2210 前に進むためのXの問い編 585
「私に玉座に座れと?」
「はい」
妖精王はフィアの手を取って恍惚な表情をしてる。こうやって見てると、小さな妖精に、大人の男性が興奮してるように見える。字面だけ見れば、ハッキリ言って事件性しか無い。
でも不思議な事に、妖精王はイケメンだからね。それだけで帳消しになってる感じがある。困ってるフィアはちらっとローレを見る。その視線には「ローレちゃんどうする?」とかいう言葉が入ってたんだろう。
二人は通じ合ってローレはコクリと頷いた。実際僕には聞こえなかったが、二人は契約してるんだ。それならば実際で思考をやり取りしててもおかしくない。
「えっと私が玉座に座ったら、全ての月関連の事は私が掌握出来るのですか?」
「それは勿論。貴方ならきっと単体でも全てを背負うことが出来るでしょう。なにせ貴方は私達のような妖精のまま甘んじてた存在ではありません。その心は誇り高く、その身体は純潔、そして魂は汚れを決して許さないでありましょう」
「ええ――と……うん……まあ……その……」
めっちゃフィアが困ってる。でもわかる。確かに妖精王はめっちゃフィアを褒めてる。褒めまくってると言って過言ではない。でも……だ。でも……そこにはもう盲信とか、盲目とか……過信……それかもう過剰というか……そこまでの異常さを感じる。
確かにフィアはすごいんだろう。元は妖精だったとしても、今は光の精霊という存在に至ってるわけだからね。そんなフィアをこの妖精王……なんだっけ? 「ミレニアム」だっけ? は崇拝というレベルで見てる。
でも実際、フィアってそこまで高潔というか……威厳がある感じではない。寧ろ精霊の中ではとっつきやすい性格をしてる。見た目もそうだけど、今思えば妖精らしい奔放さがあるからだろう。そこはきっと精霊へと至ってもコイツは変わってなんて無いんだ。
でもなんか……きっとフィアも知らなかったんだろうけど、妖精の里では自身が神格化されてしまってて、そこで一人の盲信者を作り上げてしまってたというね。これにはフィアもびっくりである。引くのも当然だ。
「今すぐにとはいきませんが、必ず玉座を用意します」
「その場合って、今玉座に座ってるあの子は?」
「アレは資格を持っていたので、起動に使っただけです。月の力。それをアレは使いこなすことは……」
そんなコトを言う妖精王。ちょっと馬鹿にしてるようなその言い方に僕はむっとする。友達を都合良く使われて、更にはもう用済みです……と言われてるようなものだからね。それはむっともする。
「他人を自分の基準だけで評価するのはどうかと思いますよ?」
「これはこれは……確かに助かったのも事実です。さすがフィアチェリーぜ様」
そこはセツリに感謝をしろよ……と思った。けど妖精王の中で上がった株はフィアの方である。他者を尊重できるフィアチェリーぜ様さすがです――が妖精王であるミレニアムの中の結論なんだろう。
きっとコイツは何を言ってもフィアを上げるんだろうなって変な確信がこの少ないやり取りで芽生えてる。