1975 前に進むためのXの問い編 348
「妖精の国って誰も行ったことがないんですか?」
私はその素敵な響きに素直に興味をそそられて聞いてみる。するとパーティーメンバーの皆さんは親切に教えてくれるよ。
「そうだね。そう言われてるけど、ただ行ったことがある人がそれを言ってないってだけはあるかもしれない」
「そうですよね。そんな素敵そうな場所なら自分だけの秘密にしてみたくなるのもわかります。いやでも、誰も行ったことがないって言われてる場所に行ったら、思わず言いたくなっても……うーん」
私がそんな楽しい葛藤をしてると、このパーティーで同じ同性の人が「ふふっ」て微笑んでこう言ってくれる。
「実は妖精の国のアイテムってのは時々市場に流れてるんだよセツリちゃん」
「え? そうなんですか?」
「そうなの」
「でもそれなら行ったことある人がいるってことじゃないですか?」
「みんなそう考える。だからそのアイテムを誰が市場に流してるのかって調べてる人たちはいるみたいだね。もしかしたらそれが妖精の国に続く道標になってるからもしれないし。LROはどこに道が隠されてるかわからないからね」
「そうですね…… 」
本当にこのLROは現実みたいで、特定のルートはもちろんあるし、特定の攻略方ってのもあるにはある。けどそれが絶対じゃない。その人だけの物語……その人だけが生きる人生…… それが刺激的になるように、このゲームには沢山の仕掛けがある。同じクエスト、ミッションであっても同じような攻略法を用いる必要はない。
それこそ同じお使いを頼まれたとしても、プレイヤーによってその過程が十人十色というのがこのゲームだ。だからきっとその妖精の国のアイテムを市場に流してるってのを突き止めてその人物にたどり着くことで妖精の国の手がかりを得られるってのは間違いないと思う。
けどそれだけでもないのがLROということだ。なにせそれはあからさまだ。きっかけをわかりやすくすることでそれしかない……みたいな視野が狭まることを狙ってるというかね。
この森にそこに続く道があるのなら、どうにか強引に見つけることもできると思う。でも妖精の国なんてメルヘンな存在だからね。きっと何かメルヘンな仕掛けがありそう。
「妖精の国もいいが熟練度とかはどうなんだ? せっかくだからあげたい武器を使ってもいいぞ」
「そうですね。ありがとうございます!!」
ちょっと無口なメンバーの人がそう言ってくれる。確かにここの敵は固いが強いって訳じゃない。今までは効率を考えて使い慣れてる武器を使ってたが、スキルを得るためにも、違う武器を使った方がいいかもね。ぶっきらぼうな言葉だったけど、そういうことに気づかせてくれる優しい人である。
「せっかくだからちょっと狩場も移動しようか」
「わかりました」
そんな提案で私たちは今いる場所から移動することになった。別にみんな異論なんてなかったからね。