1681 前に進む為のXの問い編 73
『ひ、被害妄想だと!!』
その瞬間、ぶわっと何かがシ○ガミ様の周囲に漏れ出した。それはまさしく殺気という物だろう。怒り心頭と言っても言い。つまりはキレた。僕に対してね。僕に対してキレたのはわかるが、でもその圧力というか迫力はアーシアにだって伝わってるわけで――
「ひっ!?」
――そう言ってアーシアは僕の方にその体を寄せてきた。すると自然と彼女を抱きかかえるようになるわけで……
『貴様、我らが王からすぐに離れろ!!』
と更にキレてきた。離れろと言われても……その原因を作ってる奴に言われても……それに今「王」とか言わなかった? まあとりあえず反論だけはしておくか。
「そう言われても……そっちが怖い感じを出してるのが悪いんだよ。そうだろ?」
僕のその言葉に抱きついてるアーシアはこくこくと頷いてる。ほらね。僕のせいじゃないんだよ。僕は肩をすくめて見せてやる。
『人間共はそうやって私たちの誇りを傷つける』
おかしい、これでちょっとは怒りを静めて冷静になるだろう――と思ったのに更に沸騰したようになってる。その人間のような顔が真っ赤になってるし。表情は作れないのにそういうギミックはあるんだな。
そう思ってると、枯れてるはずの大木の幹の根が地中からいきなり伸びてきた。
「つっ!?」
僕はとっさに上に飛んで避ける。そんな規格外のでかさの根をいきなり向けてくるなよ。僕じゃなかったらマジで串刺しコースだったぞ。
「やる気だな。しっかり捕まってろアーシア!」
僕は視界をコードに切り替える。これなら実は地中にある根のどれが次に来るか、地中にあっても見えるんだよね。だから次がわかれば、僕の速さなら避けるのなんて造作もない。
『貴様、何を見てる?』
シ○ガミ様は流石だね。僕が普通は見えないはずであろう物を観てるというのに素早く気づいたらしい。けど……この世界の生物ではコードをごまかすなんて事は不可能だ。
もしもシ○ガミ様がこの世界から外れた存在……ってなら別だけど、多分それはない。そんな気がしてる。
「お前アーシアに当たったらどうするつもりだよ? てか、僕がアーシアを盾にしたらどうするんだ?」
『私は彼女に当てるようなヘマはしないし、彼女にこの程度の攻撃は意味をなしはしないよ。そして貴様が彼女を盾にしたときは、それが信頼の終わりだ』
なるほどね。更に攻撃は過熱していく。なんかそこらに生えてる花が弾丸のように種を放ちだした。それは小さい種だから避ける必要もなく、風を操れば軌道をそらすことが簡単にできる。だから無視出来る。
でも根はそうはいかないし……どんどんと手数が増えてる敵の攻撃に対して、こっちは避ける一辺倒。流石に厳しくなってきたな。
僕がアーシアを盾にしたときが信頼の終わりとか言ってるし……実際それをさせようとしてるんだろう。そうなると意地でもそんなことしてやるものか――って思う。元からやる気はないけどさ……とりあえず武器を抜くか? そう思ってると。
「スオウ、お願いがあるの」
抱きしめてるアーシアがそんなことを行ってきた。




