1690 前に進む為のXの問い編 52
「えっと……その繋がったってのは……何もして無いと思うんだけど……」
「なんで……そんなことを言うの……」
再び彼女は目に涙をためる。宝石になる涙……僕はちょっと慌てつつ、冷静にその涙を指ですくって落ち着かせるように言った。
「ごめんね。でも……どういうことなのか教えてほしいんだ。全然君のことが嫌いになったとか、そういうことじゃないよ? むしろもっと知りたいんだ」
とりあえずそんな風なことを言う。そう、今僕たちに必要なことは話し合うことだ。意思の疎通を図ることが最も大切なことだと思う。なにせ僕は彼女の名前も、そしてどういう存在なのかもわかってない。
そんな状態で「繋がった」……とか言われてもね。むしろ僕的には繋がった要素なんてみじんもないんだが。初めてがLROって……そこはほら、日鞠のためにも取っておきたいし……というかLROはそういうことは出来ないはずだし……あり得ないんだが。
僕と……この子が繋がった……物理的に……とかは絶対にない。それは神に誓えるよ。なら心か……でもある意味……心って、そっちの方がまずくないというか……そもそも全く僕はこの子を知らないのに。なら後、心当たりがあるとすれば――
(コードか……)
この子がこうなるとき、コードが色々となんやかんや成ってた。まあ実際、コードがなんやかんやとならない現象なんてのはLROには無いんだが……だってこの世界はコードで出来てるし。
このゲームの全ての事象にはコードが関わってる。だからコードがどうにか反応するのは当然と言えば当然だ。とりあえず僕はこの子のすくった涙を自然にインベントリにしまう。
別に綺麗な宝石のようだから、売ろう――と思ってるわけじゃないよ。ただ興味本位だ。
「私の事……わからないなんて……そんなはず無い!」
そう言って一度体を離してくれてたんだけど、今度はムキになって僕の顔の方に腕を伸ばしてきたと思ったら、頭を引っ張った。そしてどこに僕の顔を迎え入れたかというと……その豊満なお胸様に……だ。
「むぎゅ!?」
思わず変な声が出た。イヤだって……お胸様だよ? 男子高校生なら常日頃から飛び込みたいとか……鷲掴みにしたいとか頭の片隅で実は思ってるそんなお胸様に今僕は……その顔を突っ込んでる。
ものすごく柔らかくて、あったかい。そして彼女特有の花の香りがする。もうね……息をする度に肺が満たされるほどに、彼女の匂いでいっぱいになる。
「わかるよね? わからないはずないよ……私たちはこうやって繋がってるもん!」
彼女は僕とのその繋がりを確かめる用に僕を胸に押しつけるけど、その繋がりって奴が僕には理解出来ない。けど……幸せって奴はどうやらここにあったみたいだ。