2065 前に進む為のXの問い編 438
私の腕の前方から出た炎がその先の2から3メートル位先にまでふきあれる。
「なんで……」
私はその炎を見てそんな事を呟くよ。けど背後に気配を感じた。
「どこに撃ってる……の? もしかして、気を使った? なめ……てるの?」
そんな事をいったレシアが私の背後をぶっ叩く。衝撃が全身に伝わって……伝わって……あんまり来ないな。どうやらこの装備が上手く衝撃を中和してくれたらしい。流石はチートな装備だ。本当なら吹っ飛んで行くところだろうが、少しとんだくらいで済んだ。それに鎧が衝撃を緩和したから、呼吸が乱れてる――とかもない。これなら……私はさっきと同じ詠唱を繰り返す。
今度は慎重に……けど今度はミスは気にしないよ。
「来たれ炎、集うは意思、集うは勇気――(あれ?)」
詠唱の途中でなんか思った。いけそう……と。詠唱は完全に途中だ。けど……なんだろう? 打てる気がする……というか、なんか魔法陣が完成してる。どういうことかわかんない……けど私は詠唱を省略した。
「ファイヤ!!」
伸ばした腕の先に炎が集ってそれが火炎放射の様に拭きあれる。ファイヤは手元から炎を出す魔法だ。ボール系にすれば投げて着弾点を燃やすってことになるが、ファイヤはいうなれば火炎放射である。
一気にダメージを食らわせるというよりは、燃やし続けることによって、ダメージを総量的に与える魔法だ。実際、これにはそんなに期待してない。だって一番最初に誰もが覚えるような魔法だしね。燃やし続けると言っても、そんなずっと燃やされてくれる敵っそうそういないからね。だから大体誰もがボール系を使うよね。
けど……
「あつい……」
そんなことを言ってレシアが後ろに下がった。実際、レシアは全然熱そうに言ってなかったが、下がったってことはそれなりに熱かったんだろう。でも、レシアはこれまでの戦闘でもわかるとおりに強いはずだ。そもそもがここのボス? みたいな感じでは?
ならファイヤで牽制できるっておかしくない?
「威力上がってる?」
私はぼそっとそんな事思った。そもそもさっき、詠唱を省略できた事もおかしい。私にはそんな技術はない。一応シルクちゃんから教えてもらったけど、詠唱を短縮するのはなかなかに難しいのだ。それこそちゃんと詠唱の意味を理解する必要がある。それを自分の中で納得させて、さらには自分の言葉に直すことで、詠唱は省略やら短縮が可能になる。
私はハッキリ言って、この詠唱の意味なんてしらない。だから普通なら省略とか出来るはずはない。考えられるとすれば……
「この杖の効果……だよね」
ほとんど魔法に造形が無い私でこれなら、もしもこれをシルクちゃんとかが使ったら……私はゴクリとつばを飲み込むよ。