1967 前に進むためのXの問い編 340
僕は日鞠にアドバイスをもらったから、それを実践してみることにした。小学生は僕が何かをしてこようとしてるのはわかってるだろうけど、そこに焦りはみえない。寧ろ――
「何やってきたって意味なんてないよ」
――とか言って煽ってくる始末である。僕は別に言い返すなんてことはしない。ただ静かに待つ。そしてじっとその動作を見る。いつも通りにピンポン玉を高く上げて、小気味いい音と共にこちら側にボールが来る。今までは一回バウンドをするのを待ってた訳だけど、僕はこの時その今までの行動をすっ飛ばして動いた。
「ほっ!」
体を大きく伸ばして更に手を伸ばす。そしてバウンドする前に先にネットギリギリの所でラケットに向けて打ち返してやった。これならどんな回転がかかっていたって関係ない。それに相手陣地に近い所で打ち返すことで、物理的に打ち返す範囲が広くなる。
「「あっ」」
僕が打ち返した球は小学生の間を抜けていく。僕は「よし!」とか言ったけど、いきなり小学生二人に笑われた。
「「あはははははははははははは!!」」
なんだいきなり? 二人は爆笑してる。息も絶え絶え、一人が言ってくるよ。
「それ、ルール違反だぞ」
「そんな事もしらないの~」
煽ってくる小学生二人。まあガキ二人のあおりなんてのは実際どうでもいい。僕はそんなことよりも後方を見るよ。だって……この戦法を言ったのは日鞠だ。あの日鞠だ。日鞠が卓球のルールを知らないなんてことは考えられない。
「おい……」
「まあ気分転換だよ」
絶対にそれってわかってただろう。お前のせいで生意気な小学生に煽られるは目になったんだが? それに一点失ったし……
「流れを斬っての気分転換も必要だよ。それに無駄じゃなかったと思うな」
確かに今のはルール的には反則だった。けどまあ返した事は返したわけだから、苦手意識が出来てきてたあのボールに対してちょっと自信が取り戻せたってのは良いのかもしれない。
それに打ち返した感覚? ってのは実際得難い経験として、僕が活かせばたしかに一点くらいは上げても良かった……となるかも。
もちろんそれを僕が活かせれば……だけどね。
「こんどはルール違反しないでよ~」
「このくらい常識だからさぁ」
とかなんとか言ってくる生意気な小学生たち。僕はそんなあおりを気にせずにさっきの感覚を確かめる様にラケットをくるくるとしてるよ。