1571 校内三分の計編 181
「それでは質問いいですか?」
「はい。ね、スオウ」
「いや、なんで……こんな……」
日鞠は納得してるようだけど、僕的にはこの大スクープをとれると意気込んでる日の出ジャーナルの記者に根掘り葉掘りと質問攻めされるのは嫌なんだが?
何が起こってるかというと、端的に言うと、取材である。なにせこの日は色々とあった。摂理のメイク登校から始まり、日鞠のキス写真流布――そこから、僕と日鞠の公開告白とね。本当に色々とイベントを詰め込んだような一日だった訳で、さらにいうと今日は金曜日だ。明日からは学校は休みになる。土曜日は生徒会長選挙立候補者によるオンラインディベートがある。そうして明けた月曜日はとうとう投票だ。
つまりここで日の出ジャーナルとしては立候補者達にインタビューをしときたい訳だ。僕と日鞠の所だけじゃなく、たぶんだけど摂理とクリスの所にも記者が行ってるはずだ。
「まずはおめでとうございます。お二人はお付き合いを始めたということでよろしいですか?」
「えっと……はい」
「はい」
日鞠がこっちを見て視線が合って、僕が肯定したら日鞠が「はい」といった。だから僕もちゃんといった。恥ずかしい……そこ確認必要? いや、記者だしね。あいまいな情報を伝える訳にはいかないってのはよくわかるよ。でも……ね。思春期の心も考えてほしい。こっちはきっと知らないうちにでも甘々な雰囲気を出してる……はずなんだが、日の出ジャーナルの記者である男子生徒は「そうですか」と言って何やらメモを取ってる。何がかかれてるんだろうか? 気になる。
てかめっちゃこの人淡々としてるぞ。実は僕たちはそんなに付き合ってるようにみえないとか? ラブラブには見えないとか? いや、見せてないけど。
「お二人は幼馴染なんですよね?」
「はい、家が隣通しなんです」
「小さな時からずっとお二人は一緒にいたわけですが、どのくらいからお互いを意識してたんでしょうか?」
わかってはいたけど、この人めっちゃグイグイくるな。しかも選挙の話よりも完全に恋愛方面へのインタビューだし。いや、それは当然だよな。
だって選挙の事をメインにインタビューするなら、僕はいらないもん。でも何故か僕も呼ばれた。それが意味することは、僕と日鞠の事を聞きたいからに他ならない。
「私はそうですね。ずっと大好きでしたよ。あった瞬間から、スオウが大好きでした。今はこんなに男の子っぽくなったけど、小さいときはお姫様みたいに可愛かったんです」
「へえーそうなんですか」
マジでそのメモなにを書いてるの? 僕の備考に『小さな時はお姫様みたいだった』とかやめろよ。そんな事を考えてると、今度は僕に向かって「ではそちらはどうですか?」と降られた。これ真面目に答えないとだめなのか? めっちゃ恥ずかしいですけど……