1602 校内三分の計編 212
「わお!? 流石日鞠ですね! 圧倒的でーす!」
そういってあからさまに大袈裟に言葉を出すのはクリスの奴だ。まあこいつが声出さないと、向かい側の摂理なんてもう既に絶望してるからね。
(もしかしたら……)
なんて思いがきっと摂理にはあったんだろう。確かに日鞠の支持基盤は強いが、僕と付き合いだしたし、その影響が多少はあるんじゃないかって期待はきっとあった。
(てか僕もあったし……)
まあ僕の場合は期待とかじゃなく不安とかだったけどね。僕のせいで日鞠が不利に……とか思ってたが、日鞠はそんな軟な奴ではなかった。僕なんかの影響ほぼないし。
(でも……)
僕はちらっとクリスの方を見る。この隣にいる工作員の奴と僕との情事というか、疑惑が出たときは、一気にクリスの支持基盤は崩壊した。それまで一番勢いあったはずの陣営だったクリス派は僕との疑惑……そう疑惑だけで崩壊した。
疑惑だよ? 決定づけた訳じゃないんだよ? 日鞠の方は既に決定づけられてる。僕と日鞠が付き合ってることは学校全体が知ってる。でも……日鞠の方は崩壊してないし、支持率は別に減ってない?
(いや、減ってはいるのかも)
八十パーセントくらいでも、日鞠の場合は少し減らして……程度だと思う。いまや二パーセントの支持率しかないクリスとは雲泥の差だし、まさに天と地の差と言えるほどの差がある。
この違いは何なんだろうな。
(まあ結局、クリスは薄っぺらくて、日鞠は強いもので他者とつながってたってことなんだろうな)
結局、クリスはお遊びでしかなったということだ。そもそもがこの崩壊までも想定してやってたのかもしれないが、それにしてもこれだけ見ると、日鞠とクリスの信頼というか、人間としての差というか……ね。そういうのが見える。
「ありがとうクリスちゃん」
「……けど、私が転げ落ちたからって事を忘れちゃ駄目デスよ。私の票もきっと入ってます」
「それを自分で言うんだ」
「大丈夫、私は気にしてませんデスから」
明るく言ってるが……実際はどうなんだろうか? クリスは本心を見せない。本心と思わせてもそれは違って、更に奥にこいつの本心はあると思ってる。だってこいつにとって高校生活は任務だし、でもこの生徒会長選挙が任務とはどうも思えない。
「日鞠はすごいデスねー。ても皆、わかってますか? これからも日鞠がこれまでのように動けるでしょうかデス?」
何やらクリスはニコニコしながら日鞠を削りにでたようだ。