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命改変プログラム  作者: 上松
第二章 世界に愛された娘
1972/2701

1972 前に進むためのXの問い編 345

「「「師匠! 師匠!!」」


 と、うるさい小学生達からなんとか解放された僕たちは再びデートを再開してた。卓球台があった建物から出て、トコトコと歩いてる。夏の日差しがやっぱりきつい。さっさとどこかの建物に入りたいところだ。でもここら辺には何があるのか…… 僕は知らないからな。


 だから隣で歩く日鞠を見る。さっきの卓球でもそうだけど、汗ばんだ女の子ってやらしい。実際、ちゃんと汗が引っ込むまで涼しい建物で涼んでたんだけどな。でもどうやら意味はなかったらしい。むわむわとした夏の空気と燦々と降り注ぐ太陽光からは逃げられなくて、引っ込んだ汗がすぐに噴き出してくる。


「ふふ、暑いね」


「ああ……」


 口を開くのも億劫だ。でもなんか日鞠はとても楽しそうにしてる。暑さなんて気にしてないって感じの顔してる。隣にいて、そして彼氏である自分はなんかそんな自分の彼女が眩しくて夏の暑さじゃない別の暑さが湧いてくる。


「去年は本当に何も楽しいことできなかったし……今年はたくさん思い出作ろうね」


「別にこの夏だけじゃないだろうに……」


 そんなことを言う僕だけど、否定はしないよ。何せあんなことを経験したんだ。去年はそれこそ生きるか死ぬかを体験した。だからまあ今を大切にしたいって思いだってわかる。けど既にあれは過去のことなんだけどね。


 でもそんなことを思ってると、日鞠が歩みを止めてた。僕は少し先に進んでることに気づいて、振り返る。


「日鞠?」


「次もあるなんてわからないよ」


 ミンミンミンミンミン−−と蝉の鳴き声が響いてる。強すぎる日差しが、日鞠へとスポットライトでもしてるかのように眩しく見える。


「私もね、去年までは同じように思ってたよ。みんなわかってる。時間は有限なんだって。でも自分の大切な人たちがいきなりいなくなる−−なんて思ってない。その可能性は平等なのにね。


 私もスオウがいなくなるなんて思ってなかった。でも怖かった。その可能性を私は感じたよ。だから後悔なんてしたくない。今年できることは全部やる! そう決めたの」


 僕的には既に去年のことなんて過去だと思ってたけど、どうやら日鞠は僕よりも重く受け止めてたらしい。当事者よりもその周囲が怖くなるってのはもしかしたらアルアルなのかも知れない。いや、僕は当事者だからよりあの問題が終わった……と感じてるのかも。


 けど、日鞠的にはあの事件はまだ続いてて、いやあの事件じゃなく、誰にでも死の可能性はあるってことを気づかせたから、怖いのかも知れない。実際去年の年明けくらいまではみんな過保護になってる気はしてたが、最近はもうそんなことはなくて、みんなの中でも過去のことになったのだと思ってたけど……違うのかも知れない。


「そうだな。日鞠がやりたいこと、付き合うよ」


 僕は彼氏だからね。まあ実際、日鞠はめっちゃ忙しい。そんな夏休みだからってそこらの学生のように暇を持て余してる……なんてことはまずない。既にスケジュールがパンパンと思った方がいい。その中でちょくちょく日鞠に付き合うくらいいいかって思ってた。


 でもどうやら僕はまだ日鞠を侮ってたらしい。

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