1686 前に進む為のXの問い編 78
「失礼な事を言うなよ。僕だって家族くらい知ってる」
『そうなのか? 君の心は泣いてるように見えるけど』
「そんな子供の時期はとっくに過ぎたよ……」
適当に言ってるだけ……僕はそう言い聞かせる。いくらシ○ガミ様みたいな見た目だと言っても、結局はただ野生動物がちょっと知識と力を持った存在だ。
そういう風に自分で言ってたじゃないか。こいつは本物の神ではない。だからいくらその能面のような顔で僕のことを見透かしたような気がしても、それは僕の反応を見るためにやってる当てずっぽうなんだ。
本当にこいつが僕の心の中を見透かしてるわけじゃない……てか――
(僕はさみしいなんて本当に思ってないし)
むしろ一人最高! って派閥だし。てかそんなかつての自分なんて忘れたわ。いつだって側に居てくれた奴がいたからな。それこそ日鞠だ。そしてその家族。僕にとっては、本当の両親よりも日鞠の家族達の方が家族と認識してるよ。
むしろ本当の親は毎月お金だけ送ってくれる、親戚? いや足長おじさん的な? うん、きっとそんな感じだ。だから僕は家族を知ってると言える。
だって家族って別に血のつながりだけじゃないって偉い人が言ってたもん。その理論で言えば、他人は本当の両親の方で、家族は日鞠の家族達ということになるね。間違いない。それに今は一緒に住んでる人達もいるし……これでもまだ家族を知らないなんてこの鹿はいうか?
「スオウ……私と一緒だったんだね」
そう言ってなんかアーシアの奴が僕の頭をなでなでしてくる。やめて……そんなんじゃないから。でも何故かその手を振りほどけない。気恥ずかしいんだどね。
『だが残念。君は私たちの家族にはなれない。家族となれるのは貴女だけ』
「いやだからならないって言ってるじゃん。強がりでも何でもないから」
「駄目だよ! 成ろうよ家族! 私はスオウが一緒じゃないとイヤだよ!」
なんかアーシアのどっかのスイッチが入っちゃったのか、僕も家族にならないと絶対に駄目――的なテンションになってしまってる。
『無理なんだ。それはどうあっても……ね。存在が彼は違う』
「一緒だよ! ほら、こうやってふれあえるもん!」
そう言ってアーシアは僕を抱き寄せる。すると案外あるその胸に……ね。こう……ふれちゃっうんだけど……どうやらアーシアは自分が女の子って意識があんまりないよね。
『もっと深くをみてみればわかるよ。君にも出来るはずだ』
何をさせようとしてるわけ? なんかシ○ガミ様がアーシアの頭へとその鼻先を近づけた。そのとき、何か小さな光りみたいなのが、シ○ガミ様とアーシアの間で弾けたみたいな? すると突然、アーシアが僕を突き飛ばした。
「きゃ!?」
「アーシア?」
さっきまでとってもきもちよく……じゃなくて、心地よく、そして安らぎを感じたのに、今はなんかアーシアからはおびえが見える。てか……なんかアーシアの目……その目玉に陣が浮かんでる? 絶対にシ○ガミ様の奴、何かしたな。