2135 前に進むためのXの問い編 509
「それは構わないが、ついてこれるのか?」
私が頭を抱えて耳元で囁いたら、逆に妖精王にそんな風に煽られた。そして次の瞬間、なんか薄くなってた妖精王の羽が開く。虹色に光ってね。それで私は引き離された。けど……私の手を握って、私が吹っ飛ぶのを妖精王自体が止めた。そして私に近づいて腰に手を回す。
(なにを……)
とか、セクハラじゃん……とか思ったが、その顔がかなり近くて、文句を言うのを飲み込んだ。なにせめっちゃキレイな顔がそこにある。もしかして私に近づいた人が口を紡ぐのってこういう心境なのだろうか? ってちょっと思った。あまりにもキレイな顔があると、声が出なくなるっていうね。
妖精王は男性みたいだけど、イケメン度がリアルではありえないくらいには美しい。そして私の腰に手をおいて、さらには手を取った妖精王は動き出した。動き出した妖精王の行動に合わせる必要なんてない。だってこれって……これってなんかダンスみたいじゃん。
ダンスと言っても、学校とかで習うような……そんな現代のダンスではない。男女が手と手を取り合って踊る社交ダンス? って感じ。なんとか妨害したいんだが、不思議と私の体は自然と妖精王の動きについてく。それに最初はなんで……とか思ってたけど、いつの間にか私と妖精王には月の光がふわりとまとわりついてて、なんか体が軽い。
更にいうと……
「楽しい」
――みたいな感じが湧き上がってきてた。それにここはLROだ。普通の社交ダンスとかではこの世界ではならない。自然と私達は床から飛び上がった。くるくると回るあいだ、私の感覚はふわふわとしてたよ。そして私の頭になんかこんな声が……
『月のワルツが発動されました』
月のワルツ? そんなの聞いたこと無いんだけど? そんな事を思ってると、なんか私の体が光りだす。いや、正確に言うと、私の装備……
「このままでは月にふさわしくないな」
そう言って妖精王がぱちんと指を鳴らす。すると一気にあかるかった世界が夜に染まった。そして地面は湖畔になり、大きな満月が映ってる。もちろん湖畔に映る月は私達の頭上にあった。そしてそのタイミングで私の装備が変わった。鎖骨から胸元が空いた銀色のドレス。袖もスカートもとにかくボリュームのあるフリル満載の豪華なドレスになんか変わった。そしてそんな様変わりした私を見て、初めて妖精王が微笑む。
「君は月の姫になりたいか?」
思わず「はい」とか言いたくなるような……そんな甘い顔と声。でも私はなんとか理性を引っ張り出して踏みとどまった。