2070 前に進む為のXの問い編 443
これを私が……そうこの魔法を私が使ったのだ。しかも戦闘中に……いや、ほぼ止まってたけどね。これだけの魔法を自分が戦闘時に使ったというのがなんか感慨深い。これだけの魔法が使えたなら、魔法を使ってるって実感があるよね。いや、もちろん最初はそれこそファイヤとかファイアボールとかでも「うおおお!」って思える。
でもやっぱり人とは欲深い生き物なのだ。次第にそれでは満足できなくなっていき、もっと派手な……強力な魔法を使いたい!! って思う。でも前衛である私には難しかった。それこそ戦闘中に使うってのはね。
せいぜい、詠唱を知っても、それもそこらの岩に叩きつける……ってくらいしか出来なかったよ。
「けど、初めてこの魔法の対象がレシアなのはなんか複雑ではあるけど……」
レシアは姉妹の中でも一際大人しい子だ。これがヒマワリとかなら……ね。まあヒマワリが一番最年少だから、そこはそれで罪悪感があるんだけど……やっぱり最初に叩き込むなら、シクラだったかもしれない。それか百合とか。でも皆私にとっては家族だからね。
誰であろうとこの複雑な気持ちは一緒だった可能性が高い。いやきっとそうだろう。
「いい……ね。いいよセツリ」
そんな声が聞こえる。炎で見えづらいが……この魔法の中心にはレシアがいるのは確実だ。だってそういう風に使ってるからね。でもこんな普通に声が聞こえる? 轟々と私の魔法はうるさいんだが? そして私は直接炎に触れてないのに、それなのに肌が焼けるように熱い。きっとこの空間……この場所が私の魔法で熱せられてるんだと思う。
なのに……だ。それなのにその中心にいるはずのレシアから普通の声が聞こえるっておかしい。
「美味しいよ、これ」
「はい?」
なんか「ヒュコ」って感じの音が聞こえた。すると……だ。するとなんか熱気が消えた。それだけじゃない。魔法そのものが消え去った。そして姿を表したレシア。レシアはなんか皮膚を赤くしてる。火照ってるとか、照れてるとか……そんなんじゃない。もう皮膚が最初からその色だっんじゃないかってくらい赤くなってる。
そしてなんか瞳から炎がちょっと溢れてて、瞬きするたびに火の粉が舞ってるし、髪の毛の先もなんか燃えてる。これって……まさか……
「食ったの? 魔法を?」
「選択が悪かった……ね」
レシアはそう言って唇をぺろり妖艶に舐めた。