしてみんなはここには来れてない。それはやっぱり、僕が最後の模様を取り込んでたから……って訳じゃ無いよな。

 それならみんなそれぞれに模様を取り込んでたし、それにそれじゃあ、ここに僕だけが来れる理由にならない様な。


「まあ用は、みんなは箱庭の一歩手前に居るって事だよな。なら、僕がクリエを連れて行ってやるしかないって訳だ」


 責任重大。元々背負う気だった物だけど、やっぱり一人になってみたらわかる。仲間の大切さ。ミセス・アンダーソンは頼もしくは有るけど、やっぱり仲間って物とは少し違う。

 するとミセス・アンダーソンは僕の言葉を聞いて、寂しげにこう呟いた。


「連れて行く……か。あの子には帰る場所なんて無いのに、一体どこへ? ここからあの子を逃がせても、元老院は……いいえ、シスカ教自体があの子を追う事に成るでしょう」

「じゃあ……アンタは一体どうやってクリエを助ける気だったんだよ?」


 そんなにボロボロになって……一人でも対立しようとしてたんじゃないのかこのオバサン。


「私はただ、あの子を利用されるのが気に入らないだけ。上層部はね、まだ保守的なのよ。利用しようと考えてるのは、意地汚い元老院の爺ども。

 まだこれは内輪揉め程度の話よ。それに結局は、私達側はあの子をここから出さない様にするだけ。貴方とは目的の終着点が違うわ」


 そんな事を言うミセス・アンダーソンは、なんだかちょっと冷めてる様な……それこそどこか諦めにも似た何かを僕は感じた。

 だから僕はもう一度この質問をした。


「アンタは、それで良いと思ってるのか?」

「良いわよ。私は元老院のやり方が気に入らないだけで、聖院のやり方自体は反対しない。私はあの子の事を理解してるわ。

 でもそれでも楽しく生きて欲しいから、ここが有るのよ。ここに居ればあの子は幸せなの」


 スラスラと出てきた言葉。それを聞く限り、確かに僕とこの人の目的の終着地点は違うようだ。僕はアイツをここに戻す気なんか無い。

 どの口が、アイツの幸せを語ってるんだよ。ミセス・アンダーソンだって見てるはずだろ、アイツはここから出ていきたいと思ってるんだ。


「幸せって、誰にとっての幸せだよ。それってアンタがただ、掴んでおきたいだけじゃないのか? アンタがクリエを大切に思ってるのは本当だろうけど……その大切を自分の為の過保護に置き換えるなよ!」


 僕は声を荒げて、アンダーソンにそう言った。次第に川は細長く、流れも速く成っていく。僕達はいつの間にか山に入ってる。


「過保護ね……でも聖院の総意は変わらない。そしてそれは私も納得してること……そこは変わらないの。私も聖院の一員。神の教えを受けた一人だもの」


 神の教え……そう言ったアンダーソンは、動きそうも無かった。ここら辺はもっと深い問題なのかも知れない。これじゃあ押し問答と同じか。

 するとその時、山のどこかから爆発音が聞こえた。しかも続けざまに次々とだ。


「なんだこれ?」

「もしかしたら見つかったのかも知れないわ。急ぎましょう!」


 そう言ってアンダーソンは走り出した。僕もその背を追いかける。見つかったって、クリエが元老院共にって事か。僕は駆けながら背中越しに声を出す。


「なあ! 元老院はクリエをどうする気なんだよ?」

「わからないわ。だけどきっと……ろくな事じゃないのは確かね」

「じゃあ別の質問だ。クリエって一体何なんだ? 前に創世歴がどうとか言ってたけど、あれはどういう意味だよ。ここまで来たんだ、十分深入りしてる。

 だから良いだろ、教えろよ」

「それは……」


 まだ渋ってる様子のアンダーソン。だけどもう一歩なのはわかる。ここで引いたらダメだ。クリエの事をもっと知ることは、きっとこれからに必要だと思う。

 だから僕は更に言葉を続ける。


「頼む! 僕は別の意味でちゃんとアイツを助けたい! それはきっとあんた達とは分かりあえない事かも知れないけど、僕はアイツの事をちゃんと知って、それでも助けたいって思いたいから。

 僕だけは、アイツの味方で居るつもりだから!」

「そう……ですか」


 返された短い言葉。それは少しだけ、悲しそうに聞こえた気がした。それにまるで納得したかの様な言葉じゃないか。実際ちょっとびっくりだよ。そして少しの沈黙の後に、ミセス・アンダーソンは走りながらこう呟く。


「あの子は……」


 僕はゴクリと唾を飲む。ついにクリエの秘密に迫る事が出来ると思ったから。だけどその時、僕達の周りからガサガサと言う音が聞こえてるのに気付いた。

 爆発音に紛れてたけど、これってなんだか僕達と併走してるような。そう思った瞬間、植物を押し退けて赤い目をした狼っぽいモンスターが、汚く口を開けて飛び出して来た。


「――っつ!! なんだこいつ等!?」


 しかも出てきたのは一匹じゃない。周りから同時に四・五匹は飛び出してる。僕はとっさにセラ・シルフィングで一番近くの奴を切ろうとする。

 するとアンダーソンの声が唐突に響いた。


「ダメ! それを斬っちゃいけないわ!!」

「え?」


 アンダーソンの声が届いた時には、僕は既に一体を斬ってた。すると、真っ二つにした狼がオレンジの光を放って、その場で爆発しやるじゃないか!


「げほっ、ごほっ――斬るなってこれの事か」


 どうやら倒されたら、爆発するような仕込みがされてるみたいだ。なんて厄介なモンスターだよ。てか、なんか最近似たモンスターを見た気がするな。爆発機能は無かったけど……なんだかこの狼みたいな外見といい、赤い瞳といい良く似てる。


「こいつらは元老院があの子を回収するために放ったハンターよ。障害物は自らの身を犠牲にしても駆逐していく、そんな感じのね」

「たく、こんな奴らに子供を追わせるとか、元老院の爺はボケてるんじゃないのか!?」


 まあ寧ろ、ボケてくれてればこんな事には成らないんだろうけど……それにしても、これじゃあ全然進めないぞ。

さっきから次々と現れやがって……既に二十体は越えてるぞ。

 その間にも爆発音は続いてるし……こんな所で足止め食らってる訳には行かない。僕は同じように敵を避け続けてるミセス・アンダーソンを掴んで強引に肩車の要領で乗せた。


「え? ちょっ……何のつもりよ!?」

「こんな所でグダグダやってたらクリエが危ない。道だけアンタは教えろ。後は全部、凪払って進む!! イクシード!!」


 その宣言と共に、僕は大量の敵へと突っ込んだ。そして爆発の連鎖が、山に僕達の軌跡を描き出す。ようやくなんだ……後少しで、クリエにたどり着ける。

 一日くらい待たせたし、ふてくされてるだろうけど、行ってやらなきゃいけないだろ。間に合わなかったじゃ済ませれない!!

 僕が……僕が行かなきゃ行けないんだ!!


「どおけえええええええええええええええ!!」


 吹きすさぶ風は、僕に触れる事さえ許しはしない。そして見えたのは、森の中にあるお菓子の家? そこに次々とモンスターが突っ込んで行ってる。

 今はまだ、結界が機能してる用だけど、あの数はヤバい。


「ちょっと、このまま突っ込む気!?」

「それ以外にどうしろって言うんだ!! あそこに居るのなら、迷う必要なんて無い!!」


 風と雷撃を帯びた剣が煌めく。僕はきっと、届いた筈……何だよな? クリエ!!

 第二百二十三話です。

 ようやく次でクリエ再登場。箱庭という場所の核心へ迫れる筈です。スオウの記憶も戻ったし、良かったよかった。でもまだ、金魂水とは中々かみ合わないですね。

 この道は正解なのか……残り四日? か三日くらいでスオウは答えに辿り着けるのかも問題です。まあ既に、この道が間違いだとアウトっぽいですけど。でも何が起きるのか分からないのがLROだから、まだまだ引っ張ります。

 てな訳で、次回は日曜日に上げます。ではでは。

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