1597 校内三分の計編 207
「私?」
「そうデス日鞠。日鞠だって変わりたい事あるんじゃないデス? 寧ろもっとおしゃれして意中の人の気をもっと引いた方がいいデスよ」
クリスの奴がそんな事を言ってクリスの容姿を指摘する。まあ確かに日鞠の奴は普段は野暮ったい格好してるからな。いや私服は決してセンス悪いとかではない。ただ古臭い髪型に眼鏡なだけだ。
そしてそれと制服が合わさると、なんか時代錯誤感がでるってだけ。
「スオウだってもっと日鞠にはおしゃれしてほしいんですよね?」
「いや、別に。学校では今のままでいいんじゃないか?」
僕は普通にそう返す。だって別に学校でまでおしゃれする必要なくない? 僕は普段の日鞠だって見てるし……別にそれで充分っていうか? 寧ろ他の奴らが普段のこの野暮ったい日鞠の印象を更新して、プラスに働く方が不安じゃん。
日鞠が不用意にモテないのは、この格好だからだ。実際、日鞠は顔が悪い訳じゃない。地味なだけだ。そして今時おしゃれ感ゼロの便底眼鏡が影響してる。
けどさ、日鞠って超優秀なんだよ。だから尊敬とかしてる奴らはそれこそたくさんいる。それが尊敬でとどまってるのは、一重に普段のこの日鞠の格好が功を奏してるというわけだ。
もしもちょっとでも女子の一面をのぞかせたら……そしてそれが……案外悪くないな――程度だとしても、途端に恋へと転がり落ちる可能性はある。
だって日鞠に悪い印象を持ってる奴なんていないんだ。好意の上に、更に好意が重なったら……それって好きになるんじゃない? わからんけど!? だから僕の心の平穏の為にも、日鞠はこのままが望ましい。
「なんでですかスオウ? 日鞠が可愛くなったら、困ることでもあるんデス~?」
このやろう絶対に面白がってやがる。
「クリスちゃんは、どうしたいの?」
そんなつぶやきが聞こえてきた。うつむいてる摂理からだ。まあでも、摂理からしたらその言葉はもっともだと思う。一番わかんないのがクリスの立場だろう。摂理にはまだ終わってないとかそそのかしたり、けど今は日鞠にアドバイスしてる。それは僕と日鞠の関係を強化することと同義だ。一貫性ないんだよ。もしかしたらクリスにしたら何か芯があるのかもしれないが……
「私デス?」
「私の味方してくれるって言ったのに、スオウと日鞠ちゃんくっつけたり。かと思ったら、まだチャンスはあるって言ったのに、二人をよりくっつけようとしてる!」
涙目の日鞠がそういってクリスを見つめる。美少女のキラキラとした涙に、コメント欄は摂理の方へと傾いてる。さすがにクリスの事を非難する声がちらほらと出てるぞ。よし、このままこいつを悪者にしよう……と僕は思った。