1584 校内三分の計編 194
僕の前をクリスのやつが歩いてる。ポニーテールにしてるクリスの髪が朝の日差しを浴びてきらきらと輝いてる様に見える。
クリスは外人らしく金髪だ。染めてはない純粋な金髪。だから根元まで金金だよ。黒が混じることがないから、やっぱり染めてるのとは違う鮮やかさがちゃんとある。
それにしても……
(こいつはよく髪型変えるな)
よくというか毎日かもしれない。まとめてなくても、一部を編み込んだり、ヘアピンでおしゃれしたり、シュシュとかつけたり、こいつの頭はいつも違うって印象がある。
最近はまだまだ暑いってわけじゃないが、それでも暖かさが増してきたからか、アップにしてる時が多い様な気がする。
そうなると、うなじとかが見えるわけで、男子たちの視線はそこに自然と流れたりしてる。今の僕も……
(いや、ただこれは前を見てるだけだから。前を歩いてるクリスのうなじに視線が入ってるんじゃなく、自然と見ればうなじにいくだけだから)
ポニーテールがゆらゆらと左右に揺れるたびに顔を覗かせる白いうなじ。白いうなじに金髪の毛って日本人ではありえないから視線がむくだけだよ。
別に何かいやらしいことを考えてはいない。
「聞いてますデス、スオウ?」
「ん? ああうん。問題ない」
何か話してたクリスみたいだが、うなじに集中しすぎてて、何を言ってたのか全然聞いてなかった。なんの話だっけ?
「なるほど、昨日はラブラブだった……と」
「なんだよそれ! てかスマホを取り出すな!」
さっきまでこいつ、何を言ってたんだ? いや今の発言で想像つくけど……下手に肯定……いや、肯定してないぞ。
それにスマホでどこに拡散する気だこいつ。誹謗中傷は問題外だが、こういう報告もやめろよ。心の中に留めておけ。
「別にいいと思いますデスよ。付き合ったばかりの男女がラブラブじゃなかったら、どこでラブラブするんデス?」
「それは……」
まあ確かにクリスのいうことは一理ある。付き合いたてが一番ラブラブしてるものだろう。てかそうじゃないとやばいと思うし。でも僕と日鞠はラブラブ−−なんかこの語感が嫌だけど……ラブラブなのだろうか? 心は通じ合ってると思うけど。気持ちは確かめたしな。
でもこうやって日鞠は既に学校に行ってるみたいだし、四六時中ベタベタするってことはしてない。ラブラブの語感的にはベタベタしてそうだけど、僕たちはそんなんではない。
知り合って長いし、それにようやくって感じだからな。知らない男女が燃え上がってくっついたわけじゃない。僕たちは既に十年あまりはお互いに気持ちを育んできたわけだ。だから−−
「僕たちは心で通じてるんだよ」
「日鞠が自分を愛してることに自信があるということデスか」
「そういう恥ずかしい言い方やめろよ」
よく言えるなこいつ。
「でも、それって危険ですけどね」
なんか小さくそうクリスがいった。何が危険だ? よくわからないな。確かに相手がいつまでも自分を好きでいてくれる保証がないことなんてわかってる。だからお互いに好きでい続ける努力ってやつは大切なんだろう。そこら辺は肝に銘じておくさ。
「それで、摂理には会いましたデス?」
「それは……まだだけど」
「摂理の気持ちは知ってたデスよね?」
「……」
まあね。摂理が僕に好意を持ってたのは知ってる。まあだからこそ、昨日摂理が鈴鹿のところに泊まってくれたのはありがたかった。なにせ気まずいしね。
でも僕たちは一緒に住んでる。このままではだめなのもわかってる。でも僕からなんと言えば? 図らずとも僕は摂理を振ったことになるわけじゃん。
そんな自分からそのことを話していいものか……
「まあとりあえず摂理の前ではいつも通りにしててくれればいいデスよ」
「今まで通りってことか?」
「そうです。そのために連れていくんデス」
「?」
クリスのやつが何を考えてるのかわかんないな。まあけど、強引なこいつからは今日予定ない僕は逃げられそうにないから、大人しくついていくことにした。