2194 前に進むためのXの問い編 569
「しょうがないわね……」
そんなコトをいうのはローレである。どうやらローレには何やら案があるらしい。そして詠唱を始めた。なんだってシャリンと一鳴らしするたびに魔法を使ってきたローレがまともに詠唱を……いや、ローレも強力な魔法とか使うときは勿論だけど詠唱をしてた。けどどうやらあの錫杖には詠唱短縮の効果が付いてるのか、かなり短い一節くらいで済んでたんだ。
けど今回はちゃんと詠唱をしてる。フル詠唱なのか、すでに一分くらい言葉を紡いでる。
(覚えてるのかこれ?)
とか僕は感心してた。いや、よく使う魔法の詠唱は覚えててもおかしくないと思う。なにせよく使うだろうしね。まあよくつかう物ほど短縮してると思うが……でも今行ってる詠唱は完全詠唱をしてるだけあって、そんな気軽に使えるようなものでは無いんだと思う。
詠唱が進むに連れて、ローレの周囲に広がる魔法陣が完成していく。最初はそれこそ普通の……足元にだけ魔法陣が現れる感じだったが、足元に魔法陣が完成するとそれで終わり……ってことはなかった。更にその周囲に魔法陣が広がっていく。
そしてローレのちょっと前の空中に、何やら光の帯が伸びていく。そしてそれが今、複雑に絡み合ってる。僕はコードを読んで、何をやろうとしてるのか事前に暴いてやろうと思ったんだけど……流石に複雑すぎるそのコードにお手上げである。
最初は頑張った……けど無理だって諦めた。僕にはまだこれをリアルタイムで読んでいく……っていう事は無理だった。いや、複雑に絡み合ってるコード自体は惑わされずに見える。
けど、それを読み解いていくって事が追いつかない。
「其の声、其の魂に共鳴せし存在よ。答えし、応えし、こたえし――召喚――」
どうやらローレは長ったらしい詠唱を紡いで召喚を行ったらしい。けど召喚は確かにローレの専売特許みたいなものだが、ここに精霊を? とか思った。だってローレの召喚といえば精霊である。てか契約した存在をこの場に呼び出すのが召喚だろう。そう思ってたら、今回の召喚魔法で呼び出されたのはなんと……妖精だった。
「ふえーん、いきなりになにー」
そんな泣き顔の妖精が僕たちの前に現れたよ。
「光の精霊?」
「違うですよ! 光の精霊はフィアだけです! その子は妖精です」
僕の言葉に憤慨してるフィア。いやだって、見た目あんまり変わんないじゃん。だからもしかしたらもう一体の光の精霊を召喚したのかと思った。だって妖精を召喚するなんて思わないじゃん。
「お前、妖精とも契約してたのか?」
「してないわよ」
「え? でも……」
はぁ? みたいな何もわかってない――感じに飽きられてなんかイラッとする僕である。




