2209 前に進むためのXの問い編 584
「私は今や妖精王。まあそれは貴方にとってはとても小さな地位にしか無いでしょう。ですが私は妖精の伝承を頼りに月への帰還をなしました。どうですか? 私の伴侶になりませんか?」
なんかいきなりフィアにプロポーズをしてきたぞ。びっくりである。それはフィアもそうだったようで「ふぇ!? ええええ」という反応をしてる。フィアって妖精の中でも長く生きてそうだが、そういう事は経験なさそう。まあ僕もそんな経験はそんな無いが。
それに今の妖精王の迷いのなさ。……もしかしたら参考にできるかもしれない。参考にできる時が来るのかはわかんない。それに……だ。あれだけ自信満々に言えるのは妖精王がめっちゃイケメンだからってこともあると思う。
あれだけの超絶イケメンなら、そりゃあね。断られるなんて考えずにプロポーズもできるよ。まあ僕も……
(日鞠なら断らないと思うけど……)
なんか変な事を考えた自分の頭からそれを排除するために僕は頭を振るよ。やけに自信満々な妖精王は更に言葉を重ねる。どうやらフィアを相当ほしいらしい。
「私達なら、新たな世界を月で作ることが出来るでしょう。妖精の支配する。妖精が頂点の世界です」
とんでもないことを言ってるな……とか僕は思う。月なんて生命体なんて何もいないと思うが……何を支配しようというのか? いや、実際今までの行動で妖精王が支配したいのは月じゃないってのがわかる。ようは明確な上下が妖精王の中にはある。それはこの星が下で、君臨するのが月なんだろう。
ようは僕たちは……いやもっと言えばこの世界に生きるすべての生命は妖精の支配する物……になるということだろう。でもどうやらその支配する部分というよりもフィアにとっては気になる事があったみたい。
「えっと……すでに月の玉座には座ってる人が居ますよね? その人が伴侶ではないのですか?」
なるほど……確かにフィアの言うとおりだ。何を隠そう……まあ隠してないが、それはセツリである。セツリが月の玉座に座ってその封印を解いたという見方である。実際大多数の人は、今の月人の襲来はセツリが起こしたこと……と思ってる。なにせあのときの映像では玉座に座ってふんぞり返ってたのはセツリで、妖精王は側に控えてたからね。
誰しもが思うだろう、座って偉そうにしてるやつが親玉だって。でも実際は違う。セツリは妖精王にはめられたというか、協力させられたというか……あいつの中のゲーマーの性を上手く利用したというか? そんな感じである。
まあだからこそ僕たちのような直接なセツリの知り合いは妖精王の伴侶になってる……なんて思ってないが……でもフィアのこの反応を見る限り……まあ対外的にはそう思われててもおかしくなんて無い。
そう思ってるとなんかいきなりジジジと妖精王ぶれた――と思ったらなんかフィアの眼の前に現れて彼女の小さな手を取ってこういった。
「私は貴方ほどの気高い妖精を知りません。その高潔さを穢さないでください。本来あの玉座は貴方の居るべき場所だと私は思ってます」