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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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待遇改善を求めて

 機嫌最悪で一室に引き籠った所に、何故かノウイが現れた。そして何故か泣いてた。こっちが泣きたいくらいなのに、何故かこっちが付き合う羽目に。だけどそれがきっかけで、僕はセラの行動の謎に迫る気になった。


「どう思うっすか? ひ、酷くないっすかスオウ君!!」

「別に……それがセラだと思うけど……」

「違うっすよ!! セラ様にそんな偏見ダメっすよ!! セラ様は本当はとっても優しい方なんす!!」


 ええ~~、たくどっちだよ。この目が点エルフのノウイは、僕に同意を求めてるんじゃないのか? さっき自分から「セラ様が……セラ様が自分に冷たいっす~~」とか言ってたのに、何なんだよ全く。

 今の僕は一人に成りたいってのに、わざわざ相手してやってるだけでも感謝して欲しいね。やっぱりずっと無視しとくんだった。

 今、僕とノウイは飛空挺の一室に居る。二階はVIP様の為に部屋がいくつかあるからその一室。まあでも、さほど豪華な訳じゃない。

 座れるように椅子があってテーブルがあってって位だ。あとはティーセットが常備されてる位。まあ世界を何周もする訳じゃなく、国同士を結び定期船みたいな物だからな。こんな物なんだろう。


 それを考えると、あのミセス・アンダーソンの居た部屋は異常だけどね。まあ、てなわけで僕は椅子に座って頭には白いタオルを被って、ティーカップ片手に部屋の床で愚痴をこぼすノウイに付き合ってやってる訳だ。

 言っちゃうと僕の方が愚痴こぼしたいよ。ノウイだって僕を置いてこうとした一人だしね。付き合ってやる義理なんか無い。

 だけど部屋の前の扉でシクシクシクシクあから様にやられたら、誰だって気になるよ。扉を開けた瞬間「スオウのバカ野郎っす!!」とか言われたし。

 僕が訳が分からずその勢いにおののいてる間に、ノウイの奴は侵入しやがった。そして今の状況が出来上がってるって訳だ。


「あ~もう、優しいって所には同意できないけど、わかったから出てけよ。邪魔くさい」

「ななななんすかその態度は! スオウ君もそんな事言うっすか!?」

「うるさいから、静かに目の前から消えろよ」

「何故かみんなが自分に冷たいっす!!」


 更に泣き出してしまったノウイ。胡麻の様な目から溢れ出てくる涙は大粒だ。見てるとなんか面白い。こっちから誰かを虐めるなんて状況はなかなか無いからね。

 僕っていつも遊ばれる側だし……それに基本他の人に頼ってる部分が多いから、そんな事出来ないしね。けどノウイの立ち位置なら問題ないかなって思う。


 なんだか微妙だもん。そこまで近しくもないし、セラ側にいるしで、僕の矛先を向けやすい。ある意味貴重な存在だ。

 まあでも、さっきの言葉はからかってる訳じゃなく本気だけどね。マジでさっさと出ていかないかなコイツ、位に思ってる。


「よくこんな自分に向かってそんな酷い事が言えるっすね……鬼の様っすよスオウ君」


 涙を指で拭いつつ、なんとか絞り出した言葉で言い返すノウイ。でも鬼ね~これで? って感じだよ。


「僕はセラに悪魔の所行を受けてるっての」

「セ、セラ様がスオウ君に厳しいのは、きっともっと頑張って欲しいからっすよ!!」


 セラの事と成ると、途端に眉をつり上げて食いかかるノウイ。僕には理解できないな。あの暴力暴言ダークネスメイドのどこにそこまで人を引きつける物があるのか。

 魅了するスキルでも使ってるんじゃね? とか疑いたい。


「頑張るって……アイツの暴言と暴力に僕の心はいつも折れそうに成ってるよ。そりゃあ力だって有るし、頼りにはなる奴だけど、あの性格だけは理解できないな」

「だ~か~ら~! セラ様は優しいだけなんす! ちょっと厳しい所も確かに有るっすけど、それはやっぱり誰かの為なんす!!」


 誰かの為? どの口がそんな事を言ってるんだ? 引っ張った所で口をぶった斬ってやろうか。あれはちょっとなんか言わないし、僕の為になんて成ってない。

 いつだってアイツは理解不能で理不尽だ。


「よくそんなにアイツを庇えるよな。さっき自分も泣かされてたじゃん。あれも誰かの為か?」

「あれはきっと自分の為っすよ。八つ当たりに聞こえましたけど、きっと『ふがいないアンタがどうにかしてみなさい!!』って事だと思います。

 自分相当出来が悪いっすから……」


 そう言ってノウイは、涙ながらに笑った。垂らした鼻水をズズズっと吸いながらも、なんだか嬉しそうに見えるな。

 てかきっと、八つ当たりでしか無いと思うんだけど。僕のあの態度にセラは怒ってるんだろう。スオウの癖に、とかきっと思ってるんだ。

 なのにノウイの奴は勝手な妄想で、それをセラの期待か何かだと勘違いしてる。いやはや、残念な奴だ……顔同様。


「お前さ――――」

「自分は逃げる事とかしか出来ないっす。それって冒険者としても失格だし、軍でも厄介物扱いされてたっすよ」


 あれれ? なんだか語りモードに入ってるぞ。僕の言葉が届いてない。別にノウイのこれまでになんて興味ないんだけど。

 どうせならシルクちゃんやテッケンさんの方が興味有るね。あの二人はもっと近しいし、特にテッケンさんって時々知ってる人が居るくらいの人物だもん。

 何かありそうじゃん。だからノウイのこれまでのヘッポコ話なんて正直どうでも……僕はティーカップに紅茶を注ぎ直して、その味を味わうと言う方法で付き合ってやることにした。

 まあ右から左へ聞き流してる訳だけど……だけどそんな事、気にもとめずにノウイは語る。


「あいつは戦力になんて成らないって散々言われたっすよ。LROは夢を見れる場所の筈なのに、その頃は辛かったすね」


 ズィ――――――と紅茶の温かさが喉を通って胃にしみる。まあ実際はどこにしみてるのかなんてわかんないけど、この紅茶上手いな。

 アップルティーかな? 優しい味がする。


「まあそれでも、理解を示した人も居るっすよ。スオウ君は知らないかもっすけど、前に居た部隊の隊長さんとかそうでしたっす。

 その人に言われたんす……それをお前の武器にすればいいって……あれで自分の心は軽くなったんす」


 ああ~ちょっとまだ髪が濡れてるな。タオルを代えよう。僕は立ち上がり棚の方へ。そこに何故か常駐されてるタオルを一枚引っ張り出す。

 ちなみに今僕は装備をつけてません。服もびしょ濡れだったし、一旦装備を全部外してる。つまりは薄い肌着だけだ。

 トランクスというかスパッツみたいな下と、上にもぴったりしたフィット感のある服があるだけ。それは肌着だけあって、二の腕までの長さで、胸を隠す位しか長さが無い。

 まあそんな状態ってだけだけどね。僕はノウイの前を再び通って、椅子に腰掛ける。さて、新しく紅茶をつがないと。


「そしてついにアルテミナ事変っすね。あれがきっかけで、自分はセラ様の目に止まる事が出来たっす。事変後に直々に誘われたんっすよセラ様から。

 あのセラ様からっすよ! それでようやく自分もLROに居て良いって認められた気がしたっす。そして一生付いていくと決めたっす!!」


 いつの間にか涙は消えていて、ノウイの顔は爛々と輝いていた。まあ、僕は話の半分も流してたけどね。僕はティーカップを口から放し、期待した目で何かを待ってるノウイへこう言ってやった。


「ふ~~ん」

「…………………………………………それだけっすか!?」


 それだけも何も、どう反応すればいいんだよ。まずあんまり聞いてなかったし……いや、聞いてはいたけど、聞き流してて覚えてないもん。


「他に何かある筈っすよ! もっと食いつくとか、掘り下げるとか、自分という人間に興味が沸くとか――ある筈っす!!」

「いや、全然まったく無い。気が済んだのなら、出てってくんない」

「アンタは鬼っすうううううううううう!!」


 絶叫された。狭い部屋の中でそんな風に叫ぶから、うるさいうるさい。


「――てかさ、ノウイは何しに来た訳? 近付くなって雰囲気出してただろ。だったら来るなよ」

「ふん! そんなの自分には全く関係ないっすね! 自分の優先順位は常にセラ様がトップっす」


 僕の素っ気ない態度にご立腹なご様子のノウイ。てかそこはアイリじゃないんだ。アルテミナスのトップはアイリだろう。セラはあくまでその部隊の隊長ってだけだろ。

 でもノウイにとってはそれだけ……じゃないんだろうな。まあそれが「憧れ」か、もう一つの何かは知らないけどさ、巻き込まないで欲しい。どっか遠い世界でやってろよって感じだ。

 けれどノウイは、僕を見逃しちゃくれない。それこそ、勝手に脳内変換したセラのご命令だから。


「だからスオウ君!! 機嫌を直して欲しいっす!」

「それは僕の為なのか? それともセラの為?」


 まあ既に、僕の方は落ち着いてるんだけど……後者の方は堅くお断りしたいね。だって何されるかわかったものじゃない。

 聖典で吹き飛ばされたらどうするんだよ。


「勿論両方っすよ。別にセラ様だって楽しんでスオウ君を蹴り飛ばしたり、投げ網で釣ったりした訳じゃないっすよ」

「さぁ~て、それはどうだろうか?」


 あのセラの事だよ。僕の印象では悪魔の笑みを浮かべて爛々としそうなんだけど。てか、やってたし。


「機嫌治してくださいっす!! 自分も謝りますからお願いっす! 一緒に頭を下げましょう!」

「――って何? まさか僕がセラに『ごめんなさい』とでも言えと? まっぴらごめんだな」


 なんだよ、ノウイの奴僕に頭を下げてるのかと思ってたら、僕と一緒に頭を下げますって事かよ。そんなのは絶対にイヤだ。なにせ僕は悪くないし。

 なんで理不尽に暴力受けて、見捨てられて、その上こっちがごめんなさいしなきゃいけないんだよ。よくよく考えたら、セラにはまだ一度も謝って貰ってないし。

 シルクちゃんやテッケンさんは謝ってくれたのに、セラはそんなの無かった。あいつが一番の原因なのにだ。なんだか考えてらまた腹の方へ黒い物が貯まっていく様な……今度は凹むよりも、イライラが大きいぞ。


「そこをなんとかっす!!」

「絶対にイヤだね!! あいつから謝るのならまだしも、僕から謝るなんてあり得ない。そもそも何に対しての謝罪だよ。僕は何も悪くないぞ」

「そんなの何だって良いじゃないっすか!!」

「よくねーよ!!」


 ああ言うセラみたいな奴は、調子に乗らせたら危ないんだよ。特に僕の身が。そんな自殺行為的な事、出来るわけがない。

 だってまだ死ぬわけにはいかないからな。僕とノウイは、どっちも譲らない言い合いをそれでも続ける。


「そこをなんとかっす!!」

「絶対にイヤだ!!」

「もう一声!」

「その言葉おかしいだろ!! しょうがねえな、には成らないぞ!!」

「じゃあこの通りっす!! 自分はセラ様のあんな姿、みたくないっす!! その為ならこの位出来るっす!! スオウ君はこの行為で良心の呵責が耐えられるっすかね! うおおおおおおおおおおーーー必殺!! 土下座っす!!」

「ぬあ!?」


 ドガアン! とわざわざ頭を床に盛大に打ちつけて土下座するノウイ。それはもう大した綺麗さだった。なにコイツ? 土下座しなれてるんじゃないの? ってな程に完璧だ。

 そしてその姿からは、僕が折れるまで頭を上げない強い意志が染み出てる。なんでここまで……でも良心の呵責とか、口に出さない方が良かったとは思うけどね。


 それを狙ってるって公言してるし。土下座って行為の裏の目的じゃんそれ。そんなもんに乗るかって僕は思えるしね。でも思うのとやられるのでは全然違う。

 流石は日本の古来よりの謝り方だ……しかも最高峰の……こうやって実際に目の前で遜られると、なんかこっちが「こんな事させて……」とか思えて来てしまう。

 でもそれこそが良心の呵責なんだよな。思い通りになって貯まるか。


「ふ……ふん、そんな程度で、僕の心は揺れないっての」

「…………」


 僕の言葉にノウイは反応しない。ただ黙って頭を下げ続けてるだけだ。もう余計な言葉は言らないって判断なのだろうか。

 それとも自分の口調じゃなに言っても、ふざけてる様にしか聞こえないって気づいたか? まあどちらにしても、その意志は固そうだ。

 僕からしてみれば「良くやるよ」って感じ。セラなんかの為にさ。普段ノウイだってこき使われてるのに、それが嬉しいんだろうなコイツは。

 それって今まで誰にも頼られなかったらってのも有るんだろうけど、でも特別セラの事には執着するよなコイツ。


「ノウイってさ……セラの事好きなの?」

「なななななななななななな何言ってるんすか突然!? そんな事話してた訳じゃないっすよ!!」


 流石にこの話題には反応した。流石に僕もびっくりするくらいにだ。これはまさか当たったか? 


「いやだって、ここまで必死に成るからさ、なんとなくそう思っただけだけど……お前、目を覚ました方が良いぞ」

「なに言ってるっすか! じ、自分はそんなんじゃ無いっす!! ただ本当にセラ様は素晴らしくってっすね……だから自分は――」

「惚れたんだろ?」


 僕のその言葉に、頭から立ち上ってた湯気が爆発したノウイ。そしてパタンと床に崩れ落ちた。それはもう土下座じゃない、ただの屍の様だった。

 陸に上がった魚の如く、ピクピクしてるよ。何かブツブツ呟いてるし……そんなにショックか? その時僕は、良いことを思いついた。

 こう考えれば、別に謝っても良いくらいの妙案だ。


「なあノウイ、協力してやろっか?」

「なんの事っすか……」


 力無い声で反応するノウイ。なんかこの世の終わりみたいだな。


「だから協力だよ。お前の恋を僕も応援してやろうって訳だ。それなら謝ってやっても良い。作戦とかと思えば形式的に出きるじゃん」

「それで、何かスオウ君は得をするんすか?」


 ふ、何を言ってるノウイ。僕は僕に向くアイツの理不尽を、ノウイを彼氏にしてそっちにやるために決まってるじゃん。


「当然、僕への理不尽な仕打ちをやめさせる為だ。お前ならそれが向いても耐えられるんだろ? セラのこと尊敬してる様だし。

 それに悪いことなんか無いじゃん」

「それって……彼氏に暴力が向くって事になるっすかね? その理屈を適応すると……今一番セラ様が心許してるのはスオウ君って事になるんじゃないっすか?

「………………………………………………は? なに言っちゃってんのお前?」


 思わずゴキブリでも見る目でノウイを見下してしまったじゃないか。けど、言われてみるとその可能性は出てくるな。でもそんな……あり得ないね。

 あれ? でもそれじゃ僕の言い分に矛盾が……ええ、なにこれ? どうすれば良いんだ?


「う~~ん、けどんな事あり得ねーよ。セラが心許してる? 手と口を出すのを許してるんだろアイツは」


 マジで自重して欲しいくらいにさ。それを愛情とかとは絶対に僕は思えない。あれは虐めだと思ってるもん。


「それじゃあ、何もスオウ君にとって特は無いっすよ。もしも……もしもっすよ。自分とセラ様が恋仲になったとしても、最初の理屈を適用しないことには、スオウ君への態度は改善されないっす」


 恋仲って……いつの時代の人だよお前は。明治か? 昭和か? 大正か? 少なくとも平成じゃないよそれは。けど確かにノウイの言うとおりではあるな。

 僕がセラの理不尽のはけ口なってる理由がわからない事には、二人をくっつけても意味はなさそうだ。下手すると、理不尽ここに極まれりになるかもだし……そうなると僕は死ぬかもしれない。


「確かに……でも、アイツが僕の事を好きだと感じる要素が、驚くことに微塵もない。有る意味、今更気付きたくない事実だったよ」

「そうっすかね……自分には案外そうでも無いような気がするっすけど……」

「ん? 何か言ったか?」

「いえいえ、何もっす」


 まあいっか。取り合えずこの作戦は保留にしておこう。まずはアイツがなんで僕に理不尽なのかを突き止めない事にはな。しょうがない、面倒だけど待遇改善はこれからにとってもモチベーションを維持するために必要だ。

 このままじゃ、幾らゲームの中だって体が持たないよ。そうなって困るのは僕なんだ。だから動かざるにはいられない。面倒だけど、有る意味急務だよな。


 こんな事がまた有ったら傷つくし……そうとなれば善は急げだな。飛空挺が目的地に到着する前の方がやりやすいだろう。

 けどそう言えば、なかなか着かないよな。さっきから暗い空が、窓の外でずっと続いてる。僕は閉まってた服を取り出して袖を通す。一回終えば元通りだからもう完全に乾いてるな。


「一人になりたいと思ってたけど、まあいいや。自分の為だし……避けてるだけじゃ変わらない事もあるよな」


 そう言えばクリエにも同じような事いったしな。


「どこ行くっすか? セラ様のとこっすか?」

「いや……流石にそれはハードルが高い……」


 立ち向かう気持ちにはなってるけど、まずは周りを固めるさ。いきなりトラウマクラスには立ち向かえないだろ。僕はドアを開いて外に出る。


「お前は一人で土下座でもしてれば良いさ」


 そう言い残して、付いて来ようとしてたノウイを部屋に残して歩き出す。さてどうするか? 甲板にセラは居るとか言ってたな……ならまずは一階の大広間に行こう。



 大広間には僧兵数人に、隅っこの方でテッケンさんと鍛冶屋がいた。二人は僕が入って来るなり、別々の反応を寄越した。


「スオウ君、もう機嫌はいいのかい? 本当にあのときは申し訳ない」


 これがテッケンさん。


「なんだお前か」


 これが鍛冶屋。まだなんか他に言うことあるだろう。まあもうどうでも良いけど。


「良いですよテッケンさん。さっきは僕もやさぐれてたんで……それより何やってるんですか?」


 僕はそう言って二人に近付く。なんか鍛冶屋がテッケンさんの武器に何かしてるように見えるけど。


「これはメンテナンスして貰ってるんだよ。どんな武器も定期的に手入れをしないと、消耗が早くなるからね」

「へえ~」


 成る程、さすがLRO。そう言うこともあるのか。


「へえ~じゃない。お前のセラ・シルフィングも見せてみろ。かなり酷使してるだろう。また折らない為にみといてやる」

「あ、ああ」


 まあ確かに今折れたら困る。メンテナンスは大切だよね。僕は腰に刺さってるセラ・シルフィングを鍛冶屋へ渡した。

 剣を抜き見定める用に見つめる鍛冶屋。見るだけで何かわかるのだろうか? って、んな事をしに来た訳じゃない。


「なぁなぁ二人とも、どうしてセラは僕に冷たいんだと思う?」

「……それはなかなか難しい事を聞くね」

「興味ない」


 悩んでくれるテッケンさんはありがたいけど、鍛冶屋は既にセラ・シルフィングに夢中みたいだ。まあ元から頼りになんかしてなかったらいいや。

 僕が頼れるのはいつだってテッケンさんだ。


「いろいろと考える事は出来るけど……女の子の心は男には謎だからね。結局は推測でしかないし、本人にぶつかってみるのはどうだい?」

「僕に死ねと」


 それが出来れば苦労しないよ。


「はは……けど、僕は本気で彼女がスオウ君を嫌ってるとは思わないから、それは大丈夫だよ」


 本当かな? まあテッケンさんの言うことは信用出来るけど……確かにいつまでもモヤモヤな感じで接するのも面倒かもな……ここは覚悟を決めるか。


「わかりました。靴を揃える気持ちで行ってきます」

「自殺?」


 同じような物だよ。自分から地雷を踏みに行くことは自殺だろう。僕は大部屋を飛び出して階段を駆けあがる。するとその途中でバッタリと願い人と出会した。


「「あっ」」


 そんな言葉が重なった。なんだか気のせいか、セラの目は赤いような……それに肌がちょっと蒸気してる? 一体何やってたんだ?

 僕は唾を飲み込んで、拳に力を込めて思いを決める。

 第二百七話です。

 飛空挺内のこのお話は、まあ小休憩と言った所でしょうか。もうちょっとあせろよ、とかお思いかもしれませんが、息抜きは必要ですよ。まあスオウにとって息抜きになってるかは怪しい所ですけどね。

 次で飛空挺内での出来事は終わりかな。新たなる展開と共に、ノーヴィス編は取り合えず第二章みたいな感じで。

 てな訳で、次回は水曜日に上げます。ではでは。

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