2078 前に進むためのXの問い編 452
『夢が覚めます』
そんな風に頭に声が響いた。システム的なそれはマザーだろう。そんな声とともに、周囲の風景が変わっていく。きれいな風景だったそれが、線が入って、色が抜け落ちていく。まるで世界がその正体を表すように、ここは作られた世界であると示すように、殺風景なオブジェクトへと変わっていった。
そしてそれさえも消えていく。全くなにもなくなった。
「そうだ! レシア!!」
私はこの変化に戸惑ってたけど、ハッとして後ろをみる。けどそこにはもうなにもなかった。当然だけど、レシアもいない。プレイヤーである私は存在できてる。けど……レシアはもうシステムに組み込まれたNPCだ。夢の対象として、あの場所……最初の繭の中にへと戻ったのかもしれない。
「ちょっとマザー聞いて! 違うの!! レシアは違うの!!」
そんな風に落ちながら私は叫ぶ。どこに落ちてるのかなんてわかんない。ただただ深淵を私は落ちている。どこにむかってるんだろう……でもこのままじゃ……レシアが……その時私は気づいた。私は自分でも気づかない内にずっと拳を作ってたことに。その拳はちょっと空間が空いてる。けどそこには何かがある。
「離さないのなら……」
そうレシアはいった。私は一瞬この場所が夢から覚めるその時に、一瞬だけ意識がどうなったか分かんなかったけど、無意識下でも私はつかんでた。これが……見えないこれがなにか……私にはわかる。これはきっと繋がりだ。私とレシアのつながり。あの時、私に巻き付いてきたレシアの炎。もう見えないが、きっとこれはソレをつかんでる。
「離さないよレシア! マザー! レシアを開放して!!」
私はそう言って落ちてる体をひねるようにして、体全体を使って、そのナニカを引っ張った。実際、引っ張ってる感触だってない。私は落ちながら体をひねったことでクルクルと回った。
そして見た……深淵の底にある光。きっとあれは出口だ。あそこに私は真っ逆さまに落ちてる。でもこのまま落ちたら駄目なんじゃ? まだレシアを返してもらってない。
「マザー出てきなさいなよ!!」
私は怒りを込めてそう叫んだ。あんたは私を嫌いかもしれない。だってスオウにはいっぱい干渉してるくせに私はずっと放置だもんね。でもあんたはきっと見てるでしょ。それなら出てきなさいよ。そもそも私はあんたの生みの親のお兄ちゃんの妹よ!!
とかそんな思いをぶつけて叫び続けてたら目の前に無機質なテキストが見えた。
『なんですか?』
とね。