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命改変プログラム  作者: 上松
第二章 世界に愛された娘
1870/2700

1870 前に進む為のXの問い編 243

「くっそ」


 自分はこのLROを謳歌してるただのモブ……そんなことは自覚してる。社会人で、昔から


ゲームは好きだった。だが、社会に出てそんな気持ちもいつの間にか忘れかけていたときに、このゲームを知った。


 だがその時にはあの事件が起っていた。ゲームの中にとらわれるという、事件だ。そしてそうなると最悪意識が戻ってこないかもしれない。そういう事が連日言われて、市場のLROは回収されてしまった。


 まあ勿論、そんな危険物を買うつもりは無かったが、だが残念に思ったのも確かだった。なにせ今の夢も希望もない毎日を生きるリアルから逃げ出せるかもしれない……そんな思いがあったからだ。


 これでフルダイブ型のゲームも終わりなのか……一回もそれに触れずに終わったのはもったいなかったな……とか思いながらも日々を過ごしてる内に再びLROが再開されるというニュースが届いた。どうやら安全面をクリアして、あんなことが絶対に無いようになったとか。


 


 まあそれが何処まで本当なのか実際は疑わしい。そしてそれは自分だけでは無くて、ネットでは今でもその議論は熱い。だが、その魅力は確かな物だった。再販がされたら簡単に買えるような物では無かったからだ。


 なんだかんだ良いなからも、あの世界にまた行きたい……とか想ってる奴が多かったんだろう。自分の周りにも一人や二人は以前からLROをやってる奴がいた。そいつらはその世界にいけなくなったら、それこそ逆にリアルにまで影響出てた。仕事できる奴等だったのに、なんか抜け殻みたいになってた。


 それだけLROでいける世界には魅力があったんだろう。なんとかリーフィアを手に入れて、自分もこの世界に入ったときは感動した物だ。ここで自分だけの物語を……今度こそ、主人公に……とか思ったりもしたが、どうやら自分はそんな主人公体質では無いらしい。


 いや、実際にはちゃんとこの世界を自分は謳歌してる。そして自分だけの物語だって紡いでるのは間違いない。NPCやプレイヤー達と交流を深めて、リアルでは社会人になって希薄になってた人間関係も豊かになったと思う。リアルでは生きるために働いて、こっちのために生きてる。そんな生活にすぐになった。


 でもやっぱり特別になる何かは無かった。仲間達とチームを作り、エリアバトルもやってるが、上に行けそうには無い。まあそこまでがちでやってる……訳でもないが。そしてこのヴァレル・ワン。


 皆で作り上げたこの一台のヴァレル・ワンは誇りである。冒険して、ぶつかって、話し合って、リアルに支障が出るほどに没頭して作った。車には興味なかったが、自分達がくみ上げたヴァレル・ワンがエンジンを吹かして動いたときは感動した物だ。


 それから自分が運転手となってレースに出ると決まっては運転技術を高める為の練習をして、戦略を練った。自分達は全然大手じゃ無いが、それでも優勝する気概を持って挑んでる。そしてこうやって色々とうまく噛み合って先頭集団に自分はいる。


 しかも先頭集団は激しいトップ争いをせずにとりあえずはこのままを維持して……って空気か合った。でもそれを壊したのがあいつだ。誰からも嫌われてるあの野郎。なるほど、こっちの空気とか全く読まないで好き勝手するあいつは、確かに嫌われるだろう。納得だ。


 本当はもっと深刻な理由で嫌われてるらしいが、自分は再販組だからな。そこら辺には特に思うところは無くて、へぇーくらいだったんだが、今嫌いになった。


 自分達の輪を乱し、トップに躍り出た奴はどんどん距離を離していく。追いかける奴、まとまったまま走り続ける奴……と別れた。自分はまとまってる方だ。そこまで焦る時間じゃ無いから。でも、距離が開くにつれて「本当にこれでいいのか?」という思いが強くなっていく。どんどん先頭のあいつは小さくなっていく。自分達は確実に距離を離されてる。まだ見える……けどそれはまだなんだ。みえなくなったらもうトップ集団じゃなくて、その下の集団じゃ無いか? ただの運でここに居ただけの自分がここでトップ集団じゃなくなったら、追いつけるのか? 勝負所は本当に今じゃ無いのか? そんなことがさっきからずっとぐるぐると回ってる。そんな中、ついに自分達の中から、スピードを上げて飛び出した奴がいた。


 やっぱり皆気持ちは一緒だったらしい。この場所から転げ落ちたくなんか無い。だからこそ、自分もアクセルを踏み込んだ。

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