1628 校内三分の計編 238
「スオウはそんなに嫌われてないと思うけど? むしろ愛されてるような?」
「それ本気で言ってるのか日鞠?」
初めてこいつに同意できないことが……いや結構あったわ。けどそれはなくない? 実際僕に友達いないの嘆いてたじゃん。愛されてるって言うならクラスの奴らとか友達といえるのか? いえないと思うんだが。大体クラスメイトって言う枠組み以上の奴って数人しかいないよ。
「ほら、今はみんなスオウのことを認めてるよ」
「諦めたか、受け入れたって感じだと思うけど」
それも主に日鞠関連でな。だからって別に友達ではないし。これから日鞠がどんどんとその影響力を広げていくとすれば僕の危惧は案外現実のものになりそうな気はするんだけどな。
だって最初の世界は僕と日鞠だけの間柄だった。でもそれが年々成長するごとに世界が広がると同時にどんどんと周囲は僕に厳しくなっていくというか……日鞠にくっついてる僕はおまけみたいな? そんな感じになってたと思う。
「そんなスオウの個人的な悩みなんてどうでもいいんデスよ実際」
「おい」
僕の切実な悩みをどうでもいいって、クリスの奴もこの学校の奴らから嫌われないかな? 案外今なら結構実現できそうだけど……こいつのことだからしれっと関係回復してそうなんだよね。週末開けて学校に行くと普通にみんなと一緒におしゃべりしてそう。
「ほらほらみんなも見てみたいんじゃないんデスか? スーパー生徒会長になった日鞠を。そしてそうなったって別にここをないがしろにするわけじゃないですもんね日鞠は」
「それはそうだね」
強引にでもクリスは日鞠はスーパー生徒会長になるべきって論調に持って行くつもりのようだ。まあもうそれしかないのは理解できる。日鞠は強すぎるからな。
その強すぎる日鞠をどう頑張っても摂理の下に持ってくるのは無理がある。それでは信者たちだって当然受け入れがたくなるし、摂理の信者たちだって別に日鞠が嫌いなわけじゃないし、多分認めてはいるだろう。
だからこそそこまで貶すなんてことはしづらいだろうからな。
「会長は、この学校の会長じゃなくなっちゃうんですか?」
「ちっちっちデスよ。心配することはないです。私たちだけの会長から、日本の会長になるんデス。日出ずる国の会長日鞠デス! いやですか?」
そんなクリスのアホみたいな言葉に日鞠が連れてきた一年生は何か上の方を呆けてみてた。きっと頭の中でさっきのクリスの言葉を想像してるんだろう。めっちゃアホな顔をネットにさらしてるって気づいた方がいいぞ。
なんかコメント欄で「彼女ってこんな表情するんだ」ってコメント来てるぞ。まあ確かになんか彼女真面目そうな雰囲気あるもんね。
だからこれはクラスメイトたちも見たことない彼女の貴重な表情なのかもしれない。
でもだからってありがたいって思わないが。そんな風に思ってると、彼女はぽつりと「いい」といった。
(良いのか……)
僕は心でそうつぶやいた。