2204 前に進む為のxの問い編 579
「倒したから、私たちはここにいるって思わないの? そこらへんに月人の気配する?」
「そ、そういえば……」
一般普通妖精は周囲をキョロキョロとしてる。あの月人を見てると、やつらが居たら隠れる……なんてしないって思うだろう。あいつらは月人なんて知的生命体みたいな名前だが、行動はどう見てもモンスターのそれである。
獲物を見つけたら、その口から涎を飛ばしながら走ってくるだろう。簡単にそれが想像できるはずだ。
「確かに……森が騒がしくない……」
妖精特有の感覚なのか……そんなことを一般普通妖精はいった。でももう一言、彼女は付け加える。
「でも、これじゃダメ。森がまだ泣いてるもん」
「泣いてる? どういうことなの?」
一般普通妖精の言葉に首をかしげるローレ。でもそこで何か気づいたみたいだ。
「そういえばここにやってきた妖精王ってどこに――」
その時だった、僕たちの周囲に何かが落ちて来た。まるで隕石のように……ね。それは半径二メートル程度のクレーターを作り出す。それに……だ。それにそれらはどうやら僕たちの所だけじゃなく、このクリスタルの森全土に降り注いだみたいだ。
「なんだあれ?」
クレーターを作ったそれはなんか白かった。もしもこれが本当に隕石なら、もっと黒かったり……硬かったりしそうだよね? いや勝手な偏見かもしれないが、隕石ってそういうものだと思ってた。
けど、クレーターの中心部にあるのはそういう感じじゃない。なんか白くて、赤い線があって……と思ってると、それは浮いた。ふわっとその場にうく。僕たちプレイヤーにはそれが
『???』と表示されてた。この状態ではマジで何なのかわかんない。空から落ちて来たし、多分『月』に関連した何か……とは思ってた。
するとそれらの外側がまるで皮膚からはがれるかさぶたの様にべりッとはがれた。それは背中を反ったみたいな月人だった。
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
そんな風に上半身だけはがれた月人が叫ぶ。すると次の瞬間、それがはじけて、周囲に散乱した。どうやらあの丸い状態はなんと、丸まってまとめられた月人の集まり……だったらしい。
「こんな風にこいつらって投入されてるのか?」
「遺跡では地中から這い出てくるとか聞いたけどね」
「ここには遺跡がないからわざわざ月の城から送ってるのかもな」
だからってあの状態で大気圏とかに耐えられるって……まあゲームだからね。
「あわわ……やっぱりいっぱいいるじゃん!」
「いや、これは今やってきたんだよ。でもそれなら妖精王の要請か……近くにいる?」
「それなら、そいつをわからせてもいいかもね」
そう言ってローレがにやりと笑う。かなりの数の月人が周囲に立ち上がってるが、僕たちには焦りはない。焦ってるのは一人だけ……一般普通妖精だけだ。