2162 前に進むためのXの問い編 536
カツン……
そんな音がする。そんな硬質な音がするわけないんだけど……でもそんな音が何故かする。それも神秘的だ。そして目の前には僕にも大きな立派な角を持つ鹿のような生物。実際顔が人面ってわけじゃないが、その足元は生命が溢れてるから、絶対にこいつはあのジ○リを意識して作られただろうっておもってる。
だから僕はその生物をシ○ガミと呼んでる。実際、こいつも否定しないし、もしかしたらあってるのかもしれない。僕たちはズタ袋に入れた月人、そして捕らえた悪質なプレイヤーを連れてテア・レス・テレスのエリア……というかすでにLROに組み込まれた島にある森へときてた。
なんか僕たちが来るのがわかってたみたいに、シ○ガミが出てくる。今はアーシアが一緒じゃないのに、こいつがわざわざ姿を見せる……なんて珍しい。
カチカチ――
「ふむ、いいぞ」
――カチカチ
なんか僕が連れてきたヤドリカとシ○ガミが何やらそんなやり取りをしてた。そしてヤドリカは勝手にどっかいく。あいつ自由なんだよね。町中にいるときは流石に勝手に動くことはない。なにせまだテイムが一般的に開放されてるわけじゃないから、普通に討伐される可能性がある。だから町中では僕や、それこそオウラさんやメカブとかセツリとかから離れることはない。
でも今はほぼメカブやセツリは孤児院に戻って来ない。実際、月の城がログイン地点になってるのはセツリだけじゃないんだよね。なぜか知らないが、あのときその場にいたメカブもそうなってるのだ。だからこの騒動がどうにか落ち着くまで……それこそ月が落ち着くまでは多分ログインするたびにセツリやメカブは孤児院ではなく、月の城にログインするようになってる。
あんなヤツ……もちろんメカブのことだが、あんな奴でもどうやら全然顔を見せないと子どもたちも心配するようだ。孤児院の子供たちもなんか元気ない。時々「メカブは?」とか聞かれる。院長は? とかメカブちゃんは? とかじゃない。大体の孤児院の子供たちからメカブの奴は呼び捨てである。それだけ舐められてる――とも言えるが、それだけ慕われてる……とも言える。
だから何日もメカブが姿を表さないと、不安なんだろう。別に世話を焼いてたわけじゃなく、ただ孤児院でいつもぐーたらしてただけ――なんだけど、それでもそれだけでももしかしたら寂しさを知ってる孤児院の子供たちにはありがたいことだったのかもしれない。
『準備はできたのか?』
「いや、そういうわけじゃ……」
「なるほど、こいつがね。えい」
なにやらローレのやつがいきなり杖……というかその錫杖を向けた。すると何やら複雑怪奇な魔法陣がシ○ガミを包んだ。
『これは……なんのつもりだ?』
「あんたがほしいと思ってね」
なんかめっちゃ物騒な事をいきなりいいだしたぞこいつ。行った場所でなんでもかんでも問題を起こさない気が済まないやつなのかこいつは? 僕は頭が痛くなった。けど傍に控えてるメリッサはなんか目をキラキラさせて「流石です!」とか言ってる。
なんで僕がこいつらのお守りをしないと行けないんだろう。