2066 前に進む為のXの問い編 439
この杖『ドラゴンの夢の帳』には魔法を使う上で有用な力が宿ってる。でもどんなものなのか……とか思ってたけど、流石は剣でアレだけの性能を誇っていただけある。なにせ同じドラゴンの夢の――に連なるシリーズである。
間違いなくチートな性能をしてる。ハッキリ言って威力よりも動き回る私にとっては詠唱短縮とか詠唱猶予? がいい仕事をしてくれてるみたいだ。きっとこの猶予が間違いを許してる気がする。短縮はどうやらシステムが勝手に詠唱を省力してくれる的な? でももしかしたら一回はちゃんと詠唱しないと行けないかも……今度はべつの奴を詠唱してみるのもいいかも……
「スタイル……変えるの?」
レシアがいきなり魔法を使い出した私を見て、そう言ってくる。私はそんなレシアにこう返すよ。
「まあね。私、何だって出来るようになりたいから」
実際今回始めてこんなちゃんと魔法を使えた気がする。戦闘中にね。実際、練習として、フィールドにいる適当なモンスター相手に戦ったりもしてるけど……やっぱり動き回りながら詠唱するって本当に大変。自分よりも格下相手にだってそうだ。なるべく動きが遅くてダメージだって当たったところでそうではないって相手に対しても、上手くいかなかったりするからね。
それが戦いの恐ろしさなんだろう。一応レシアには強がったけど……次も上手くいくかは全然わかんない。本当にこの装備だよりである。
「今のは驚いただけ……結局その程度の魔法じゃ……剣のままの方が良かったよ」
「あんたの為だっての」
「うん……でもこっちは止まれないからね。頑張ってね」
他人事みたいに言うレシア。アンタの為にこっちは必死こいてやってるんだから、ちょっとはそのシステムに抗う気概を見せてほしい。さっきから普通にこっちを攻撃してきて……てかなんか結構ノリノリというか……前みたいにもうちょっと眠たげにやっていいんだけど?
やる気を見せないでほしい。レシアは大きく頬を膨らませて上体を反らした。これはアレだ。こっちの炎に対抗してどうやらブレスを吐いてくる気らしい。こっちはべつの魔法の準備をするよ。実際ドラゴンのブレスにこれで対抗できるのかはわかんないが……今、とっさに出せる魔法ってこれしかない。
「厳しい世界に安寧の場所を。ただ少しの憩いの時を。強固な隔たり、身を守る壁をここに。ストーンウォール!!」
私の詠唱とともに、岩の壁が地面からそびえ立ってくる。それはなかなかに大きくて、この空間のそこそこ高い天井にまで届いてしまってた。
「こんなんだっけ?」
私はそんな感想をこぼしたよ。