2190 前に進むためのXの問い編 564
「で?」
「なにが――で? ――よ。本当ならこれでやってくるのよ。この紋章は妖精と私との友好の証なんだからね。当時の妖精王にもらったんだから」
「脅したんじゃ……」
そんなことをぼそりというと、人を殺せそうな目でにらまれた。いろいろと殺気とかに僕は現代人としては触れてると思う。だからこそ、そういう視線とかなんとかにそこそこ強くなってると思ってた。そもそも年下の女の子の視線なんて……って感じ。けど、ローレの視線にビクッとしてしまった。
こわっ――こいつ。
「月人がいたからもしかしたら食われた?」
「恐ろしいことを言うなお前」
なんてことを言ってるんだこいつ? 食われたって……そんな事……あるか? でも……考えてみたら、サイズ感がみんなペルチェルラさんくらいなんだよね。そして月人の顔は長くて、そしてガバッと口が大きく開く。
あれなら妖精の二人……いや三人くらいは一気に食べられるかもしれない。けど思い出してみたら、顔がデカすぎる割に首は普通の人くらいしかないから、もしかしたら飲み込めないかもしれない。いや、歯があるだろうけど……
ゴリゴリゴリゴリ――
と妖精をやってる姿を想像してしまった。あの口から腕だけがはみ出してたり……絶対に猟奇的だ。
「隠れるのが上手いのですよね? なら、異変を感じてどこかに隠れてるのでは? 妖精が隠れる場所とかは教えてもらってないのですか?」
オウラさんが新たな可能性を示してくれた。実際、そっちの方が可能性高いと思う。だって例え月人に食べられたとしても、全部の妖精が食われるなんてないだろう。なにせローレがいうには隠れるのが上手いらしいからな。
それなら全部の妖精がやられるなんてやっぱり考えづらい。それなら、異変を感じてどこかにみんなで隠れてるってのはものすごくあり得そうだ。
そもそもがあの月人って妖精王が寄こしてるんだし、仲間の妖精を襲ったりするのだろうか? って思うし。
「妖精が隠れる場所……フィア」
「ハイです」
思い当たることがなかったのか、ローレはすぐにフィアに頼った。でも……フィアって妖精なの? 見た目は確かに妖精だが……精霊だよね? その違いはわかんないけどさ。もともとが精霊と発生したわけじゃなく、妖精から精霊へと至ったのだろうか? それならフィアに聞くのもわかる。
「聞いてたわよね?」
「ハイ。こっちです」
どうやらフィアは心当たりがあるようだ。僕たちはフィアの後をついていく。まったくもって何もいない。不気味なほどに……けどおかげで道中は順調だ。なにせ邪魔してくる者たちが何もいないからね。
そしてやってきたのは丘……なのかな? いや、崖って言うのが正しいのか? 上の方から見たら崖だけど、僕たちはその下にいるから丘でいいのか? つまりは僕たちの目の前にはクリスタルの壁があるのだ。
「ここ?」
「はい、ここで歌うことで隠された道を開くことが出来ます。妖精の里はこの先です」
なんか秘匿されてた妖精の里の場所を思わずしってしまった。