1573 校内三分の計編 183
「それではお願いします」
「……はい」
放課後、私は自分達に割り当てられた選挙活動のための教室で日の出ジャーナルの記者にインタビューを受けることになった。どうやら他の立候補者にもインタビューをしてるらしい。
なので私も受けるしかない。受けるしかないけど……はっきり言ってもう帰りたい。帰って不貞寝したいという思いがめっちゃつよい。
だって……だって、日鞠ちゃんとスオウが付き合ったんだよ? なんで私はこんな所に未だいるのかよくわからない。しかもさっきクリスちゃんが来てなんかこんなことを言って去っていった。
「よかったデスね摂理。これできっと動き出すデス。二人の関係が進んだのなら、あとは日鞠の頑張りだけデスよ! これで終わったなんて思ったら、ダメですよ?」
なにその言葉? と思ったのは言うまでもない。だってすでに終わってるじゃん。二人はようやく想いがつながったんだよ? ずっと曖昧だった糸が真っ直ぐになったのだ。今までは色々と絡まってたんだけど、それをクリスちゃんが強引に解いてくっつけた。
いやいやいや!! 余計なお世話!! 余計なおせわだよ!! はっきり言って私が滑り込む隙はその糸が絡み合った時しかなかった。二人は確かに相思相愛だなって思ってたよ。でもチャンスはあった。
二人は近いけど、完全にくっついてたわけじゃなかったからだ。けど……クリスちゃんのせいで二人は長い時間をかけて育んでた絆をさらに強固なものにしてしまった。
(どうするの? 私とスオウが出会って一年も経ってないんだよ? 日鞠ちゃんとスオウの関係なんてもう何十年? 固まっちゃったら、勝ち目なんてないんだよ……)
だから私はずっとビクビクとしてた。私がスオウの家に居候するようになって、日鞠ちゃんとは距離が出てたから、もしかしたらこのままちょっとずつ二人が疎遠になっていけば……なんて思ってたのに、クリスちゃんはそんな二人を強引にくっつけたんだ。裏切りというか、もう私的には後ろから刺された感じだよ。仲間だと思ってたのに、いきなり包丁を取り出して背中刺された感じ。
しかもなんかクリスちゃんはまだ仲間面してるして−−どういうメンタルなの? てか、クリスちゃんの思惑がわかんないよ。
「はい……」「……ですね」「……なんか、いい感じにしていきたいですね……はい」
私は多分、終始こんな感じでインタビューを受けてたと思う。ずっと俯いてて、顔をあげることはなかった。そして学校から帰る時、私は鈴鹿ちゃんにお願いして、泊まらせてもらった。だってスオウを見るのは辛いし、クリスちゃんの所に行くのもね……向こうはなにも思ってないけど、こっちは裏切り者だと思ってる奴のところに泊まるなんてできない。だから私には鈴鹿ちゃんしか頼れる人がいなかった。