2223 前に進むためのXの問い編 598
このスキルの対象を僕以外に広げる。それができるかはわかんないがやってみるしかない。下手に進むよりも止まって集中、僕はパリパリとした電気のせいで手を握れないアーシアへと手のひらを差し出してる。
ちなみにいうと反対の方のオウラさんはなんの抵抗もなく僕の手を取ってる。けどどうせなら、雷帝武装を僕以外にも広げる――それができるのならオウラさんにだって適用させたほうがいい。
まずは僕は雷帝武装を広げるように意識してみる。大体風帝武装も雷帝武装も、この武装系スキルは完全体になると、本当に身体の一部のようにまとえる。
雷帝武装もバリバリと鳴ってるが、それがとどくのはきっと表面数センチか数ミリか……そんなのだ。でも握るとなると接触するわけで、そこらへんはあんまり意味をなさない。
むしろ引っ込めることができるのなら……でもそれだとある意味で雷帝武装が解除されたりしそうだし、一瞬の爆発力が強みの雷帝武装は結局最大出力で使うとなると、この力が外に向くことになるんだから、やっぱり意味なんてないだろう。
それよりも僕のこの雷帝武装の対象を僕以外に広げる方がまだ雷帝武装の力を思いっきり使える――という意味ではいい。
「くっ」
そんな風につぶやいたのはオウラさんだ。僕が雷帝武装の力を広げだしたから、その電撃がつながってる彼女には手から腕へと伸びてるんだろう。アーシアの方はというと、ちょっと放電が強くなった感じだ。これではだめだ。さらにバチバチいってるからアーシアはもっと怖がってる。
けど悠長にやってる時間はない。いくら雷帝武装で思考も加速してると言っても、こういうなれない操作には神経を使うわけで、何回も試したり失敗したりなんてしてたら光に追いつかれる。てかすでにすぐそこだ。
プリズムの光が迫ってくるから、僕たちの影が長く長く伸びてる。猶予はない。どうする? そこで僕はつながってくれてるオウラさんの方に注目する。他者と接触してるのはそこだけだ。そこのコードを読み解き、他者――つまりはこの場合はオウラさんのコードへと干渉してる部分を一気に排除した。荒療治過ぎるが、もうこれしかなかった。
「アーシア!」
僕は無理やりその手をとって、雷帝武装を完全開放して雷になって、光よりも速く動いた。