2228 前に進むためのXの問い編 603
「そのまま相手してなさい」
そんな事を無造作に行ってくるのはローレのやつだ。何か仕込んでるんだろう。その間にも、フィアが妖精王相手にチクチクとした魔法を打ち込んでる。けどそれは僕にも牽制とわかる程度のもの。チラチラとこっちをみてウインクしてくるし、どうやら二人で時間を稼いで、ローレの一撃をお膳立てしよう――ってことらしい。
言葉を介さずともなんとなくそんな事がわかるくらいの関係性があるって事にちょっと嫌な気持ちになる。だって僕はコイツラから離れようとしてるからね。なんかこう……意思疎通? 的な物が出来る程に僕はコイツラと行動をともにしてきたんだなって……そんなふうに思っちゃうよ。
まあだからってここで止まることなんて出来ないけどね。とりあえずフィアに反応は返さずに僕は僕がやってみたい事をやってるみ。だってさ……
(僕が倒してしまっても別に構わないよな?)
――ということである。勿論出来たら……だし、妖精王がただノコノコとなんの安全策も持たずにここに来た。なんてのは流石に思えない。だからここで妖精王であるミレニアムを仮に倒せたとしても、月の諸々の問題が解決する……とは流石におもってない。
でも、やってみたい事をやらない理由にはならない。結果的にそれがローレの思惑どおりになったとしても。
「フィアチェリーぜ様、あなたの思いはわかります。ですが、見てください。これが月の力です」
そういった妖精王は一回僕たちから距離を取った。それでも今の僕なら一瞬で距離を詰められる距離ではある。でもそれをしないのはこっちにも準備が必要だからだ。
一回距離を取った妖精王はひらりと横に回転して僕たちを見据える。何故に一回横に回転したのかは謎である。多分優雅さを見せたかったんだろう。実際、妖精王の容姿でそれをやられると、「優雅だ」とは思う。そして剣の柄を上段にして刀身を下にむける。
そしてそんな刀身に空いてる方の手を添えた。手のひらがこっちにみえてる。そしてその手を柄の方から下の方へとなにやら詠唱をしながらおろしていく。すると妖精王のその装飾がされてる細い剣に光があふれるように出てきた。キラキラとしたプリズムの光。
そして特徴的な赤、青、黄、緑のひときわ大きい(といってもピンポン玉サイズ)光が剣の周囲を回るように現れた。そして更に特徴的だとも思うのは……なんかこれは僕だからわかったのか、あの色をもった光……それぞれがなんか話してる?
声が聞こえてるわけじゃない。けど、僕のコードを見る目だとわかる。
「あれは……」
なんか知ってそうなフィアだけど、それを聞く暇はどうやらなさそうだ。踊るように妖精王が迫ってくる。