1937 前に進むためのXの問い編 310
黒尽くめの奴の一人の大きな斧の攻撃を僕はそらした。それによって、タイミングをあわせて攻撃をしてきていたもう一人の黒尽くめのやつにその攻撃が向かう。勢いがある攻撃を自分で止めるってのは難しい。それこそ慣性とかこのLROの世界でもある。それを無理矢理どうにかする術はリアルよりも有ると思うが、なかなかとっさにできることでもない。
「ぐはっ!」
味方の攻撃ってのは予想外のことが多い。てか自分のところに来る――なんて思ってるやつはそもそもいないだろう。だからこのなかなかに強い黒尽くめの奴も避けることは叶わなかった。けど、そこはさすがの黒尽くめ。とっさに判断して攻撃をガードしてた。そして後ろに飛ぶことで、その攻撃をいなしてる。
とっさにそこまで出来たら凄いだろう。実際の所、味方の攻撃ではダメージを受けることはない。直接その刃が体に食い込んだとしても、ダメージにはならない。けど、その衝撃とかは食らう。だからダメージはなくても、黒尽くめの一人は吹っ飛んでいく。僕はその吹っ飛んでいく黒尽くめを追いかける。
実際一番手近なのは斧を持ってるやつだった。しかも攻撃をそらしたし、その分、やつは態勢を崩してるのも確かだ。でも僕は斧持ちはスルーした。なんかそれでもこいつ等ならどうにかしそうな気がした。
それだけしぶといというか、うまい。だからどうしようもないだろう奴を狙う。斧の攻撃を食らって、後方に飛んでるあいつは流石に無防備だ。僕はどっかにぶつかる前に追いついてフラングランを振りかぶる。一気に三連をあて、更に回転して追撃。黒尽くめの勢いを上に持っていき、更に更にフラングランを振り抜いて、最終的には12連撃くらいにはなってたと思う。それでようやく死んでくれた。
「慌てないで! 大丈夫。もう見えてる」
見えてる? 一番うしろでこの戦闘を観察してるであろう彼女がそんな事をいう。やっぱりあいつを先にどうにかしたほうが良いか? とりあえず僕はフラングランを攻撃終わりに一つ投げてみた。ある程度の勢いがあるし、風をまとってる。もちろんこれだけでHPを0にすることができるなんて思ってなんて無い。けど偉そうにしてるやつに一泡吹かせたいし、慌てさせたいじゃん。まあ「お前も絶対に倒す」っていう宣戦布告のつもりだよ。
「はっ!」
バキンとなんか武道の構え? 的なポーズを取ってやつはフラングランを弾いた。掌底か? てかなんか様になってない? あいつは後衛って話だったはずだ。ヴァレル・ワンのパーツを集める時に襲撃するときだって、あいつは後衛の役目に徹してた。あんな武道的な何かを使ってるところなんて見たこと無い。
「ふぅぅぅぅぅぅぅ、しょうがないわね。なんか舐められてるみたいだし、少し裏の実力ってやつ、見せてあげるわ」
そう言って彼女は履いてたヒールを脱いだ。そして軽くトントンとその場でジャンプしたと思ったら、なんか目の前にいた。そして顔面を殴られた。
「ぐはっ!?」
殴られたことさえ、殴られた後に気づいた。何だ今の? 見えなかった? 僕の目で? そんな事があるか?
「速さが自慢よね? そんなものなんだ」
めっちゃ煽ってくるじゃないか! 武器も装備してないただの拳の一撃だったからそこまで重くはない。僕は気を取り直して、反撃に転じるよ。