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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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子守唄の目覚め

 僕はリアルに戻ってきた。真っ先に目に入ったのは日鞠の顔だ。そしてセツリの病室はいつになく慌ただしかった。やっぱり彼女の身にはリアルでも何かが起きたようだ。

 だけどみんなは僕に真実を教えてくれない。佐々木さん達も揃って病室にいるし何かあったのは間違いないのに……。

 

 目を開けると丁度真上に日鞠の顔があった。後頭部には柔らかく暖かな感触がある。どうやら僕は膝枕されているようだ。

 周りからは何やらガチャガチャとした慌ただしい音が聞こえている。時折見える白衣の影はセツリのベットを覗いている様だ。やっぱり何か影響があったのだろうか?


「スオウ……大丈夫?」


 上から日鞠の声が僕に投げかけられる。僕は体を起こして周りを確認しながら取り合えずその疑問に答えて自分の疑問を投げかけた。


「大丈夫だよ。それよりさ、そのカメラどこから出したんだ?」

 

日鞠は一眼レフの立派なデジタルカメラをその両手で抱えている。確か入る直前はそんな物持ってなかった筈だけど……取り合えずやることあるな。

「これはね私の鞄から持ってきて貰ったの。私は常にカメラは手放さないんだよ。趣味は写真だからね」

「あっそ、取り合えずそのカメラ貸せ」

「あ、ちょ! ……うう」


 日鞠の手から強引にカメラを取り上げると画面に画像データを表示させる。すると現れたのは僕の寝顔の写真の山だ。一体何枚撮ったんだって感じ。ここまでやられたらさすがに引くぞ。

 僕は画面を操作して全部を選択。そして消……


「わわわわぁぁぁ! 怒るよスオウ!」

 こっちの台詞だ。こんな写真そのままにしてたら何に使われるか分かったもんじゃない。全世界にウェブ配信されたらイヤだし。

 だけどなんか声がやけに近かった気がする。キンキンするよ耳が。振り仰ぐと目の前に日鞠の顔があった。思わず僕は少し仰け反る。だけどそれに合わせるように日鞠は付いてくる。


「なんだよ一体。お前近すぎるぞ」

「違うよ。スオウが引っ張ってるの!」


 カメラを見ると紐が付いていてそれは日鞠の首に……あ、なるほどね。


「消したら……押し倒すから」

「それは女の子の台詞じゃねーぞ」


 なんてアグレッシブな奴だ。日鞠に日本は狭いんじゃ無いかと思う。そんな風に僕達がいつものやりとりをしていると上の方からクスクスという笑い声が聞こえた。

 視線を二人で動かすとそこにはセツリのベットから上半身を覗かせた女医さんの姿があった。


「貴方達、ここは病院だから静かにね」


 色っぽい大人な声の女医さんに注意されてしまった。僕達は二人で頭を下げる。てかこんな事してる場合じゃ無いんだ!


「それでセツリに何かあったんですか?」


 僕はその女医さんを見つめて聞いた。周りを良く見ると看護婦さんも数名いるし、よく分からない機械もある。それに佐々木さん達もいつのまにか居たし全員集合してるじゃないか。

 これで何も無い訳がない。だけど女医さんはにっこり笑って僕の頭をぽんぽんする。

「大丈夫よ。もう何ともないわ。君が彼女を助けてくれたんでしょう。偉い偉い」

 完全に子供扱いされている。だけどなんか払うことは出来無かった。これが大人の女の技か! てなアホな事を考えてると横から痛い視線が絡み付いて来た。


「何だよ」

「日鞠はスオウのだらしない顔に呆れ返って一言。最低」

「なんだその小説の一文を抜き取った様な文は! それに最後の最低にだけ心を込めるなよ!」


 すっごい棒読みだったんだその前は。僕は女医さんの手から離れてセツリを見た。そこにはいつもと変わらないセツリの姿がある。確かにもう大丈夫なんだろう。


「大丈夫そうですけど……でも何かあったんですよね?」

「まあ、ちょっと不整脈を起こしただけよ。植物状態の患者には良くある事よ」


 不整脈……それはやっぱり心臓が不規則に動いちゃう訳だから原因は心臓。あの時、心臓を貫かれたからなのか? でも不整脈って……随分僕の時と違って軽い。

 それに不整脈程度であんな大きな機械が必要なのだろうか? 医者じゃないし分からないけど周りの空気もなんだか変だし……僕は真相を知ろうと女医さんに向かって口を開き掛けた時、先を越された。


「はいはい、それじゃあ皆さん。もう面会時間は終わってますから速やかにお引き取りください」


 なんて見事に出鼻を挫くんだ。恐ろしき大人の女。僕の周りに居ないタイプだから対応が分からない。苦手なタイプなのかな? いや、こっちが絶対まともに見える。

 変質者が入ってる幼なじみとか仮想に引きこもって一人学校ごっこやってる奴よりも確実に。憧れだなこれは。

 僕は自分とセツリを繋ぐコードを抜いて病室から出た。日鞠が僕の腕を引っ張るのを無視して閉まった扉の前でしばらく立ち止まっていると何かポツポツと聞こえてきた。

 それはきっと中に残っている佐々木さん達と女医さんの会話。子供に聞かせたくない大人な会話だろう。僕は必死に耳を傾けるけど、その時痺れを切らした日鞠に耳を引っ張られた。


「もう、何してるの。早く帰ろう。聞き耳だって立派な盗聴です」


 おまえに言われたくない。


「盗聴って犯罪だもんな」

「そうだね。犯罪だからやっちゃだめだよスオウ」

 

おお、自覚してるのかこいつ。ここは更に認識を深めて日頃の行いを悔い改めさせないと!


「だから――」

「だから、バレないようにしなくちゃね。スオウは堂々過ぎるよ。これだから素人は」


 僕は自分の常識が崩れそうになる。どうやればこの変態を正しい道に戻せるんだ。やっぱり一度警察に突き出すか。取り返しが付く内に。

 だってこれは自分は玄人です、みたいな発言だ。自分の技術に自信を持ち始めてる。こいつはスパイでも目指してるのか? いやいやここは平和の国日本だぞ。目を覚ませ! そんな求人はハローワークにも無いぞ。

 幼なじみを本気で更生させる道を探していると、不意に耳に入って来た言葉があった。それは確かに病室の中からだ。何故か鮮明に聞こえたそれはこんな言葉。


「ペースメーカー」


 それだけだったけど、それだけで心配が募る言葉だ。だってそれは……ペースメーカーって人工心臓の事じゃなかったか? やっぱりセツリの心臓には何かが起きたんだ。不整脈よりずっと悪い何かが。

 もしかしたら心臓の機能も弱くなっているのかも知れない。三年も眠り続けているんだ。あんなベットの上で栄養は管だけで……そう何年も生き続けられるものなのか僕は初めて考えた。

 そしてそれはやっぱり僕には分からない。今の医療技術ならもしかしたら幾らでも命を維持する事は出来るのかも知れない。だけどそうじゃなかったら……セツリを助け出すためのタイムリミットがあるって事だ。

 どこにも表示されない命のカウント……その針が今まさに刻まれている音が聞こえる気がした。


「なあ日鞠……セツリは大丈夫なんだよな?」


 僕の言葉に日鞠は足を止めて耳から手も離してくれた。蛍光灯の光が僕達を照らしている。大きな病院だけど……だからこそなのか夜はなんだか異常に静に感じる。違ったかな。こっちは確かいつもこんな感じだ。

 セツリと当夜さんが眠っているあの病室は一般病棟から離れた位置にあるから。蛍光灯は等感覚で廊下に灯りを与えている。


「大丈夫だよ。セツリさんはスオウが助けるんでしょ? それならやれる事だけやればいいんだよ」

 

日鞠のそんな言葉は僕にはこう聞こえた。ここではスオウのやれることはないんだよ。だから前だけ見つめなさい。

 確かにその通りだ。僕は結局ここでは無力なただの高校生なんだ。それ以上でも以下でもなく、ただの高校生。大半の高校生がきっと自分の無力さを知っているであろう高校生。

 幼稚園の時の様にただ生きる事が出来なくなって、小学校の時の様に純粋に笑うことが出来なくなって、中学校の時のように明日に夢や希望があると信じれなくなった年頃だ。そんな高校生時なんだ。

 きっと大人になったらこう思う。高校の時の様にまだ無知で居られなくなった……とか。そんな言い訳が出来ないのが僕の中での大人な世界な訳だけど……こうやって考えると僕のお先は真っ暗だ。

 だけど最近はそうでもないと思えて来てるとは思う。LROは僕にいろんな刺激を与えてくれる。大人でも、だけどもう子供でもない僕に何が出来るのかを試させてくれている。

 僕は自分の為にもセツリを助けたいんだきっと。LROは僕をただの高校生から解放してくれる。あの中でこそ出来る事があるのなら……今はそれでいいかと納得できる。


「まあ、そうだな。やれる事だけで僕はいっぱいいっぱいだったんだ」


 そうだ。リアルでは頼りになる大人な人達に任せておけるけどLROの中ではそうは行かない。僕にしか出来ない事なんだ。なら……こっちでの事は信じて向こうで出来ることをやるしかない。

 僕達は今度こそ静かな廊下に二人分の足音を響かせて歩いた。


「スオウは器用じゃないからね」

 

そんな日鞠の悪口も、今は「まったくだ」としか返せない。


「でもね。そこが良い所だよスオウ」

 

何が言いたいのか良く分からん。不器用より器用の方がいいだろうに。


「不器用だから一つの事に一生懸命になるしかないでしょ」


 日鞠はカメラを向けてそんなことを言う。カシャっとシャッター音が廊下に響いた。なるほどね。確かにその通りだ。僕には他をみる事なんて今は出来ない。ただ真っ直ぐにセツリを見ることだけ。


「ほんと、その通りだ。不器用も悪くないかもな」

「うん」

 

そういって前を進む日鞠はなんだか肩が小刻みに震えている。なんだ? いきなり泣いたとか? 僕がそんな心配をして近づくとなんだか変な声が聞こえる。


「うへへへ、一緒……寝顔」

 

その日鞠の言葉で思い出した。そうだあのカメラには僕の尊厳を壊す画像があったんだ! 僕は後ろからそっと手を伸ばす。だけど今度は交わされてしまった。


「ダメだねスオウ。私が同じ愚考を犯すとでも? 物を手にした私の周辺策適能力は普段の三倍だからね」

 お前はどっかのニュータイプか。だけど例えそれが化け物と知っていても諦める訳には行かない。人類の尊厳の為……殆ど僕一人を指しての人類だけど今なら僕は赤い彗星の気持ちが分かる!


「渡せそのカメラぁぁぁ!」

「十万八千五百円」


 現金要求しやがった! それに何が十万だ! 幾ら一眼レフでもデジタルじゃそこまで高く無いだろ!


「秘匿の為の料金です」


 脅迫か! 絶対こいつとは示談は成立しないな。僕と日鞠の足音は病院中に響きわたり後でたっぷり病院の人達に怒られた。それに余りに夢中だったから僕は気づいて無かった。携帯を震わせていた重要なメールの到着に。



 こってりと三十分位絞られてエントランスの椅子に脱力して僕と日鞠は座っていた。なんとかカメラの画像は消せたけどこれは納得できない損害だ。

 僕が怒られる筋合いは無いのに……全ての現況は隣でうなだれてる奴の方なのに。僕が追いかけていたせいでこっちが犯人ぽく思われた。

 こういう時には思ってしまう。女ってズルい。

 すると病院の奥、から声がした。


「ああ、良かったスオウ君まだいたんだね」


 それは佐々木さん達LRO関係者だ。何の用だろうと思って思い当たる。僕はまだリンクした先で起こっていた事を話してない。気になる事も沢山あるのに最初に日鞠といつものやりとりしたせいですっかり忘れていた。


「すまないね。でも少しでも早く聞きたいんだ。何が起こっていたのかを」

「僕もそのつもりです。皆さんの意見を聞きたいし……正直信じられない部分もあると思いますけど先に言っておきます。僕が今から話す事は全部真実です」


 周りの空気が重くなったような感じだ。いやこの場合は張りつめたと言った方がいいのかも知れない。そんな中佐々木さんは言った。


「今更君の言うことを信じない分けないよ。みんな君を信じてるからね」


 その言葉に周りの人達が頷く。僕は「ありがとうございます」と感謝を示して話し始めた。リンク先で起こった奇妙な事の数々に、当夜さんを名乗った謎の管理者。そして一番の不安要素のセツリが生んだという謎のシステム。

 全部向こうではただ受けるだけでその正体に迫れなかった。きっと今思う以上に混乱していたんだろう。

 そして全部を話し終えるとしばらく誰も声を出さなかった。今度こそ重たい空気が場に満ちる。セツリのイメージや名誉を守るためにプリティックアロマの事は話してないけどそこは後から考えてみても別に重要じゃ無かった。


「なんでしょう、あのセツリを閉じこめてた奴は? システムって一体……」

 

僕の言葉は誰も拾わずに落ちるかなと思った。だけど大人は僕が知るほど無知では無かった。

「システムか……集合の意識と言うのを聞いたことがあるな」


 誰かなの言葉に更に大人達が続いてく。


「そんな事本気で言ってるのか? あり得ないだろ」

「だけど仮想空間に集う意識の集合体は……」

「あれを認めたらフルダイブ出来なくなるよ」

「逆にそれはノーベル賞ものじゃないのか?」

 

僕たちには全然分からない話でインプンカンプンだ。


「あの、どういうことなんですか?」


 僕の言葉にみんなが苦い顔をする。


「仮説だよ。そう言われているだけだから何とも言えないけど……仮想空間に自我が目覚めたかもなんて夢のある話だよ」


 一瞬耳を疑った。なにいってんのこの人達。


「『存在は意識に寄って証明される』そんな事を言ったお偉い人の論文に仮想空間に集まった人達の大量の意識が一つの大きな意識を生むって奴なんだ。それは集団でも個でもない自我である、そんなことが書いてあったよ確か」


 もうなんだか良く分からない。ここはリアルだよね? それなのにこんなファンタジーな事が起こり得るの? だけどそこで横で黙って聞いていた日鞠が僕の肩を叩いて言った。


「スオウ、リアルとは小説より奇なりだよ」


 うるせぇ、僕の中の一番みじかな奇が何言ってんだ。僕はセツリを無視して佐々木さん達を見る。


「そんなことが本当に起きるものなんですか? てか僕が出会ったのはセツリの中でLROじゃ無いですよ」

 

確かリンクは当人同士だけの回線でのやり取り立ったはずだ。ネットワークに繋いだ訳じゃないのにそんな大量の意識なんてあるわけ……

「厳密に言えばリンクもネットは介してるよ。ただ小さい物だけどね。それにスオウ君達が使っているゲーム機は常時繋がってる様な物だからね。だからこそそれを再現できたんだ」


 僕は自分の手にあるゲーム機を見つめた。これの中であの奇妙な存在が生まれたのか? そう思うとオゾマシい。


「そう言えばLROは一人歩きしてるって……もしかしてそれも……」

「そうかも知れないし、そうじゃないかも知れない。確かにLROは僕達の管理を離れて行っているよ。だけどそれが集合の意識の仕業とは言えない。本当にこれは夢の様な話なんだよ」


 確かに実際見た僕でさえその集合のなんたらを感じることは出来ない。だってそうだろ。漠然とし過ぎてるよ。他に考えられる可能性でも探した方が実感できる気がする。

 第三者の介入とか……実は当夜さんの自作自演とか。ずっと気になってたんだ。当夜さんも同じゲーム機を装着して、そして意識不明になってるのになんでどこにも居ないんだ? 

 仮想にいけなかったのか? だけどいろんな場所で僕は当夜さんの意思みたいなのを感じた気がするんだ。セツリと僕が出会ったのも集合のなんたらより当夜さんの仕業の方がしっくりくる。


「ごめん……僕達にもこればっかりは分からない。素直な言葉だね。大人として情けないけどスオウ君にまた不安を与える事しか出来ない」

 

僕は頭を下げる皆さんを見てるとなんだか居心地が悪い。端から見るとなんだあの高校生は? みたいな感じだよ。大の大人数人に頭を下げさせてる高校生……なんかイヤだ。


「そんな、別にいいですよ。やめてください。やることは変わらない訳だし。一回倒せてますし問題無いですよ」


 僕は精一杯の強がりな言葉を紡ぐ。本心はとても不安だ。だってあいつは余りにも不気味で発した言葉も不吉だった。大人達はそんな僕の不安は見抜いてるんだろうけどそれ以上は言わないでいてくれた。


「僕達は君を信じてるよ。こっちでも出来る限り調査をしとくから」

「はい、お願いします」


 暗くなった病院内で僕達は互いの健闘を祈った。それがそれぞれやるべき事だから。そして解散の雰囲気。佐々木さん達が僕と日鞠の為にタクシーを呼んでくれた。

 その間もずっと皆さんは何か話し合っていた。僕は日鞠の話を半分位もらしながらずっと考えていた。早くLROに入りたいと。

 だって本当にセツリは目覚めたのか気になる。戻ったときまだ眠ったままなんて想像もしたくない事なんだ。でもそんな光景が頭の周りでグルグル回る。だからこの目で確認したかった。一刻も早く。

 そしてタクシーが到着した。広い病院の大きな道に止まった黒いタクシー。僕と日鞠が乗り込んだとき見送りに付いてきてくれた筈の吉田さんから意外な事を言われた。


「すまないけどスオウ君、本体を預からせてくれないかな?」

「え?」


 もしかしてずっと話してたのはこれの事?


「君のを調査したいんだ。あのリンクを体験した当人の本体には記録が残っているかも知れない。それは重要な事なんだよ」


 確かにそれはそうだろう。もしかしたら何か分かるかも知れない。でも……どれくらい? 僕は今直ぐにでもLROに入りたいのに。


「今晩だけでいいんだ。中のデータを移してから調べる事にするから明朝には必ず返す。ダメかな?」


 ダメかなと言われても僕は断る事は出来ない。だって情報は僕もほしい。それの手がかりがここにあるなら取り出して調べて貰うべきだろう。

 だけど何故かな……腕が動かないんだ。頭ではそれを受け入れてるのに心が反発してる。その時横から腕が伸びてきて僕の腕からゲーム機を取り上げた。それはやっぱり日鞠だ。


「今夜はゲームをやることは許しません。一緒にお夕飯食べる約束だよ」


 そんな約束した覚えないけど。だけどそんなこと言ったらまた怒りそうだから僕は諦めて頷いた。


「そうだった。約束だったな。そういう訳でどうぞ。絶対に情報を見つけてください」

「ありがとう。必ず有意義な物を見つけてみせるよ」


 そう言って僕はゲーム機を吉田さんに渡した。自分でも驚くほど素直にそれが出来た事に驚く。横を見ると日鞠と目があった。きっとこいつのおかげ何だろうけど素直に言葉には出来ない。

 それは幼なじみだけど今日で少しだけ変化しだした僕達の関係のせいかも知れない。

 タクシーはゆっくりと振動を起こして滑り出した。夜の街の光が後ろへと次々流れていく。僕と日鞠はまたささいもない事で言い合って、いつも通りに関係を見せかけて車内を過ごす。

 都内から離れて行き次第に空の星に少しは気付ける位になった。タクシーは既に僕達の住み慣れた街に入ったようだ。静かな住宅街を進むとブロック塀が今の僕とLROを隔ててる壁の様に感じた。さっきから手が妙にソワソワするんだ。

 そこにはさっきまであった重さがないから。僕はゲーム機がないとこのリアルと仮想を隔てるブロック塀は越えられない。ぽっかりと穴が空いた様な感じだ。

 この心の穴はゲーム機が原因だろうから明日までの辛抱。だけどその時何となく開いた携帯にメールを発見。それはアギトからの連絡。たった一言「目覚めた!」と書かれた文面と写真が付いていた。


 そこにはみんなに囲まれてベットの上でピースを作ったセツリの姿。僕の心の穴にコトリと抜けていた物がはまった音がした。


遅くなりました。明日載せる分がまだ出来てなくて大変です。やっぱり中途半端はだめですね。やるときにはやらなきゃ駄目です。なので今日は寝ないで頑張ります。

 明日の分と今日のノルマを書きあげなきゃ眠る事は出来ません。

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